皆さんが詐欺と聞いて思い浮かべるものは何でしょうか。
- オレオレ詐欺
- 結婚詐欺
- 不動産詐欺
私の中では詐欺と言えばこの3つがすぐに思い浮かびます。
この中でも結婚詐欺は遥か昔からある詐欺ですが、他方オレオレ詐欺は比較的新しい詐欺です。テレビで結婚詐欺やオレオレ詐欺のニュースをたまに見ることがありますが、「なんでこんな詐欺に引っかかっちゃうんだろう?」と思う事があります。なぜか。それは最初から「怪しすぎるから」です。
- 「事故を起こして今日中に100万円必要になった!」
- 「2人だけの新居の為に、300万円を預けて欲しい!」
親が子や孫を思う気持ちに限界はありません。また、恋愛感情は人間を盲目にします。両者とも他に代えがたい非常に尊い感情です。決して他人が悪用してよいものではありません。しかし、オレオレ詐欺も結婚詐欺もこの尊い感情を悪用します。確実に人としての倫理に反する行為です。
ただし、これらの詐欺は客観的に見ると非常に分かりやすい詐欺です。当事者以外の方から見れば、「なぜ?」と思う事でしょう。しかし、当事者には特別な感情があるので分からないのです。
他方、不動産詐欺は非常に手口が巧妙です。後ほど述べますが、不動産のプロ中のプロと呼ぶにふさわしい会社も不動産詐欺の被害に遭っています。プロでも騙されてしまうのですから、一般消費者の方が騙されるのはムリもありません。
不動産詐欺の手口と言えば、
- 書類は普通に偽造します!
- 不動産知識と経験の差を悪用します!
- 「今なら…」「アナタだけに…」などの心理戦を仕掛けてきます!
- 結論:何でもします!!!
このようなヤバい奴らを野放しにしてよいのでしょうか。正義感の塊である私にはそのような事はできません。しかし、プロでも騙されてしまう不動産詐欺。どのように自己防衛を図れば良いのでしょうか。
私が思う詐欺に遭わない為の最良の手段は、どのような不動産詐欺があるのかを事前に知っておくことである、です。様々な不動産詐欺の種類と手口を知っておけば怪しい不動産業者が近づいてきてもすぐに反応することが可能です。「あぁ、あれか」と頭に直感が走れば詐欺に遭う事は無いでしょう。
なので今回は、様々な不動産詐欺の種類とその手口を簡潔に公開したいと思います。少しでも不動産詐欺に遭われる方が少なくなるように思いを込めながら書いていきたいと思います。
1.不動産詐欺の種類
おとり広告
- 手口
- 実際には存在しない、又は存在はしているが取引をするつもりがない物件を広告に利用し、本命である別の物件を売りつけようとする行為です。宅建業法で禁じられています。
- 対応策
- 売買物件や賃貸物件の適正価格(相場価格)をインターネット等を使用して調べ、明らかに適正価格より安価な物件の場合には注意をしましょう。その物件を取り扱っている不動産業者と直接話をし、適正価格よりも安価な理由があるのであれば問題はありません。
「あの物件は契約済みです。こちらの物件はどうですか?」など広告に載っていた物件が全て契約済みという場合には、おとり広告を利用して集客している可能性があります。十分に注意して契約を進めてください。
地面師
大手住宅メーカーである積水ハウスさんも地面師の被害に遭いました。その総額は何と63億円です。不動産取引のプロ中のプロである積水ハウスさんが騙されたことも衝撃ですが、63億円という金額もまた衝撃的です。
- 手口
- 土地や建物の所有者になりすました詐欺師が、所有者の許可を得ることなく勝手に不動産を売却したり担保に入れたりして、売却代金や借入金をだまし取る行為です。印鑑証明やパスポートなどを偽造して所有者になりすまします。3Dプリンタを悪用し実印も偽造するという噂もあります。
- 対応策
- 現状のような書面だけによる不動産売買契約や不動産登記のやり方では地面師による詐欺を完璧に防ぐことは非常に難しいのではないでしょうか。様々な技術が進歩している現在、書面を偽造するのはより容易になっています。このような偽造系の詐欺への対応策は今後の課題です。
一見すると、非常に原始的な手口であり簡単に見破れそうです。しかし、原始的だからこそ逆に見破るのが難しい。事実、地面師詐欺による被害は後を絶ちません。弁護士や司法書士も地面師側の詐欺に加担することもあるそうです。もう誰を信用してよいのか分かりませんね。
今回のケースを簡単に説明すると、まず、所有者になりすました地面師に積水ハウス側が売買代金の一部を支払いました。その後、積水ハウス側が所有権移転登記の申請を行ったところ、所有権移転登記に必要な書類に偽造の疑いがあると法務局から指摘され事件が発覚しました。もちろん所有権移転登記は却下されました。
所有権移転登記は通常司法書士さんにお願いをします。何が言いたいかと言えば、日々の業務として登記を取り扱っている司法書士さんでも偽造に気が付けなかった、という事です。法務局の登記官によって初めて偽造が分かったという事を私たちは真剣に受け止めなければいけません。
もちろん、売主が真正な所有者であるかどうか、及び所有権移転登記に必要な書類が真正なものであるかどうかの識別が売買契約時に買主側で完璧に行えるようになれば、今回のような事件は未然に防げます。しかし、現状の不動産売買契約及び所有権移転登記の手法は不完全であり、完全に詐欺を防ぐことは不可能です。
特に不動産登記権利情報の取り扱いには十分に注意しましょう
