• このエントリーをはてなブックマークに追加
2017.10.20   2020.07.12

この3つだけ知っていれば不動産の損益通算は怖くありません

損益通算のイメージ

不動産に関する損益通算とは、ようは不動産を運用したり売却したりした際に損失が発生してしまった場合に他の所得(例えば給与所得)からその損失分を引くことができる制度です。

 

では他の所得からその損失分を引くことに何の意味があるのか。大ありです。みなさんの大好きな税金が安くなります。日本では収入が増えるほど税金も増える「累進課税制度」を採用されています。つまり、収入自体が抑えられれば税金は少なくなるのです。不動産に関する赤字を他の所得から引くことが出来れば税金が減るので払い過ぎた税金は還付されます。

 

この損益通算は確定申告が必要です。「確定申告が必要=知らないと大損する可能性あり」です。誰も教えてくれません。顧問税理士さんがいるのであれば別ですが。このコラムをお読みいただければ、顧問税理士さんがいなくても理解していただけると思います。また、損益通算という言葉だけ聞けば「難しいんじゃないの?」と思われるかもしれません。ダイジョウブです。簡単です。プラスとマイナスを合算すれば良いだけです

 

それではまず不動産の賃料収入より費用の方が高くなってしまった場合の方法をみていきましょう。

目次

1.不動産所得が赤字の場合の損益通算

不動産所得とは、分かりやすく言えば「不動産投資での所得」です。そして不動産所得が赤字になるとは、賃貸収入より運用費用の方が高くついてしまった場合です。この場合、他の所得、例えば給与所得からこの赤字を引くことが出来ます。赤字の分の税金を取り戻すことが出来るのです。

 

しかし、原則があれば例外もあるのです。不動産所得の赤字は原則として損益通算を行えますが、例外として損益通算を行えないものもあります。詳細に関しては、

国税庁HP「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」

をご確認下さい。

 

このコラムでは、その中でも特に重要な

「不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分の金額」

について考察します。

 

少し言葉が難しいですね。「土地取得に借入金を利用した場合、その借入金の利子部分は損益通算の対象にならない」という事を言っています。

文章だけの説明ではみなさんが混乱されるかもしれません。数字を使って説明します。

 

不動産所得の赤字を計算する

 
 
不動産所得の赤字の計算するための前提条件

購入価格:5,000万円(土地3,500万円、建物1,500万円)

頭金:1,000万円

ローン:4,000万円

金利:3%

 

「土地の取得に関するローンの利子」が損益通算の対象から除外されますので、その金額を計算しましょう。

購入価格の割合と同様に住宅ローンの割合も計算すれば良いだけです。

 

4,000万円×(3,500万円/5,000万円)=2,800万円←土地に対応するローン金額

2,800万円×3%=84万円←土地に対応するローンの利子

 

この84万円が損益通算の対象から除外されます。結構大きな金額になりますよね。「ローンの利子」と「不動産所得の赤字」のどちらか大きいかで除外の仕方が異なります。

 

84万円>不動産取得の赤字

 

ローンの利子の超過部分は経費として計上できる

 

84万円<不動産取得の赤字

 

赤字として認められない

 

まずは、不動産を運用して賃料収入を得ている場合の損益通算のお話をさせて頂きました。

では次に私たちにより身近な「マイホーム」に関してみていきたいと思います。不運にも住宅価格が高騰していた時代に購入されている方も多いと思います。「マイホーム売却したら赤字でした…」これ程の不幸な話、ここ数年聞いたことがありません。何とかしたしたいですよね。

2.マイホームの買い替え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

この制度はマイホームの譲渡で損失が生じてしまった場合のものです。一定要件のもと、このマイホームの譲渡損失は他の所得と損益通算ができます。主な要件としては、

 

  • マイホームを譲渡し譲渡損失が発生すること
  • 譲渡した年の1月1日において、土地及び建物の所有期間が5年超(平成29年12月31日まで)
  • 新たに住居を購入する事

 

そしてこの制度の凄いところは、譲渡損失が発生した年に全ての譲渡損失が控除できなければ、そこからさらに最大で3年間控除し続けられるという事です。「譲渡した年+最大3年間=合計4年間」繰越控除が可能です。

 

年間600万円の給与所得がある方に2,000万円の譲渡損失が発生した場合には、

 

1年目:600万円ー2,000万円=ー1,400万円

2年目:600万円ー1,400万円=ー800万円

3年目:600万円ー800万円=ー200万円

4年目:600万円ー200万円=400万円

 

となりますので、3年目までの所得税・住民税が0になります。4年目は400万円を基準として所得税・住民税が計算されますので、通常の給与所得600万円の時よりも節税になっています。この制度、凄くないですか。色々と条件はありますが、太っ腹です。「中古住宅の流通」を促したいという行政側の思惑も感じ取れます。

 

次はさらに悲しい場合です。簡単に言えば、ダブルパンチを喰らった場合です。よく分からない例えですいません。

3.特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除

マイホームを譲渡したが住宅ローンの価格を下回る価格での譲渡になってしまった挙句、譲渡損失も発生してしまった場合も他の所得との損益通算が可能です。この状況はあまりにも惨めすぎるので、損益通算だけでなく給付金を出しても良いのでは!?、と個人的には思いますが。お見舞金なのかもしれませんが。

 

損益通算の方法は先ほどのマイホームの買い替えで譲渡損失が出てしまった場合と同じです。違うのは「損益通算の限度額」です。

 

損益通算の限度額=「マイホームの譲渡契約日前日の住宅ローン残高」ー売却価格

 

不動産の譲渡損失の方が金額が大きくても、上記で計算した限度額までしか損益通算できません。両者の金額に大差がなければ良いですが、何百何千万円もの差がある場合には同情してもしきれません。

 

主な要件は、

  • マイホームを譲渡し譲渡損失が発生すること、及び譲渡価格が住宅ローン残高を下回っている事
  • 譲渡した年の1月1日において、土地及び建物の所有期間が5年超(平成29年12月31日まで)
  • マイホームの譲渡契約日前日の段階で10年以上の住宅ローンが残っている事

 

売却価格が住宅ローン残高を下回る必要がある上に、住宅ローンが10年以上残っている必要もある…。聞いただけで恐ろしい。「頑張ってください」としか言いようがありません。。。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は不動産に関する譲渡損失という切り口から3つの制度をみてみました。主に「不動産投資に関わる損失」と「マイホームに関わる損失」に大別できるかと思います。

 

最初にも言わせて頂きましたが、これらの制度は知らないと損します。誰も教えてくれません。自分から調べて自分から専門家に聞きに行く必要があります。

 

このコラムをご覧いただいた上で似たような状況にあると思われた方は、今日にでも(既に遅い時間なら明日にでも)色々と調べられた方が良いですよ。


  目次に戻る

  • このエントリーをはてなブックマークに追加