突然ですが、下記をご覧ください。
日経平均に指定されている銘柄の平均配当利回り
1.7%
10年物国債の利回り
0.063%
REITの平均分配金利回り
4.2%
ご覧いただいたように、REITの利回りが飛びぬけて高い。ではなぜこのような高利回りが実現できているのでしょうか。それはREIT自体の構造が影響しているのです。「構造が影響をしている」と言っても良く分かりませんよね。
ご安心下さい。今からちゃんと説明します。REITの構造は絶対に理解しておいてください。例えば利回りだけで投資をしてしまうと、思わぬ損失を被る場合があります。その利回りの基となっている分配金までしっかりと調べる必要があるのです。
逆にこの構造さえ理解しておけば、危険な銘柄に投資することはなくなります。
目次
1.REITは分配可能利益の90%以上を分配しなければならない
REITは利益の90%以上を分配するなどの一定の要件を満たすことによって法人税がほとんどかからなくなります。ほとんどかからないというのは、例え90%以上の分配を行っても未分配利益がある場合には、その分に対して法人税がかかるからです。ですので、実際には利益のほぼ100%を分配しています。なので必然的に内部留保は少なくなってしまいます。
では、株式会社の場合はどうでしょうか。当期純利益に法人税が課せられた後の税引き後当期純利益が配当の原資となります。
REIT⇒税引き前の利益が分配される
株⇒税引き後の利益が配当される
明らかにREITの方が高配当が実現できる構造になっています。法人税がかかれば30%近く日本へお支払いすることになりますので。
では、決算が赤字の場合はどうでしょう。株式会社の場合であれば、例え赤字決算であっても内部留保を取り崩せば配当は可能です。
それに対してREIT。先ほども述べましたが、REITにはほぼ内部留保はありません。利益を毎期ほぼ全て投資主に分配しているからです。普通に考えれば分配金は0ですよね。
REITは普通じゃないんです。株式会社と仕組みこそ違えど、REITも赤字決算でも分配金を出すことができるのです。内部留保がほぼ無いはずなのに、どのように分配しているのでしょうか。
2.REITは分配可能利益以上の分配をしている
減価償却費をご存知でしょうか。
減価償却費とは、建物や機械など企業が長年利用する資産を購入した場合に、それぞれの耐用年数にわたって規則的に費用として計上する金額です。企業が利益以上の建物や機械を購入してしまったら、あっという間に赤字になってしまいます。そのような事を防止する意味もあります。
この減価償却費は会計上の費用です。実際のキャッシュは建物や機械の購入時に支出されていますので、会計上のツジツマを合わせる為に毎期費用として計上します。減価償却費は現金の支出を伴いません。減価償却費として計上された費用に対応する現金はREIT内にとどまることになるのです。
REITはこの減価償却費を原資として利益以上の分配を行う事が可能です。これを利益超過分配と言います。REITの決算書を見ていると、配当性向が100%以上のものが良くあります。つまり分配可能利益以上に分配をしているという事です。
この利益超過分配が認められているおかげで、REITは例え赤字でも配当を出すことが出来ます。
また増資などにより1口当たりの分配金が薄まりそうな時にも利益超過分配により対応可能です。
⇒REITが増資したらどうなる?投資家から見た増資のメリットデメリット
しかし、減価償却費を分配することに反対する意見もあります。
- 減価償却費は建物の将来的な修理などの為に取っておくべき
- 利益超過分配は分配金に含まれるので、実際以上に利回りが高く見えてしまう
上記の意見はもっともですが、aはREITの運営者がしっかり管理をすれば良いわけですし、bについても投資家がしっかりと見極めれば良いだけです。私はそれほど問題だとは思いません。
今まで述べてきた利益超過分配は会計上の費用を原資として高分配を実現するものです。
費用と言えば利益ですよね。では会計上の利益を原資とする分配もあるのでしょうか。
3.「負ののれん」という会計上の利益も高分配を可能にしている
「負ののれん」という言葉は初めて聞いた方も多いと思います。「負ののれん」はREITに特有なものではありません。しかし、REITの高配当を実現するには欠かせないものです。
例えば、A-REITが純資産額1,000億円のB-REITを900億円で買収した場合、100億円の差額が産まれます。この差額が負ののれんです。現金が入ってくるわけではありません。減価償却費同様、あくまで会計上の利益です。純資産額よりも割安で買収できた場合に発生します。
この負ののれんという会計上の利益は、これまた減価償却同様分配に充てることができます。
負ののれん⇒分配準備積立金
に代わり、会計上の利益としてストックされます。
上記の例ですと、100億円の差額はいつでも取り崩して分配に回すことが可能です。
なぜこのような事が認められるのか。これを認めないと大変なことになるからです。
負ののれんはあくまで会計上の利益であり現金は増えません。現金は増えないのに「利益が上がったんだから投資主に分配しろ」と言われたら大変です。現金をかき集めなければならなくなります。このような理由から、負ののれんは分配可能利益から除外されるのです。
公簿増資した際の1口当たり利益の希薄化してしまった時、物件を売却するが損が出る時、災害により損失が出るときなど様々な状況において、「負ののれん」を取り崩すことにより分配金を安定化することが可能です。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。
- 90%以上の配当
- 利益超過分配金
- 「負ののれん」という会計上の利益
この3つの特徴によりREITの分配金は高利回りを維持できるのです。そして例え赤字決算でも安定的に分配できます。REITはしっかりと仕組みを近いされている投資家の方々にとっては、優しい投資商品(?)と言えるのではないでしょうか。
それにしてもREITの平均利回りは群を抜いてますね。東京都心部の賃貸マンションの利回りとほぼ変わらないです。賃貸マンション1棟買うよりもREITを購入したほうがリスクが少なく良いかもしれないですよ。
後は自己判断でお願いします。