かく言う私も、地面師詐欺に対する具体的な解決策をこの場で提案することは出来ません。性善説から性悪説に考え方を改めなければいけませんし。 ですが、不動産売買契約及び不動産登記の在り方の改革が急務であることは、間違いありません。
※対応策と書いておきながら、「対応するのは難しい」という結果になってしまいすいません…
原野商法
- 手口
- 原野などの価値のない土地をウソ偽りを並べ立てて売りつける行為です。
- 1980年代のバブル期に頻繁に行われていた詐欺です。「近隣でリゾート開発が行われるので、将来的にこの土地の価値は上がりますよ!」という謳い文句が有名です。
- 対応策
- 現地視察に限ります。原野商法の被害者のほとんどが現地を見ずに土地を購入してします。原野商法の対象となる土地は現地を見れば価値が無い事が分かるものがほとんどです。
キレイなパンフレット、芸能人も買いました情報、近隣で行われる開発の概要などを見せながら「早く買わないと他の人に売っちゃいますよ!」という話で騙そうとしてきます。
そして、原野商法の対象地はほとんどの場合が遠方(以前は北海道が多かったそうです)にあります。ここが詐欺師の狙いなのです。わざわざ足を運ぶことが無いような場所の土地を美辞麗句を並べて売りつけるのです。
しかし、不動産売買の基本は現地視察です。現地を見ずに不動産を購入する不動産業者など皆無です。不動産を購入する予定があるのであれば、絶対に現地は見に行くべきです。
仮契約詐欺
- 手口
- 仮契約という不動産取引には存在しない契約を口実に手付金などの金銭をだまし取ろうとする行為です。不動産取引の経験が無い一般消費者に対して、あたかも本契約の前には仮契約が必要であると思わせ、金銭を詐取しようとします。
- 対応策
- 仮契約など存在しません。そのような事を求めてくる不動産業者とは取引してはいけません。
- 手付金の支払い⇒仮契約
- 残代金の支払い⇒本契約
上記のように思われている方がいらっしゃるかもしれませんが、これは間違いです。仮契約の手付金として支払ってしまった金銭は本契約の手付金と解釈されます。なので、もし金銭を支払った後に支払った側から契約の解除を申し入れた場合には、手付金放棄による解除と見做されますので、手付金は返金されません。
海外不動産投資詐欺
- 手口
- 主にアジアの発展途上国にある土地や建物の開発への投資を呼びかけ、最終的には投資資金として受け取ったお金を詐取する行為です。
- 対応策
- 前述しましたが、不動産取引の基本は現地視察です。例え海外に所在する不動産だからといって、現地を確認せずに不動産を購入してはいけません。
家が建てられない土地を売る、家を建て替えることが出来ない中古住宅を売る詐欺
- 手口
- 建築基準法上、建物が建てられない土地、または再建築不可能な中古物件を、その事実を伝えずに安値で売りつける行為です。
- 対応策
- 宅建業者には売買対象物件の重要事項に関する説明義務があります。今回のような建築不可能物件及び再建築不可能物件は重要事項説明書に記載をしなければいけない内容です。しかし、重要事項説明書は契約の当日若しくは契約の直前に交付されますので、なかなか隅々まで確認をする時間がありません。ですので、不動産業者との現地視察の際に、「この土地は問題なく建物は建てられますか?」「この中古物件は建替えることは出来ますか?」とヒアリングするのが一番良いでしょう。
建築基準法上の原則として4m以上の幅員のある道路に2m以上接していなければ建物は建てられません(例外も当然ありますが)
このような、そもそも建物が建てられない(再建築出来ない)土地は土地としての利用価値が低いので安いです。
以前、中古戸建の物件概要書を見たときに、下の方に小さく、
再建築不可と記載されているのを見たことがあります。こんな物件に引っかかってしまったら大変です。
2.不動産詐欺をする人の特徴
- 何よりも先に登記の移転に必要な書類を欲しがる
- 常に焦っている
- 言動が不自然
- セカンドバックに金のネックレス
上記のような特徴や言動がある不動産業者にはくれぐれもお気を付けください。
3.特に重要な不動産詐欺への対応策
- 不動産売買契約締結前に必ず現地を確認する
- 売買代金の受領と所有権移転登記は同日に行う
- 売買代金の決済は現金で行う
- 重要書類を事前に契約の相手方には渡さない。(特に登記に必要な書類の取り扱いには十分に注意する。)
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。
私にとっては「地面師グループによる積水ハウスへの不動産詐欺」のニュースは本当に衝撃的でした。国内有数の住宅メーカーである積水ハウスさんが詐欺の被害に遭われたのです。普通なら考えられません。
逆に言えば、積水ハウスさんでも騙されてしまう程、詐欺師の手口は巧妙なのです。知識も経験も十分すぎるほど有している積水ハウスさんでも騙されてしまうという事は、知識と経験に乏しい一般消費者の方々はひとたまりもないでしょう。
直感で怪しいと感じる不動産業者とは絶対に取引をしないでください。若しくは、お知り合いの不動産業者や不動産に詳しい方に教えを仰ぎながら慎重に取引をすることをおススメします。
この記事に書かれている内容が、皆さんのお役に立てれば幸いです。
最後までお読み頂きましてありがとうございました。