新築物件と見間違うほどキレイでオシャレな「リノベ物件」。言うまでもないかもしれませんが、リノベ物件とは「リノベーション物件」の事です。リノベーションとは、「既存建物に大規模な改修工事を行うことで、建物の性能や価値を新築当時よりも向上させること」です。例えば、
- 2つの部屋の間にある間仕切りを取っ払い1つの大きな部屋にする
- 耐震補強をする
- 外壁に断熱材を貼る
上記のようなものがリノベーションに該当します。「従前よりも建物の性能や価値を高める」という点がポイントです。建物の基礎部分まで工事をすることもありますので、それが可能となるのです。またリノベーションとよく対比されるのが「リフォーム」。リフォームは「現状回復」と言われることもあり、「建物を新築当時の状態に戻すこと」です。
- 壁紙や畳の張替え
- キッチンやトイレなどの水廻り設備の変更
ちなみに、この「リノベーション」と「リフォーム」に明確な定義はありません。様々なリノベーションやリフォーム会社などによって個別に定義づけられている、というのが現状です。ですが、それでは非常に分かりづらいので今回は上記のように分かりやすく表現をしてみました。
リノベーション:元の状態に戻すこと
リフォーム:作り変えること
下記ではリノベーションとリフォームを対比しながら、リノベーションについてもう少し深く考察していきます。
1.リノベーション物件が登場した背景
当サイトでも何度か考察をしていますが、今の日本は「空き家大国」です。総務省統計局の調査によると、平成25年において、
- 総住宅数:6,063万戸
- 空き家数:820万戸
- 空き家率:13.5%
上記のような数値であることが分かりました。
我が国においては、建てては壊しまた新しく建てるという「スクラップ&ビルド」が文化として根付いています。海外のような石造がメインではなく木造住宅がメインなので、このような考え方が根付いたと考えられます。勿体ないと言えば勿体ないですよね。
しかし、今ではスクラップすらせずに空き家のまま放置するという事態が起きています。先ほどの統計のデータからも分かるように全住宅の13.5%が空き家なのです。このデータは数年前のものですので、2017年現在の空き家の数はもっと多いでしょう。
このように空き家の数は増え続けています。にも関わらず、新築住宅も次々に建設されています。2017年の新築住宅着工件数は100万戸に届かない程度だと言われています。新築住宅の着工件数は以前に比べて鈍化していると言われていますが、それでも100万戸近くも建設されています。空き家が増加するという事も納得です。
既に住宅が供給過剰であることは誰しもが分かっている事実ですが、それでも住宅は増え続けています。しかし、これは必然なのです。仮に新築住宅が建設されなくなれば、住宅メーカー、建材メーカー、その他不動産業界全体がおかしくなるのは目に見えています。日本経済を支えている不動産業界がおかしくなれば、日本の景気は一気に悪化します。他に及ぼす影響が大きすぎるのです。なのでそこに土地がある限り新築住宅の建設が無くなる事は考えられません。縮小しながらも確実に新築住宅は建設されます。
ただ、このまま空き家が増加し続けるのを黙ってみているわけにはいきません。日本政府としても今後は「フロー(量)からストック(質)へ」と政策を転換させています。「住宅不足が改善された今、今後は住宅の質を重視していこう」と宣言をしたのです。
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その具体的な方法は様々あると思います。長期優良住宅然り、スマートハウス然り。
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しかし、何よりもまず取り組まなければいけない事は中古住宅を市場に流通させることであり、その為には中古住宅の価値を向上させる必要があります。その為の手段として「リノベーション」が登場したのは言うまでもありません。
リノベーションは大規模な改修工事を行います。以前の住宅の面影が無くなるくらいのキレイさや性能を備えた住宅を作り出すことが可能です。インターネットで「リノベーション物件」と検索して色々なリノベーション物件の画像を見て頂ければお分かりいただけるかと思いますが、とても中古物件とは思えません。さらに、新築住宅とリノベーション物件の価格を比較すると、リノベーション物件の方が2~3割程度割安で購入できます。
このような中古物件、特に空き家の増加がリノベーション物件が登場した背景にはあるのです。
2.リノベーション物件の魅力
リノベーション物件の魅力は何と言っても「新しさ」と「価格」です。「新しさ」だけを求めるのであれば、新築物件の方が良いかもしれませんが、そこに「価格」という要素が加わった場合にはリノベーション物件が選択肢に登場します。
