住宅ローン控除は住宅ローン減税と言われることもあります。正式名称は「住宅借入金等特別控除」です。カンタンにいうと「住宅ローンを利用してマイホームを購入した場合に、一定の期間内(10年以内)であれば住宅ローンのうちの一定の割合の金額を所得税や住民税から控除することが出来る」というものです。
1年間で最大40万円まで所得税や住民税から控除することが可能です。住宅ローンを使用してマイホームを購入した場合の税負担を軽減し、マイホームの購入を税制面から後押しする、という事がこの制度の趣旨です。40万円の控除は大きいですよね。その分を住宅ローンの返済に回すことも可能ですし。
ただし住宅ローン控除は、本来支払うべきであった税金(所得税と住民税)から控除される、という性質を持っています。言い換えれば、本来支払うべき税金の額以上に控除額があった場合でも、控除されるのは税金の額までであり還付されるようなことはありません。
この住宅ローン控除の適用を受けるためには確定申告が必要です。この点が非常に重要です。住宅ローンを資料して住宅を購入したからと言って勝手に住宅ローンが適用されるわけではないのです。なので、今回はその手続き面も含めて住宅ローン控除について考察をしていきたいと思います。一見複雑に見えますが、この記事を読んでいただければカンタンに理解していただけると思います。
参照:フラット35「会社員が住宅ローン控除を受けるための「はじめての確定申告」」
1.住宅ローン控除の概要
住宅ローン控除の概要 | |||||
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住宅区分 | 入居日 | 住宅ローンの年末残高限度額 | 控除率 | 年間最大控除額 | 控除期間 |
一般住宅 | 2014/4/1~ 2021/12/31 |
4,000万円 | 1% | 40万円 (※②) |
10年 |
認定住宅 (※①) |
2014/4/1~ 2021/12/31 |
5,000万円 | 1% | 50万円 (※②) |
10年 |
※①認定住宅とは、認定長期優良住宅又は認定低炭素住宅の事です。
※②控除額は所得税から控除されますが、所得税から控除しきれない額は住民税からも控除されます。
但し、住民税からの控除は所得税の課税所得金額の合計の7%、
若しくは13万6,500円のどちらか小さい額が限度額となります。
- 認定長期優良住宅
- 長期に渡り良好な状態で使用する為の措置が講じられている優良住宅。
耐震性や省エネルギー性、劣化対策など9つの性能項目が設けられている。 - 認定低炭素住宅
- 省エネルギー法の省エネルギー基準と同等以上の断熱耐性が確保され、かつ一次エネルギー消費量が省エネルギー基準に比べて―10%以上となること。かつHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)の導入、節水対策、木材の利用、ヒートアイランド対策などの低炭素化に資する措置が講じられている住宅。
2018年2月現在では、2021年12月までに住宅ローンを利用しマイホームを購入し入居した人は住宅ローン控除を受けることが出来ます。もちろん、一定の要件を満たしている必要がありますし、確定申告も必要なので、住宅ローンを利用してマイホームを購入した人なら誰でも住宅ローン控除を受けれるという訳ではありません。
さらに、例え住宅ローン控除を受けることができる場合でも、
毎年40万円の控除額×10年間=400万円
上記の控除額が全員に適用される、という訳ではありません。上記はあくまで最大控除額です。10年間ずっと住宅ローンの年末残高が4,000万円以上なければ最大控除額の恩恵を受けることは出来ないのです。必然的に借入総額は4,000万円以上の場合でないと最大控除額は適用されない、という事になりますね。
さらに、住宅ローンの残高が10年間4,000万円を超えていて最大控除額を受ける要件が整っている場合でも、年間の所得税と住民税の合計額が40万円を超えていない場合には、その合計額までの控除となります。「控除額が合計額を超えている場合にはその差額を還付される」という事にはなりませんので注意してください。
「40万円」という額が独り歩きしていますが、あくまで「最大控除額が40万円」であることにご注意ください。様々な条件が整った場合にしか40万円の控除額は適用されません。
2.住宅ローン控除の具体例
上記の住宅ローンの概要をカンタンな具体例を用いて説明します。
- Ex.1
- 年収:300万円
- 所得税:6万円
- 住民税:12万円
- 所得税の課税対象額:111万円
- 年末住宅ローン残高:2,500万円
- Ex.2
- 年収:500万円
- 所得税:18万円
- 住民税:28万円
- 所得税の課税対象額:237万円
- 年末住宅ローン残高:3,500万円
この2つの具体例をもとに計算をしてみましょう。なお所得税及び住民税など具体例に使用している数字は暫定的な数字であり正確性は担保されておりません。ご了承ください。
Ex.1
控除額の上限 | 所得税額からの控除 | 住民税からの控除 | 合計控除額 |
---|---|---|---|
2,500万円×1% =250,000円 |
60,000円 | 111万円×7% =77,700円 |
60,000円+77,700円=137,700円 |
住宅ローン控除額の上限は25万円であり所得税は全額控除することが出来ました。しかし、住民税からの控除には、
- a.所得税の課税対象額×7%
- b.136,500円
- a、bのどちらか小さい額が上限額
という制限がありますので、77,700円が控除の上限となります。よって住宅ローン控除額は137,700円です。上限額いっぱいまで控除額が利用できないので、少し損した気分になりますね。
Ex.2
控除額の上限 | 所得税額からの控除 | 住民税からの控除 | 合計控除額 |
---|---|---|---|
3,500万円×1% =350,000円 |
180,000円 | 237万円×7%=165,900円 165,900円>136,500円 なので住民税からの控除額は136,500円 |
180,000円+136,500円=316,500円 |
