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2017.10.18   2020.07.12

知ってますか?建物の「減価償却費」が節税になると言われる理由

減価償却費のイメージ

不動産投資を行う人は必ず知っておかなければいけない「減価償却費」。減価償却費はその名の通り費用です。

例えば賃貸マンションを運用している時、100万円の収益があったとしても費用(減価償却費以外)が100万円かかれば利益0です。税金も0です。キャッシュも0です。

 

では、100万円の収益があり減価償却費が100万円かかった場合はどうでしょう。利益は0。税金も0。でも今回は、キャッシュは100万円残ります。これが減価償却費の能力です。減価償却費を上手に利用すれば節税になると言われる理由です。

 

ここで建物の減価償却費の簡単な説明。建物は長期にわたって利益を生み出してくれます。それなのに建物の取得費を取得した年に費用として一括計上したらどうなるでしょうか。取得年には大幅な費用、それ以降は費用0なのに利益計上・これでは会計上の重要な考え方である「費用収益対応の原則」に反してしまいます。

費用収益対応の原則とは、収益と費用ををできる限り企業活動上の経済的因果関係に即して把握すべきであるとする、期間損益計算上の基本原則である

参照元:Wikipedia「費用収益対応の原則」

言い換えれば、どの利益がどの費用に基づいて生み出されているのかを明確にする必要があるのです。それを可能にするのが減価償却費なのです。

 

この減価償却費、とっても重要です。上手に利用すれば節税になります。税金が戻ってくることだってあります。

 

しかし、「減価償却費は費用だから節税できるんでしょ」という知識だけでは不十分です。もう1歩踏み込む必要があります。「減価償却費は費用でありさらに〇〇だから節税になる」まで理解しましょう。まずは減価償却費の取り扱いを他の投資と不動産投資とで比べてみましょう。

目次

1.減価償却費は不動産投資特有の費用

他の投資において「減価償却費」という概念はありません。減価償却費は不動産投資における建物特有の費用です。これが「不動産投資は節税になる」と言われる理由の1つです。他の投資において減価償却費くらいガッツリ費用計上できるものはありません。

 

注意して頂かないといけないのは、減価償却を行えるのは建物だけです。土地は減価償却の対象ではありません。減価償却費は「費用収益対応の原則」に則ったものであることに加えて、資産価値の経年劣化を会計上にも反映させる役割があります。「古くなればなるほど資産価値は下がりますよ」という事です。

 

「建物は経年劣化とともに資産価値が下がるけれども土地の資産価値は不変である」という考え方から上記のようになります。「土地神話」全盛の時代であれば反論する余地はありませんが、今の時代では「土地も場所によって経年劣化するのでは?」と思ってしまうのは私だけでしょうか。

 

最初にも述べましたが、減価償却費は費用です。費用には減価償却費の他にもたくさんあります。例えば賃貸アパートを所有していて収益よりも減価償却費を含めた費用の方が多い場合(赤字の場合)、どのような対応をすればよいのかご存知ですか。

2.減価償却費を利用して不動産所得が赤字になった場合には他の所得と損益通算ができる

これも減価償却費が節税に利用される大きな大きな理由の1つです。不動産所得と他の所得、例えばサラリーマンとしての給与などと通算することにより、所得税の還付を受けることも可能になります。ここでは減価償却費のみにスポットを当てますので、損益通算の詳細な話は別の記事でさせて頂きます。

 

※他の所得との損益通算が出来ない損失がありますのでご注意ください。

参考:国税庁HP「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」

 

例えば、不動産所得が200万円、減価償却費と他の費用を合わせて300万円、サラリーマン収入が500万円の場合、200万円ー300万円=△100万円をサラリーマン収入の500万円と通算することが出来ます。つまり、サラリーマン収入のうちの△100万円に対応する所得税は還付を受けることが可能になります。

 

この損益通算を行うためには確定申告が必要です。忘れていたらアウトです。手続きもせず「不動産所得が減価償却費のおかげで赤字だから税金が戻ってくる」などと喜んでいたら後の祭りです。喜ぶのは全ての手続きを終えた後です。

3.法定耐用年数以上の木造物件は減価償却費が跳ね上がる

「節税したいなら法定耐用年数を超えている木造物件に投資しろ!」

これが不動産投資における節税の王道(?)と呼ばれているものです。「不動産投資で利益を上げる」という観点からは疑問符が付きますが、少し説明させてください。

 

建物は法律により決められた期間で減価償却を行います。これを法定耐用年数と言います。例えば、

 

鉄筋コンクリート造:47年(償却率:0.022)

鉄骨造:34年(償却率0.030)

木造:22年(償却率:0.046)

 

というように決められています。建物の購入金額が同じであれば、法定耐用年数が短いほうが毎年の減価償却費は高くなります。新築された建物の価格が1億円の場合は1億円に償却率を掛ければ減価償却費が計算できるので

 

鉄筋コンクリート造⇒1億円×0.022=220万円/年

木造⇒1億円×0.046=460万円/年

 

木造と鉄筋コンクリートでは減価償却費に2倍以上の差があります。両者で利回りが同じ不動産投資物件があれば、費用だけで240万円も違います。特に個人投資家の方にとっては、とても重要なポイントですね。

減価償却費で特に注意する事

さらに中古と新築では耐用年数の計算方法が異なります。一定条件を満たした中古物件は減価償却率が以上に高くなります。まずは中古建物の法定耐用年数の計算方法から。


築年数>法定耐用年数

耐用年数は法定耐用年数×20%

ex.木造で築年数が法定耐用年数を経過している場合⇒22年×20% =4年

 

築年数<法廷耐用年数

耐用年数は(法定耐用年数ー築年数)+築年数×20%

ex.木造で築年数が15年の場合⇒(22年ー15年)+(15年×20% )=10年


上記の「法定耐用年数を超えている木造物件」の耐用年数が凄い事になっています。4年です。建物価格がいくらであろうと4年で償却できるのです。1億円なら、2,500万円/年です。減価償却費だけで家が買えます。

そもそも減価償却費は会計上の費用なんですけど。。。

4.参考:REITの分配金には減価償却費が源泉となっているものもあります

REITでは当期純利益の額を超えて分配金を出すことがあります。これを利益超過分配と言いますが、この利益超過分配金の源泉となるものが減価償却費です。

 

REITの3つの特徴が分配金の「安定化」「高利回り」を実現している

 

詳しくは上記の記事をお読みただければご理解いただけると思いますが、まさかREITの分配金まで減価償却費が関わっているとは普通は思いませんよね。減価償却費は間違いなく「覚える&理解する&利用する」べき費用です。

5.まとめ

いかがでしたでしょうか。

減価償却費が節税になる理由の中でも特に重要なものを3つ挙げました。減価償却費に関してこのコラムの内容を理解していただければ、不動産投資に関して、さらにREITへの投資に関しても考え方が絶対に変わります。このコラムをスタートとして不動産投資やREITへの興味を持っていただければ幸いです。


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