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2017.12.31   2020.07.12

「土地ありき」で建てた「ワンルームアパート」が大失敗する理由

賃貸アパート経営の失敗

現在、東京23区での空室率は30%を超えます。3戸に1戸は空室である、ということです。神奈川県に至っては空室率は40%近くまで上昇しています。「空室率大国Nippon」の誕生です。

 

 

2015年1月に施行された相続税の改正により、相続税額が増額しました。その相続税対策として多数の賃貸住宅が建設されたのが1つの原因とされています。

 

 

もう1つの原因が日銀の金融緩和政策。マイナス金利政策の導入により金融機関は日銀に預けているお金を外に貸し出す必要に迫られました。その受け皿となったのが不動産。不動産業への貸し出し、また個人へのアパートローンの貸し出しが一気に増えました。バブル期の不動産業への融資高をゆうに超えています。

 

 

このような状況を鑑みると、賃貸住宅の空室率が増加するのはやむを得ないと思えます。しかし、いまだに「土地の有効利用」と称して賃貸住宅を建てる土地オーナーが後を絶ちません。土地の有効利用とは、言い換えれば「土地があるから上手に活用しよう」というものです。「土地ありき」ってやつですね。しかしこの考え方、実は非常に危険なんです。やる前から失敗に片足を突っ込んでいるようなものなんです。

 

 

賃貸住宅経営で失敗する一番の原因は「ニーズの無い賃貸住宅を建築」するからです。下記で詳しく考察していきます。

目次

1.「土地ありき」の賃貸住宅

賃貸住宅は突き詰めれば立地で勝負が決まります。借りる方として考えれば良く分かります。駅から近い物件と駅から遠い物件があれば、駅から近い物件を選ぶのは普通です。ちなみに「駅徒歩5分」でも結構歩きますからね。「駅徒歩5分」はあくまで「駅まで5分ですよ!」という事です。駅のホームまでの距離ではありません。大江戸線のような地下深くまで潜らなければいけない路線でしたら、その倍以上歩かなくてはいけないかもしれません。

 

 

駅から遠くても家賃が安ければ問題ナシ、という話も聞きますがそんなことはないでしょう。よく「駅から徒歩15分以上」になると家賃がグッと下がると言われています。しかし、毎日毎日そんな距離を歩くことができますか。往復で30分以上です。男性ならまだしもヒールなどを履く女性には厳しいかもしれません。「日々の運動不足を通勤で補う」という方なら良いかもしれませんが、間違いなく超少数派でしょう。家賃が下がろうが「滅多に」借りる人はいないでしょう。

 

 

「土地はあるからここにアパートを建てれば利回り20%」。よくこのような机上の空論を耳にしますが、入居者が居てこその利回りです。立地が悪く入居者がいなければ、利回りは0です。借金をしていれば月々の収支は赤字です。例え相続により土地を手に入れることが出来たとしても「駅から遠い」「交通の便が悪い」土地に賃貸住宅を建築することは避けましょう。

2.投資効率が良いからとワンルームタイプのアパートばかり建てる

ワンルームタイプとファミリータイプのアパートに投資をするなら、ワンルームタイプのアパートに投資をした方が良いです。それは部屋の広さに家賃が比例していないからです。25㎡のワンルームの家賃が5万だとしたら、倍の面積のある50~60㎡のファミリータイプの家賃は7~8万円くらいでしょう。部屋の大きさが倍になったからと言って家賃は倍にはなりません。

 

 

このように1室を小さくした方が投資効率は良いです。つまり利回りが良いという事になります。今後は単身者世帯が増加するという予測も出ていますので、今後の流れにも合致しています。しかし、この理論はあくまで「需要がある場合」にのみ成立します。ファミリータイプの賃貸住宅の需要がある場所に「こっちを建てた方が理論上儲かる」と言ってワンルームタイプの賃貸住宅を建築しても無意味です。

 

 

熊本では市の中心部から車で20分も走れば田園風景が広がります。毎年10月頃になると稲穂が首を垂れている姿を目にします。非常にのどかな風景です。そんな風景の中にポツンとワンルームアパートが登場することがあります。「こんなとこにワンルームアパート!?」と驚くと同時に同情の念が湧いてきます。生まれ変わったらこのような場所にワンルームアパートは作らないように、と祈るばかりです。

3.サブリース会社の提案を丸呑みしてしまう

これも非常に危険です。最も危険と言って良いかもしれません。不動産業の経験がなく賃貸住宅経営をしたことがない土地オーナーさんにとってはサブリース会社さんの営業トークは心に突き刺さるものばかりです。

 

「何もしなくてダイジョウブです!」

「家賃は○○年保証します」

「空室が出ても保証した家賃はきっちりお支払いさせて頂きます」

 

確かにサブリース会社を利用するとほぼ何もしなくて良いです。月々のサブリース会社からの入金さえ確認していれば良いだけです。しかし、この世の中にそんなオイシイ話はありません。サブリース会社も営利企業です。ボランティアではありません。

 

 

多少立地が悪くても、新築の場合は満室になることが多いです。しかし、空室が発生するのも早いし、家賃が下落するのも早い。この場合、サブリース会社はオーナに対して家賃減額請求をしてきます。普通にしてきます。「家賃○○年間保証」は定額の家賃を保証するという意味ではありません。「お支払いする家賃は下落するかもしれませんが、しっかりと払うつもりでいます」という事ですのでご注意ください。そして、それでも都合が悪い場合にはサブリース契約を解除する場合があります。賃貸住宅経営の素人がサブリース会社からサブリース契約を解除されたら………。どうなるのかは想像にお任せします。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか.

 

 

賃貸マンションに限らず不動産ビジネスで成功するための唯一にして最大の要因は「立地」です。立地が悪ければいかに高性能な建物を建築したとしても十中八九失敗するでしょう。田んぼのど真ん中にタワーマンションが建っても「何かの間違いだろう」と思うだけでしょう。そもそも法律上タワーマンションが建てられない場合がほとんどであると思いますけど。

 

 

自分の意思で行った場合でもサブリース会社から提案をされた場合でも同じです。「土地があるからアパートを建てよう!」という考え方は捨てましょう。もちろん立地が良ければ何の問題もありません。例えば、東京で今後も人口の増加が見込まれる地域の土地であれば、アパートを建てるという選択肢は「アリ」です。必要なのは土地ではなく「需要」です。

 

 

ワンルームアパートにも同様の事が言えます。投資効率が良いからと「需要」を考えずにワンルームアパートを建築する例が後を絶ちません。ファミリーが多い地域にワンルームアパートを建築しても、生み出されるのは利益ではなく「空室」です。その土地がある場所の状況をしっかりと見極めましょう。

 

 

最後までお読み頂きましてありがとうございました。


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