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2018.03.26   2020.07.05

なぜ人はタワーマンションを買うのか?

なぜ人はタワーマンションを買うのか?

なぜ人はタワーマンションを購入するのでしょうか。私は極度の高所恐怖症であり、4階以上の階に住むという選択肢はありません。20階30階など以てのほかです。苦痛以外のなにものでもないでしょう。しかし、まるで私など蚊帳の外であるかのように、タワーマンションの売れ行きが好調です。

上層階に住んでいた場合、より下の階で火事などの災害が起こった場合にどのように逃げるのでしょうか。熊本地震を経験した私から言わせて頂ければ、どんなに耐震・免震構造の建物でも地震の際はとてつもなく揺れます。現在はマンションの4階に住んでますが、あり得ないくらい揺れました。立っていることが出来ませんでした。もちろんエレベーターも復旧するまでに数日かかりました。4階までの階段の往復ですらキツイです。30階などとても階段で行ける階数ではありません。

私にはタワーマンションの良さが全く分かりませんが、文句ばかりを言っていても誰も賛同してくれません。タワーマンション購入理由には下記のようなことが挙げられます。

  • アクセス抜群の立地
  • 充実の共用施設
  • 眺望
  • 資産価値

この4つの中の3つには同意しますが、1つだけは全く同意出来ません。分かりやすく赤字にしておきました。そう、「資産価値」です。タワーマンションを購入する動機が資産価値にあるというのです。私は逆に、

タワーマンションの資産価値こそ最も危険なもの

と考えています。別に高所恐怖症だからタワーマンションを毛嫌いしている訳ではありません。タワーマンションを購入できる裕福な方々を羨ましく思っている訳でもありません。私には私なりの理由があります。この点については私の考え方を述べておく必要があるようです。

1.不動産の資産価値は「土地」で決まる

日本においては、不動産の資産価値は土地で決まります。もちろん、新築の建物の場合には建物の資産価値もありますが、減価償却によりどんどん価値が減少していきます。減価償却は税務会計上の都合によって定められている側面が強いですが、そこには「建物は限りあるもの」という考え方があります。日本における建物は、例え建物としての利用価値が残っていたとしても遅かれ早かれ資産価値は無くなってしまうのです。

他方、土地は有限の存在ではなく無限の存在であると考えられています。もちろん、地球が爆発してしまったら土地も何も無いですが、そのような万に一つの事態が起こらない限り無限に存在し続けます。「不動(動かない)産(資産)」という言葉は建物よりもむしろ土地を表していると言えそうです。

タワーマンションを購入した場合、土地も付いてくるという事をご存知ですか。正確には「土地の持ち分」が付いてくるのですが、タワーマンションの場合には「狭い土地に超高層マンション」という事がほとんどです。つまり、土地の持ち分も非常に狭い。先ほどいくつかのタワーマンションの1戸当たりの持ち分を計算してみましたが、平均5坪前後です。もちろん、1戸当たりの部屋の大きさにより持ち分は異なりますが、それにしても狭い。タワーマンションの多い東京の湾岸エリアの坪単価は200万~350万円なのでそこからタワーマンションを購入した場合の土地の持ち分の資産価値を計算してみると、

(200万円×5坪)~(350万円×5坪)=1,000万円~1,750万円

となります。湾岸エリアのタワーマンションであれば、新築分譲価格は6,000万円~7,000万円は普通です。つまり、タワーマンションにおける土地の持ち分の価値は、建物価格の1/4~1/5程度しか無い事になります。逆から言えば、新築当時のタワーマンションの資産価値のほとんどが建物の価値なのです。これは問題です。「不動産の資産価値は土地で決まる」のであり「建物の限りあるもの」であり「建物の資産価値は減少するもの」なのです。

私の考え方をタワーマンションに当てはめた場合、

タワーマンションは価値の減少が激しい資産

であるという結論になるのです。購入当時の建物の資産価値が高ければ高い程、その資産価値の減少幅は大きいのです。確かに、不動産投資という観点においては建物の資産価値の減少幅を上手に利用した節税方法もありますが、今回は自ら購入して自ら居住することを前提にしています。その場合には、建物の資産価値の減少はどのような影響を及ぼすのでしょうか

2.建物の資産価値の減少が及ぼす影響

建物の資産価値の減少を上手に利用した節税方法に関しては下記の記事をご参照下さい。

なぜ建物の減価償却費は節税になるのか?