リノベーション物件は築年数が20年以上の古い物件が多いです。戸建て住宅に関して言えば、築年数が20年を超える物件は新築当時から▲1,000万円程度価格が下がる傾向があります。売買価格が半値以下になるようなケースもあるのです。そのような物件を安く仕入れてリノベーションをするからこそ、新築物件よりも安く購入できるのです。もちろんリノベーションをしますので、見た目は新築同様です。
建物の基礎となる部分は残しその他を大規模に改修しますので、まだ誰も住んだことのない新しい空間が誕生します。「古いのに新しい」という一見矛盾に思えることが実現可能なのです。但し、リノベーション物件は自分の好きなように全て「自由」に出来るかというと、実際はそうでもありません。マンションの構造が「壁式構造」というものである場合には、壁は構造上非常に重要なものになります。「構造壁」と呼ばれる壁は壊すことが出来ないので、自由に間取りを変更することは出来ません。さらに、管理規約によって出来る工事と出来ない工事が決められています。騒音が生じる工事は✖という事が多いです。
戸建ての場合には、自分で物件を仕入れて自分で設計士と打ち合わせをし工事を発注すれば自分らしさを最大限表現できるリノベーション物件が出来ます。しかし、不動産業者が仕入れてリノベーションをした物件は、人気のあるデザインや間取りになっていることが多いです。あまり個性的にし過ぎると逆に販売することが難しくなってしまいます。「エッジがバリバリ利いた物件」ではなく「人気のある物件」である必要があります。
リノベーション物件の魅力
- 新築住宅よりも2~3割程度安い
- デザイン性に富んだ物件が多い
- 立地重視の場合、新築物件と合わせてリノベーション物件も選択肢に含めれば可能性が広がる
3.リノベーション物件のここに注意!
リノベーション物件は非常に理にかなった物件です。「人に合わせた住居」を創り出すことができるのですから。そして、日本で問題になっている「空き家の増加」に歯止めをかけてくれるかもしれません。リノベーション物件の認知度をより一層向上させる必要はありますが。
しかし、リノベーション物件においても注意しなければいけない事があります。何といっても「中古物件」であるという事は忘れないで下さい。特に「築年数」に注意が必要です。1981年(昭和56年)6月1日に建築基準法が改正され新耐震基準が導入されましたので、出来ればこれより後に建設された建物を購入したいものです。
もちろん、それ以前の建物でもしっかりと耐震補強をするのであれば問題はありません。しかし、旧耐震基準の建物を新耐震基準に適合するよう工事を行った場合には、予想以上の費用が発生する可能性があります。リノベーション物件の魅力の1つである「価格」メリットが活かせなくなることも考えられます。リノベーション物件の基となる物件の選定には十分に注意しましょう。
さらに、リノベーション前の状況を把握することは非常に難しいです。見や目は新しくオシャレに見えるかもしれませんが、内部では建物の構造などに問題が生じている可能性も否定できません。この点も「中古物件」であることがデメリットとして表れています。経験豊富なリノベーション業者であれば、中古物件におけるリノベーションの注意点を把握しています。そのような業者を選定するに越したことはありません。
また、水廻り(キッチン・トイレ・バス)には注意が必要です。リノベーション物件を購入した後のトラブルとして「水廻りのトラブル」は非常に多いのです。これも「中古物件」であることが原因なのですが、入念にチェックすることをおススメします。
最後に、リノベーションにかかる費用は住宅ローンでは賄えません。リフォームローンを利用することになりますが、このリフォームローンが住宅ローンよりも割高です。一般的な金利で3~5%で設定されていることが多いと思います。担保の有無で金利は異なるようですが、中古住宅を購入後にリノベーションを行う場合には、このリフォームローンの事も頭に入れておく必要があります。
リノベーション物件のここに注意!
- 築年数によっては新耐震基準に適合していない可能性あり
- リノベーション前の状況を把握することが難しい
- 水廻り(キッチン・トイレ・バス)に不安要素が多い
- リフォームローンは住宅ローンよりも金利が高い
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。
リノベーション物件は可能性の塊です。日本の「空き家問題」の解決の一助になり得るポテンシャルを持っています。中古の住宅をリノベーションして販売するという流れが出来れば、日本の中古住宅市場は一変するでしょう。
しかし、その為には解決しなければいけない問題も存在します。物件の見た目がキレイになったところで内部の設備等にダメージが蓄積されているのであれば、結局は修理費等で高くついてしまいます。建築士などの専門家が然るべき段階で建物の調査を行うような仕組みも考える必要があるでしょう。素人には建物の内部の状況など、把握する術がありませんので。
まだまだ新築住宅の人気が根強い日本に、このような中古住宅の選択肢が広がる事を期待しています。
最後までお読み頂きましてありがとうございました。