土地を所有している皆さん、「もしかしたら自分の土地の下にとんでもない財宝が埋まっているのではないか!?」と寝る前に考えたことはないでしょうか。「ない!」と即答する方が多い事は重々承知しています。一片の可能性を信じて聞いてみただけですので、この話は無かったことにしてください。
私は昔から「〇〇埋蔵金」系のテレビ番組が大好きでした。空き地を見つければよく掘り返していたものです。嘘です。空地もどなたかが所有していますので、そんなことをしたら逮捕されます。でもこんなことを考えたことはないですか。「自分の土地の地下に埋まっているものが財宝なのか否かは別として、それは誰のものになるのか?」ということです。自分の土地の地下に埋まっているのだから自分のものである、という考え方が論理的ですが、果たしてそれで良いのでしょうか。言い換えれば「土地の所有権は地下にも及ぶのか」という事になります。今回はこの事について考察をしていきたいと思います。
1.土地の所有権の範囲
土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ
民法第207条をそのまま解釈すると「自分の所有している土地の地下からもし財宝が発掘された場合には自分の懐に入れても良い!」という事になります。非常に論理的な帰結であると思慮します。しかし、同時に気になる文言も書かれています。
「法令の制限内において」
この文言は他に土地の所有権の範囲を制限する法律や制度があることを暗に示していますよね。では実際に土地の所有権の範囲を制限する法律や制度にはどのようなものがあるのでしょうか。
2.土地の所有権の範囲を制限する法律や制度
調べてみたら結構たくさんありました。
- 相隣関係による制限(民法第209~238条)
- 用益物権による制限(民法第265~294条)
- 建築基準法や消防法など行政的な観点からの制限
- 都市計画などの制度による制限
上記は所有権の及ぶ範囲を制限する法律や制度の一例です。同じ民法の中の他の条文でも所有権は制限されています。その他、農地法や区分所有法でも制限されています。この記事の目的は「自分の所有する土地の地下に何かがあった場合には誰のものになるのか?」を解き明かすことです。なのでこれ以降はその点のみにスポットライトを当てていきます。
※「相隣関係による制限」とは「お隣さんとの関係で所有権を制限しますよ」という意味です。
※「用益物権による制限」とは「所有権の上に他人の為に強い権利を設定した場合には所有権を制限しますよ!」という意味です。
所有権が地下に及ぶ範囲を制限する法律としては「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法(通称「大深度法」)」が挙げられます。
大深度法は地下空間を公共の利益の為に使おうという趣旨のもと制定されました。大深度法によれば「一般の土地のおいては、地表から40mまでが土地の所有権の及ぶ範囲である」となっています。かなりざっくりした表現ですが。。。
つまり「地表から40mより深い場所は公共の利益の為に使いましょう!」ということになります。40mと言えば10階建てマンションよりも高いです。確かに大深度法により所有権が地下に及ぶ範囲に制限がかかりますが、相当の深さまで所有権の効力が及ぶことが分かりました。
一般の方が地面を掘り起こすと言っても、40mまで掘る人はまずいないでしょう。掘り起こしてもせいぜい2~3m程度ではないでしょうか。なのでこの大深度法は一般の方にとっては無視しても問題の無い制限なのではないでしょうか。
3.所有土地の地中から何か発見された場合
民法の条文を見ていたら、またまた気になる条文を発見しました。
埋蔵物は、遺失物法 の定めるところに従い公告をした後六箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを発見した者がその所有権を取得する。ただし、他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については、これを発見した者及びその他人が等しい割合でその所有権を取得する。
んっ!?この条文、問題勃発の可能性を多分に含んでいると思いませんか。「自分の所有する土地の地下から他人の力によって発掘された埋蔵物は土地の所有者と発見者とで半分にしなければいけない」と規定されているのです。日本では契約自由の原則があるので最初に契約を結んでおけば取得割合を変更できることはもちろんですが、そのあたりが曖昧になっていた場合には各1/2になってしまうようです。
法律は数学のように論理的に答えが出るものではありません。国民の代表者である国会議員が民主主義によって制定するものです。埋蔵物の取得割合には賛成の方もいれば反対の方もいるでしょう。そうなることを事前に知ることが出来ただけでも良しとしましょう。 確かに発掘作業は大変です。しかし、やはり自分の土地から出てきた埋蔵物に関しては7割程度は自分のモノにしたいですよね。私だけかもしれませんが。。。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は土地の所有権が地下に及ぶ範囲、及び地中で何か発見された場合について考察をしてきました。土地の所有権が地下に及ぶ範囲を制限する「大深度法」は特に気にする必要がない法律であることが分かりました。40mよりも深く土地を掘削するようなことは、通常の生活においてはまずあり得ません。温泉でも掘る場合は別ですが。
ちなみに、土地の所有権の上限は建築物の上端から300mのようです(「航空法」より)。「地下40m~建築物の上端から300m」、所有権がとてつもなく強力な権利であることが分かりました。土地の対する権利は所有権の他にも地上権や賃借権などがありますが、やはり所有権こそが至高の権利です。
最後までお読み頂きましてありがとうございました。