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2017.12.22   2020.07.12

REITがなぜ「1坪2億円」の物件を買う必要があるのか?

仲介手数料一覧表及びその計算方法

少し前の話になります。日本リテールファンドが銀座の商業施設を購入しました。

 

参照:日本リテールファンド投資法人「国内不動産信託受益権の取得に関するお知らせ【Gビル銀座中央通り01、Gビル吉祥寺02】 」

 

この取引、土地の坪単価に計算しなおすと「1坪=2.1億円」になります。異次元過ぎてよく分かりません。

ちなみにこの物件は「NOI利回り2.8%」だそうです。ということは、単純に考えればこの物件は2.8%以下の利回りで売却しないと日本リテールファンドは損をすることになります。保有期間の運用益や減価償却などを考慮に入れれば、単純な売却利回りだけで損が出るか否かを判断することは出来ません。しかし、「普通」であれば2.8%以下の利回り、まあ2.5%程度の利回りで誰かに買って欲しいものです。

 

 

ちなみにこの付近にあるティファニーのビルをソフトバンクの孫さんが個人で購入されています。300億円超で購入され、利回りは3%を切っているようです。しかし、孫さんの場合は投資というよりは節税目的でしょう。

 

 

私が最も気になるのは、この物件を購入したのがREIT銘柄である事。REIT銘柄と言えば、その後ろには多数の投資主さん達がいらっしゃいます。REITの使命はこのような多数の投資主からの大切な資金をお預かりし、それを不動産で運用することによって投資主に利益を還元することです。そしてその報酬として手数料を得るのがREIT本来の形。

 

 

この「2.1億円/坪」の「NOI利回り2.8%」の商業施設を購入することが、果たして多数の投資主の為になる投資なのでしょうか。

 

 

さらにこの取引の詳細を見ていくと、売主は「特定目的会社銀座26」となっていました。この会社は三菱商事が出資している不動産信託受益権の取得・保有・処分を目的とした会社です。そして、買主である日本リテールファンド投資法人のスポンサーは三菱商事。さらに物件の50%の持分は三菱商事のグループ会社が運用する不動産ファンドが保有します。日本リテールファンドとこの不動産ファンドが50%ずつの共有になるのです。

 

 

つまり、この取引は三菱商事という名前の中で完結しているのです。「不特定多数の投資主がいるREITが行う取引が三菱商事の中で完結している」この事に矛盾を覚えるのは私だけでしょうか。

 

 

うがった見方をすれば、「日本リテールファンドに高値で買わせることにより多額の利益を得ているのではないか」と思われても仕方ないのではないでしょうか。実際に売主である「特定目的会社銀座26」が当該物件をどの程度の価格で仕入れているのかを調べようとしましたが、分かりませんでした。

 

 

取得を決めた理由は「商業繁華性の非常に高い銀座エリアのメインストリートに位置しているから」と述べています。つまり「希少性が高いから高くても大丈夫!」という事であると思います。しかし、投資主が望む物件はは「希少性の高い物件」ではなく「利回りの高い物件」であり「最終的に高値で売れる物件」なのではないでしょうか。

 

 

REITがスポンサーである会社の物件を購入することは良くあります。スポンサー物件を購入できるということは、安定した物件の供給という意味ではとても大きなメリットです。物件を仕入れ規模を大きくすることによってREITは成長しますので。

 

 

他方、物件の出口としてREITを悪用しようとすれば出来てしまうのもまた事実。「どうせREITに買わせるんだから多少土地が高くても仕入れよう」という事も十分考えられます。羨ましいと言えば羨ましいですが、非常に怖い。J-REITというパブリックの器が恣意的に利用される可能性がありますので。

 

 

いずれにしろこの取引には少し疑問が残ります。取引の当事者からすれば

「お前が疑問に思おうが知ったこっちゃない!」って感じでしょうが。。。

 

 

最後までお読み頂きましてありがとうございました。

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