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2017.11.04   2020.07.12

住宅投資額ー住宅資産額=△520兆円!?住宅による資産形成の大失敗

住宅による資産形成の大失敗

国土交通省のデータによると、日本の2011年までの住宅投資額の累積と住宅資産額を比較した場合、

 

住宅投資額:862.1兆円

住宅資産額:343.8兆円

その差:△約520兆円

 

出典元:国土交通省「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル 平成25年度報告書(案) 附属資料(案)」

 

となります。この数字が意味していることは、日本における住宅に投資された約860兆円が2011年には約340兆円になってしまったという事です。住宅投資額の約60%がどこかへ消えていきました。「520兆円はどこに消えた?」という題名で本が書けそうです。恐らく「上巻・中巻・下巻」の3部作の長編になるでしょう。

ちなみにアメリカでは2010年の調査において、

 

住宅投資額:13.7兆ドル

住宅資産額:14.0兆ドル

その差:3,000億ドル

出典元:国土交通省「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル 平成25年度報告書(案) 附属資料(案)」

と、住宅資産額が住宅投資額を上回っています。驚きを通り越して呆れてしまいます。

 

例えば、アナタが4,000万円の戸建て住宅を購入した場合に上記の減少率を当てはめると、「4,000万円×60%=2,400万円」の投資額がいずれどこかへ消えていきます。腹が立ちませんか。精いっぱい働いて頭金を貯めて、不安で一杯の中住宅ローンを組んで調達した4,000万円のうちの2,400万円が行方不明になるのです。

 

なぜそうなるのか。理由が分からないと納得できませんよね。イライラして仕事が手につかないと思います。皆さんの精神衛生上の問題及び、私自身のモヤモヤを解消するために理由を調査しました。今から私が「これだ!」と思った理由を3つ挙げていきます。まずは日本の伝統的な造りである「木造」から。

目次

1.木造住宅は22年で資産価値「0」

土地とは異なり、建物は減価償却の対象になることはご存知かと思います。

 

知ってますか?建物の「減価償却費」が節税になると言われる理由

 

そして日本の税法上、木造住宅はの減価償却期間は22年で設定されています。減価償却期間が22年ということは、木造住宅の資産価値は22年で「0」になるということです。

 

これ、あくまで税法上のものなので実際の住宅取引に利用する必要はないのです。が、他に木造住宅の資産価値を図る基準が無いので。「22年で0」が通例となってしまっているのです。ちなみに、木造住宅の平均寿命は50年をゆうに超えます。

 

確かにアメリカの住宅は石造がほとんどです。木と石の違いが住宅資産の違いを生み出している1つの理由です。しかし、だからといってここまでの違いを生み出すものなのでしょうか。そもそも日本人の住宅に関する考え方に何か理由がありそうです。

2.戦後の住宅に対する考え方

日本では戦後の高度経済成長と人口の増加にともない、住宅の個数が圧倒的に不足しました。そこで政府は、低金利の住宅ローンや住宅に関する減税等を実施し住宅戸数の更なる増加を促しました。そのおかげもあって、国土交通省の統計として残っている1969年以降には、年間なんと20兆円ものお金が住宅投資にあてられました。政府の政策は大成功だったのです。

 

住宅投資が増え住宅が増加するまでは良かったのですが、日本では建物よりも土地の資産価値が重要視されていました。「土地を持っとけば価値があがるぞ!」という大号令のもとに土地の資産価値は上がりましたが、それと対照的に建物の資産価値はほぼ無視されていたと言って良いでしょう。言い方は悪いですが、建物の価値なんかどうでもよかったのです。

 

このような歴史の経緯が現在まで遺恨を残す形となり、「資産と言えば土地でしょ」の状況になってしまいました。しかし、バブルの崩壊とともに土地神話も終わりを迎えました。土地の価値は下がるわ建物の価値は下がるわで、日本での住宅投資による資産形成の稚拙さが浮き彫りになってしまいました。

3.中古住宅の流通市場及びシステムの未整備

そもそも日本では、中古住宅の流通量が圧倒的に少ないです。全住宅流通量に占める中古住宅の割合が10%程度しかありません。ちなみにアメリカでは少なく見積もっても70%以上が中古住宅の流通です。都市計画に基づいて新築住宅の供給がコントロールされているようです。国全体で中古住宅流通に取り組んでいることが分かります。

 

なぜなのでしょうか。それは日本における中古住宅流通システムの未整備に理由があります。アメリカでは「MLS(Multiple Listing Service)」という極めて優秀な不動産情報流通システムがあります。このシステムには全米中の不動産情報がほぼ掲載されています。中古住宅の情報も簡単に検索できます。

 

日本にはこのような優秀なシステムはありません。「REINS(レインズ)」というシステムがありますが、登録している宅建業者しかみることは出来ず、また物件情報も少ないです。日本はこのレインズを改良してアメリカのMLSのようなシステムを作りたいようですが、どこまで実現できるのかは甚だ疑問です。

中古住宅を流通させるための市場、若しくはシステムが出来上がれば今まで以上に中古住宅の流通は活性化するでしょう。流通が活性化すれば、間違いなく中古住宅の資産価値は見直されます。現在のような22年で「0」という異常事態は解消されるでしょう。投資額を上回ることはまでは望みません。せめて住宅投資額と住宅資産額がトントンになれば、住宅の新時代が始まります。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか。

 

戦後からの日本人の住宅に対する考え方、また日本の税制のありかた、さらに、中古住宅の流通システムの未整備が相重なって約520兆円もの住宅投資損失が生み出されました。途方もない数字です。今から取り返すことは不可能です。

 

しかし、これから十分な対策をしていけば今後の住宅投資損失は減少させられるかもしれません。国だけではなく民間の不動産業者も中古住宅の売買をどんどん活性化させていく必要があります。

 

ちなみに私、賃貸マンションに住んでいるんで住宅投資していないんですけどね。気持ちだけは皆さんと共にあります。

 

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。


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