賃貸住宅は日本全国どの場所においても供給過剰です。「都心のど真ん中」「校区が良い」などのごく限られた希少性の高いエリアでは賃貸住宅を探すことは困難を極めます。他方、それ以外のエリアでは賃貸物件は豊富にあります。エリアによって賃貸住宅の需給環境は全く異なるのです。校区の良いエリアで賃貸物件を探したが全く出てこなかった私の実体験に基づいていますので、間違いありません(泣)。
供給過剰という事は「借主が強い」という事とイコールになります。そして借主が強いという事は「家賃交渉可能」という事になるのです。出ましたよ、皆さん。大好きな「値下げ」の登場です。オーナーも賃貸住宅が供給過剰であることは十分に認識しているはずです。それでも賃貸住宅が増え続けるのですから、値下げ交渉は決して悪ではありません。「普通の事」という認識を持ちましょう。
しかし、家賃交渉はやり方を間違えると失敗します。いくら供給過剰だと言っても手当たり次第「家賃下げて!」と言った場合、めでたくブラックリストに載るくらいの恩恵しかありません。しっかりとした方法を学んだ上で家賃交渉をしましょう。全然難しくありませんので、誰でも実践可能ですよ。
目次
1.狙いは4月~6月の「閑散期」
12月~3月は賃貸物件が豊富に出てくるうえ、4月に入学する方や入社する方の物件探しの動きが激しくなる時期です。新築物件もこの繁忙期に合わせて完成されることが多いです。この時期に家賃交渉などを行っても、不動産会社もオーナーも取り合ってくれないでしょう。繁忙期ですし、物件によっては条件交渉をすることなくドンドン埋まっていきます。貸し手の立場が強い時期です。ここは避けましょう。
ズバリ、狙いは「4~6月」。繁忙期に空室を埋めることが出来なかったオーナーや不動産会社が焦り始める時期です。繁忙期を逃すと空室を埋めるのは困難を極めます。次の繁忙期まで空室が続くという事も考えられます。1年も空室のまま放っておくことは、賃貸経営における失敗中の失敗です。この時期になると「家賃を下げよう」「初期費用を下げよう」「エアコンなどの設備を更新しよう」などの交渉手段をわざわざオーナー側が準備してくれます。この時期は借り手の立場が一気に強くなります。
また7~8月の夏場も閑散期ですので、条件交渉が可能な時期です。この時期は不動産会社もあまり忙しくないので、こちらの要望を丁寧に聞いてくれます。普段では難しい要求でもこの時期であれば真剣に聞いてくれるかもしれません。もちろん「家賃を半額にしてくれ!」などの要求を通すことは難しいです。あくまで「人としての常識の範囲内」でという前提条件が付きますので、お忘れなく。
2.交渉材料の確保
家賃交渉をする場合には、必ず「交渉材料」を確保しておきましょう。丸腰で交渉に臨んでも返り討ちに合うだけです。切れ味鋭い「材料」が必要です。その交渉材料の筆頭l候補が物件の「短所」です。繁忙期に埋まらなかった物件は誰もが入居したくなるような人気物件ではありません。少なからず短所が存在しているはずです。「築年数が古い」であるとか「駅から遠い」であるとか。これらの短所を家賃の交渉材料としましょう。
短所には他にも「ユニットバス」「1階」「空室が多数あり」などがありますが、皆さんが「この部分がちょっと…」と思う事を素直に交渉材料にすれば問題ありません。「部屋全体が暗くて薄気味悪い」などでも良いでしょう。大事な事はしっかりと思いを伝えること。「この部屋に住みたいがこの短所を考慮するとこの家賃は高い。なのでここまで家賃が下がれば入居したい」という事を理論的に話せるようにしましょう。
交渉材料は多ければ多い程有利です。物件個別の交渉材料の他にも、もし近隣に新築賃貸マンションが建っているのであればその物件への影響は必至です。今後空室が生まれる可能性は大でしょう。話の中でぼそっと「近くにキレイな賃貸マンション建ってますねー」と遠くを見ながら呟くのも良いかもしれません。
3.家賃がダメなら管理費・共益費の交渉
「家賃」と「管理費・共益費」は異なるものです。家賃は「部屋を貸すことの対価」であり、管理費・共益費は「建物や共用スペースを維持管理するための費用」と思っていただいて構いません。物件情報には「家賃○○万円、共益費△△千円」や「家賃□□万円(共益費込み)」などと記載されていると思いますが、ようはどちらも同じことです。管理費・共益費は「家賃の5%(~10%)」が一番多いと思います。
繰り返しますが、家賃と管理費・共益費が異なる費用です。なので家賃がダメなら管理費・共益費の交渉です。管理費・共益費の値下げ交渉に理論的な根拠があるかと言われれば、特にありません。「健康の為、エレベーターは使いません。階段しか利用しないので、その分管理費を下げて欲しい」など微妙な根拠しかないのが現状ですが、ここは「言ったもん勝ち!」の精神で乗り切りましょう。
「家賃は他の居住者との兼ね合いがあるため交渉には応じられないが、管理費ならOK!」という事も十分に考えられます。どうしても空室を埋めたいオーナーさんであれば応じてくれるかもしれません。ちなみに、賃貸住宅の管理を管理会社に委託している場合には、この管理費・共益費の交渉は×です。この場合には、管理費は管理会社に支払う必要があります。なので、その費用を減額することは基本的に不可能です。交渉前に管理会社が入っているのか否かを調べておいた方が良いでしょう。
4.注意点
家賃交渉をする際には「その立地でその物件設備でおおよそいくら」という家賃の相場を知っておく必要があります。近隣の家賃相場を知らずに「きりよく〇万円ジャストで!」などと言っても通用しない事間違いなしです。あくまで交渉なので理論が重要。不動産情報サイトなので情報をしっかりと集めた上で、交渉に臨みましょう。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか。
家賃交渉の成功のポイントは、何と言っても「交渉時期」です。繁忙期に「家賃下げてください」と言ったところで「帰ってください」で終わります。不動産会社も繁忙期に冷やかしに付き合っている暇は無いですからね。不動産屋さんで「帰ってください」と言われるほど惨めなものもありません。
そして交渉材料。多ければ多い程有利に働きますが、「ここを攻めれば勝てる!」と思える切り札があるのであれば1つでも全然OKです。要はその交渉材料が「相手の急所」を付けるかどうかが勝負の分かれ目です。「参った」と言ってもらえるよう、入念に下調べをした上で交渉に臨みましょう。
既に賃貸住宅は飽和状態です。人口減少と相まって、一部の地域を除く家賃が下落し始めることは必然です。このようなマクロの状況、及び物件個別のミクロの事情を勘案した上で「こうこうこうだから家賃を○○円にしてください!」という理論的な交渉が出来れば、十中八九交渉は成立するのではないでしょうか。後はアナタ次第ってとこですかね。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。