今回はあくまで居住用としてタワーマンションを購入する場合です。まず否定しておきたいのが「タワーマンションを購入しておけば将来的に高く売却できる」という幻想です。十中八九、高く売却出来ません。ごくごく一部の立地が超バツグンのタワーマンションであれば購入価格より高値での売却が期待できるかもしれません。何せタワーマンションのは資産価値の減少の激しい不動産なのですから。

近年のタワーマンションは「鉄筋コンクリート造(RC造)」が主流となっています。この鉄筋コンクリート造の建物の耐用年数は「47年」と定められています。減価償却費を計算するための基準となる年数です。

※この耐用年数は「建物がいつまで利用できるのか」とは一致しません。あくまで税務会計上の都合により設定されている年数です。

よく「住宅を購入した場合、住宅ローンの返済が終われば住宅は全て資産になる」という話を耳にします。確かにその通りです。30年で住宅ローンを組み30年間の返済が終われば負債もなくなり晴れてキレイな資産となります。しかし、その住宅は「購入当時よりも価値が減少した資産」となっています。前述したRC造のタワーマンションの場合、30年後の資産価値は6割以上も減少しているのです。

何が言いたいのかといえば、タワーマンションにおいては値上がり益を期待できないどころか、購入時の価値を維持することも難しい、という事です。これはタワーマンションに限らず全ての住宅において言えることですが、タワーマンションにおいては、その資産価値の減少が激しくなる可能性が大きいのです。購入当時の資産価値のほとんどが建物で構成されていますので。これが戸建て住宅のように土地の割合が大きい場合には、全体としての資産価値の減少は緩やかになるでしょう。もちろん、今後も人口の増加が見込める地域でなければ土地の資産価値の減少も激しくなる可能性は否定できませんが。

3.建物の資産価値の減少以外にあなたを待ち受ける現実

分譲マンションの場合、例え住宅ローンを完済したとしても毎月必要になる出費があります。「管理費」と「修繕積立金」です。ちなみにこの管理費と修繕積立金に関しては、国土交通省が以前調査をしています。その調査結果によれば、両者の平均は

  • 管理費:145円/㎡
  • 修繕積立金:149円/㎡

となっています。

参照:国土交通省「平成25年度マンション総合調査結果」

まず管理費。管理費に関しては築年数が経過しても管理費自体にあまり変動はありません。ブランドのあるマンションは質の高い設備や管理を提供するために管理費が高くなる傾向はありますが、これは入居当初から同じです。築年数に応じて管理費が増加することはありません。もしあるとしたら、管理組合の収入に不足が生じそれを補うためくらいでしょうか。

一方、修繕積立金は築年数と共に増加します。修繕積立金とはその名の通り「将来修繕する時の為に積み立てておくお金」です。新築当初は1万円台だったものが、10年20年後には2万円~3万円になるという事はごく当たり前です。タワーマンションにおいては5倍程度にまで膨れ上がることがあります。修繕をするにも高層過ぎて足場を組めない、外壁がタイルなどの理由がありますが、ビックリするぐらい修繕積立金は増加します。

タワーマンション購入時には2万円~3万円で収まっていた管理費及び修繕積立金が、住宅ローンを完済した時には5万円~6万円になっているという事は当たり前の出来事です。タワーマンションであれば10万円近くまで増加することも考えられます。「住宅が既に所有資産になっているのに、なぜ月々10万円も払わなければいけないのか?」という事にならないよう、事前にしっかりと調査をしておく必要があります。


タワーマンションは固定資産税も見直されました。20階建て(60メートル)以上の新築タワーマンションで平成30年後以降に引き渡されるものに対しては、「同じ棟でも階数が1階上がると固定資産税が0.26%高くなる」のです。つまり、1階よりも、

  • 30階:7.8%
  • 40階:10.4%
  • 50階:13.0%
  •  

高層階になればなるほど、固定資産税が高くなるのです。ですが、1棟のタワーマンションにおける全体の固定資産税額に変更は無いので、

  • 新築タワーマンションの高層階:増税
  • 新築タワーマンションの低層階:減税
  •  

となります。なぜこのような課税の仕方になったのかと言うと「不公平の是正」です。マンションにおける固定資産税は、まずマンション1棟全体の固定資産税評価額を算出しそこから各戸の床面積に応じ税額を割り振る、という方法により算出されています。つまり、高層階でも低層階でも「公平」に税額が設定されているのです。しかし、よく考えてみるとオカシイことになります。

タワーマンションにおいては、低層階よりも高層階の方が分譲価格は高額であり、評価額も高額です。しかし、従来のような1棟全体の固定資産税を床面積により割り振る方法では、先の低層階と高層階の差異を反映できません。なので、今回の税制改正によりその差異が反映されるようになりました。

もちろん、平成29年までに引き渡されるものに関しては従来のままですし、既存のタワーマンションの固定資産税を見直すものでもありません。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか。

  • 不動産の資産価値は「土地」で決まるのに土地の持ち分が非常に少ない
  • 新築当時の建物の資産価値割合が大きいので、築年数の経過による資産価値減少が激しい
  • 管理費・修繕積立金・固定資産税が高額

タワーマンションの購入を検討している方がいらっしゃいましたら、まずはこの3つをしっかりと考えてみてください。資産としての価値が乏しいのにも関わらず、各種費用が高い。住宅ローンを組んでまで購入するべき住宅なのでしょうか。

間違いなく私は買いません。そもそも買えません。

最後までお読み頂きましてありがとうございました。


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