住民税からの控除額は136,500円を超えることは出来ません。よって今回も住宅ローンの控除額全額を所得税及び住民税から控除することは出来ませんでした。なかなか全額を控除することは難しいですね。
大まかな計算方法はお分かりいただけましたでしょうか。もし、全ての金額をビシッと計算したい場合には、お近くの税理士さんなどに相談してみても良いかと思います。
3.住宅ローン控除の適用要件
新築と中古で適用要件は異なります。
新築
- ①取得日から6か月以内に入居し、各年の12月31日まで引き続いて住んでいること
- 賃貸用住宅や別荘などは対象外です。
- ②控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下
- 3,000万円まで対象です。大分すそ野が広いですね。
- ③床面積が50㎡以上、かつ床面積の1/2以上が住居用であること
- マンションの場合は「登記簿上の専有部分の床面積」で判断します。共用部分はいっさい床面積に含めませんのでご注意ください。
- ④住宅ローンの借入先が原則金融機関であり、かつ返済期間が10年以上であること
- 勤務先からの借り入れも可能だが、借入の金利が0.2%以上である必要があります。0.2%未満の場合には住宅ローン控除は利用できません。また親族などからの借り入れは住宅ローンとはみなされません。
- ⑤入居した年とその前後2年の合計5年間の間に他の税制上の特例を受けていないこと
- 他の特例とは、「3,000万円の特別控除」や「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」などです。ようは、特例の併用不可という事です。
中古
中古の場合には、上記新築の場合の要件に加え下記要件が必要です。
- ⑥建築後使用されたものであること
- ⑦次のいずれかに該当するものであること。
-
- a.マンションなどの耐火建造物の場合は25年以内に建築されたもの
(ex.「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」) - b.耐火建造物以外の場合は20年以内に建築されたもの
(ex.「木造」) - c.上記に該当しない場合には、2005年4月1日以降に取得され、
かつ一定の耐震基準に適合するものであること。
- a.マンションなどの耐火建造物の場合は25年以内に建築されたもの
- ⑧生計を同じくする親族や特別な関係のある者からの取得でないこと
- ⑨贈与による取得でないこと
上記の要件を全て満たしている必要があります。住宅ローン控除を利用したい場合には、マイホームを購入してから住宅ローン控除の要件を1つ1つ検討するのではなく、最初から住宅ローン控除の要件を満たしているマイホームを購入するのが良いのではないでしょうか。
4.住宅ローン控除の必要書類
住宅ローン控除を受けるためにはマイホームを購入した翌年の3月15日までに確定申告をする必要があります。その確定申告には下記のように多数の書類が必要になります。
住宅ローン控除を受けるために必要な書類一覧 | ||
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必要書類 | 入手場所 | 備考 |
確定申告書 | 税務署 | 国税庁HPから も入手可 |
住宅借入金等特別控除額の計算明細書 | 税務署 | 国税庁HPから も入手可 |
住民票の写し | 市町村役場 | ― |
住宅ローン残高証明書 | 金融機関 | ― |
土地・家屋の登記事項証明書 | 法務局 | ― |
土地・家屋の不動産売買契約書又は工事請負契約書の写し | 売主又は工事請負会社 | ― |
源泉徴収票 | 勤務先(給与所得のある人のみ) | ― |
認定通知書の写し (認定長期優良住宅・認定低炭素住宅の場合) |
不動産業者 | ― |
耐震基準適合証明書又は住宅性能評価書の写し (一定の耐震基準を満たす中古住宅の場合) |
不動産業者 | ― |
書類を集めるだけでも大変です。必要書類の入手には時間に余裕を持ちましょう。
5.「住宅ローンの借り換え」や「繰り上げ返済」を行った場合は?
既に住宅ローン控除を受けている場合に、住宅ローンの借り換えや繰り上げ返済を行った場合にはどうなるのでしょうか。
住宅ローンの借り換え
住宅ローンの借り換えを行った場合でも、下記要件を満たす場合には継続して住宅ローン減税を受けることが出来ます。
- 借り換えた住宅ローンが以前の住宅ローンを返済するものであること
- 借り換えた住宅ローンが住宅ローン控除の要件に当てはまること
つまり、借り換えた住宅ローンの返済期間が10年未満の場合には、住宅ローン控除の適用はなくなります。また、借り換え後も継続して住宅ローン控除が適用される場合でも、住宅ローン控除の適用期間は従前のままです。借り換えと住宅ローン控除が延長されるわけではありませんので、ご注意ください。
住宅ローンの繰り上げ返済
繰り上げ返済により住宅ローンの返済期間が10年未満に短縮された場合には、それ以降の住宅ローン控除の適用はなくなります。 繰り上げ返済を行った場合には利息の支払い負担は軽減されますが、ローン残高が減少するために住宅ローン控除額が減少する可能性もあります。 利息の支払い負担を軽減するべきか、住宅ローン控除の恩恵を受ける方が良いのかは十分に計算した上で検討しましょう。
6.まとめ
いかがでしたでしょうか。
住宅ローン控除を受けるためには様々な要件をクリアし、更に確定申告時に必要書類を提出しなければいけません。予想以上に骨の折れる手続きになります。
しかし、住宅ローン控除の趣旨は「住宅ローンの負担を税制面から軽減し、マイホームの所有を促進する」というものです。つまり、1つ1つの要件を精査してみると「厳しい要件は1つもなくごく当たり前の事を難しい言葉でいっているだけ」という事がお分かりいただけると思います。
決して難しく考えないでください。例えば新築マイホームを購入するのであれば、売主である不動産業者に聞けば教えてもらえますし、より詳細な話は税理士さんなどに聞けばすぐに対応してくれます。40万円の上限額いっぱいまでの控除は難しいですが、数万円十数万円でも家計には大助かりです。貰えるものはしっかりと貰っておきましょう。
最後までお読み頂きましてありがとうございました。