今までいくつかのREITの決算書を見てきました。営業収益、営業利益などの基本的なもの。前の期と比較して上で動きの大きい勘定科目。来期の予想。本当に基本となるものだけを取り上げてきましたが、当たり障りのない事しか記事にしない自分に納得がいかなくなってきました。
「自分ではしっかりと書いているつもりでも、やっつけ記事になってしまっているのではないか?」
「もう少し突っ込んだ内容にするべきではないのか?」
「この記事は貴重な時間を割いてくださっている読者の方々の為になっているのか?」
などなど…。まだまだ決算書を分析するポイントはあるのではないかと疑問を持ちながら記事を掲載してきました。
過去を悔やんでもしょうがありません。なので今後は決算書を分析する記事では
- 分配金利回り←これは既に記載済み。
- FFO倍率
- NAV倍率
上記3点も追記していきたいと思っています。上記3指標は個々のREIT銘柄を分析するうえでも非常に重要なものです。決算書分析の記事の内容をより一層充実させるためにはうってつけです。
かといっていきなり上記指標を掲載してもなんのこっちゃ?になりかねませんので、今回はそれぞれの指標の簡単な説明をさせて頂きたいと思います。端的に分かりやすく説明することを目指しますので、ぜひ参考にして下さい。
ちなみになぜ「3つ」なのかというと、人間は3つ以上の事はすぐに忘れてしまうと誰かが言っていたのでそうしました。
別にどーでもいいっすね…
目次
分配金利回り
1口当たり年間予想分配金÷1口当たり投資口価格×100 ※予想なので業績によっては変動します
あらためて記載するひつようもないと思いますが、念のため。
注意点としては2つあります。
①あくまで銘柄を購入した時点での利回りがあなたの利回りです
様々なサイトで日々の利回りの変動が掲載されているとは思いますが、それは日々の投資口価格の変動がもたらしている変動です。あなたが既に取得している投資口の利回りが変動しているわけではないのでご注意ください。
※ごくまれに既に取得している投資口の分配金が変更になり利回りが変更になることはありますが滅多にありません。
②利回りは高ければ高いほど良いとは限らない
利回りとリスクは表裏一体の関係です。例えばREITの利回りが10%あったら(まずないでしょうが)「今が買い!」と飛びつきたくなることも理解できます。しかし、落ち着いた方があなたの為です。利回りが10%のある銘柄をプロ投資家が見逃すと思いますか?そんな銘柄があればあっという間にプロが買い漁って素人が気付いた時は普通の利回りに落ち着いているはずです。
何が言いたいかと言えば、10%のまま放置されている場合には裏がある可能性が高い。なので極端に利回りが高い銘柄はIRなどをしっかりとチェックした上で購入を検討しましょう。
ただし、名のあるスポンサーが後ろ盾となっている銘柄は利回りが低く、あまり名の知られていないスポンサーの場合には利回りが高くなる傾向があります。スポンサーのパワーって凄いですよね。
FFO(Funds From Operations)倍率
投資口価格÷1口当たりFFO
まずはFFOの説明。
FFOは所有不動産が継続的に生み出すキャッシュフローの事です。計算式は
FFO=当期純利益+減価償却費+不動産売却損-不動産売却益
となります。現金の支出を伴わない減価償却費は当期純利益に足し戻します。また、FFOは所有不動産から継続的に生み出されるキャッシュフローの事ですので、その期に特別な利益(不動産売却益)は差し引き、特別な損失(不動産売却損)は足し戻します。これである銘柄全体でのFFOが出てきます。次に投資口1口当たりのFFOを計算したいので、
1口当たりFFO=FFO÷発行済投資口総数
上記のようにすれば1口当たりFFOが分かります。そして最後に投資口価格と1口当たりFFOを比較するという流れです。
株式でいうPERと同様の指標ですね。
FFO倍率は低いほど割安となりますが、FFO倍率がどの程度なら良い、という絶対的な基準はありません。同じ銘柄の過去のFFO倍率との比較であるとか、他の銘柄と比較して利用するというイメージです。
NAV(Net Asset Value)倍率
投資口価格÷1口当たりNAV
こちらもまずはNAVの説明から。
NAVは所有不動産の含み損益を純資産に反映させて時価ベースの純資産額を把握するものです。不動産は所有しているだけで価格が変動します。その変動額を不動産の鑑定評価額を用いて純資産に増減させることです。ですので
NAV(時価純資産)=純資産±(不動産の簿価と不動産の鑑定評価額の差額)
で計算できます。また投資口1口当たりのNAVは、
1口当たりNAV=NAV÷発行済投資口数
というふうになります。株式でいうPBRと同様の指標です(PBRは簿価計算ですが…)。要は投資口価格がNAVの何倍まで買われているのかをみる指標です。こちらは1という数字が基準になります。
投資口価格÷1口当たりNAV>1⇒割高 解散価値より買われている
投資口価格÷1口当たりNAV<1⇒割安 解散価値より買われていない
割高割安と言っても不動産市場の状況なども考慮に入れる必要がありますが、不動産市場は良いのに上記計算が1より低い場合にはチャンスかもしれません。REITが解散した際、自分の投資額よりも戻ってくる額の方が大きくなるわけですからね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。本当に基本中の基本の指標のみを取り上げました。私自身がこのくらいの指標しか利用していないというのもありますが、あまりたくさんの指標を取り上げても多分誰も覚えてくれないだろうと思いましたので3つだけにしました。
REITの場合には上記3指標も重要ですが、それに加えて、どのような種類の不動産に投資しているのか、どの地域に投資しているのかなどが重要になってきます。総合的な判断が必要になってきますので、非常に難しいです。しかし、安心してください。今後もちょこちょこ上記3指標を含めた上で決算書を分析していきますので、一緒に勉強していきましょう。