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2017.12.05   2020.07.12

何だ?「私募リート」って?密かに募集しているリートなのか?

私募リートの募集

いきなり私募リートと言われても困りますよね。まずは「私募」と「リート」に分けましょう。

 

 

私募」は「公簿」と比較すると分かりやすいです。

公募」はその名の通り不特定多数の投資家に対して募集を行うことを言います。この場合、金融庁への届出を行う必要があります。J-REITがまさに公募です。

 

 

私募」は公募とは異なり、適格機関投資家などの投資のプロのみに勧誘を行う場合、若しくは少数の投資家のみ(50人未満)に勧誘を行う場合を言います。一定の要件を満たすことによって金融庁への届出義務が免除されます。

 

 

次に「リート」。リート(Real Estate Investment Trust)とは不動産投資信託の事です。

ここで説明が終わったら不親切なので頑張ります。不動産投資信託とは、ようは投資家から集めた資金を不動産へ投資し、そこから得られた賃料収入や売却益を原資として投資家に配当する投資商品です。

 

 

ちなみに私募リートは、

 

  1. 非上場(証券取引所に上場していない)であること
  2. 投資信託協会規則で定める不動産投資信託であること
  3. 投資信託協会規則で定める「オープン・エンド型の投資法人」であること
  4. 運用期間の定めがないこと

 

と定義されていますが、難しいので覚える必要はありません。念のため書いただけですので気にしないで下さい。

 

 

こんなことを覚えるよりも、私募リートを理解するにはJ-REITと比較をするのが一番です。下記では私募リートとJ-REITの違いをメインに説明をしていきます。

目次

1.流動性

Jリートは上場しているので買いたい時に買えますし売りたい時に売れます。今さら言うまでもないですが。そもそもJリートが創設された理由の1つに「現物不動産の流動性の低さを解消するため」が挙げられます。高額な現物不動産を証券化という手法により小口化し、さらに上場させることによって流動性を高めたのです。Jリートの特筆すべき特徴の1つですね。

 

 

私募リートは一定期間の間、投資口の払い戻しができない銘柄があります(「ロックアップ期間」と言います。一定期間は売却しないよう契約を交わします)。また払い戻しできる投資口数に上限(総発行済み投資口数の2.5%を上限としているものが多い)を設定していることがあります。そして売却したい場合には売却先を探す必要があります。現物不動産を売却する場合と同じですね。

 

 

私募リートへ投資する機関投資家の主な目的は、「長期間安定している投資の実行」です。一部の機関投資家からの過度な払い戻し要求などに応じていると、物件を売却して返金に応じる事態が起こることも否定できません。安定的な長期運用の根源が損なわれてしまいます。「流動性を求めるのであれば、Jリートに投資してください」ということですね。

2.価格変動性

まずはJリート。Jリートは上場しているため、価格は常に変動します。Jリートの価格変動性は20%前後あると言われています。ちなみに現物不動産の価格変動性は2%のようです。取引市場が確立されているのといないのとではこんなに差があるのですね。そもそも何千万もする現物不動産と数万数十万のリートを直接比較することはできませんが。

 

 

他方、私募リートでは年に数回行われる不動産鑑定評価の価格を基に投資口価格を決めます(2~4回。決算のタイミングで行われることがほとんど)。鑑定評価の価格は不動産市況のトレンドにそれほど影響を受けません。Jリートと比べると価格変動性は低いと言えます。

 

 

この私募リートの価格変動性の低さが企業年金に好まれています。長期運用を前提としている年金運用基金にとって、日々の価格変動は手間である以外の何物でもありません。価格変動性が大きい投資商品に投資した場合には、日々変動する投資口価格を計算しなおす必要があります。あえて上場しないことにより他の投資商品と一線を画し、投資口価格の変動を抑えています。

3.利回りと投資口価格

利回りに関してはJリートも私募リートも同様の水準です。おおよそ4~5%の間で推移しています。基本的な構造及び投資対象が同じなので、利回り水準が同じという事に特に異論はないでしょう。

 

 

しかし、投資口価格には大きな違いがあります。Jリートでは数万円から数十万円のものまであります。2017年11月現在では、おおよそ5万円~60万円の投資口価格のJリートが存在しています。これに対して、私募リートは投資口価格は1億円程度からです。高いです。一般消費者は置いてけぼりです。

 

 

私募リートはそもそも、豊富な資金を持っている年金基金などの機関投資家へ販売されており個人投資家に販売されることはほとんどないでしょう。念のため「ほとんどない」と言いましたが、私募リートに投資している個人投資家など聞いたことが無いので「ない」と言い切ってもよいかもしれません。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか。

 

 

私募リートはそもそもJリートよりも安定した投資商品に投資したいという機関投資家からの要望から創設されたという経緯があります。両者の創設の時期も私募リートがJリートに10年程度遅れています。

 

最初のJリート銘柄:2001年9月10日「日本ビルファンド投資法人」「ジャパンリアルエステイト投資法人」

最初の私募リート銘柄:2010年11月「野村不動産プライベート投資法人」

 

Jリートのように日々投資口価格が変動する商品は、「長期安定投資」という観点からは投資に不向きな商品です。実際にも年金基金などはJリートへの投資はほとんどしていません。流動性は乏しいですが、価格変動性の少ない私募リートは長期安定投資にうってつけの投資商品です。長期投資が前提なので、それほど流動性の低さは気にならないのではないでしょうか。

関連記事:機関投資家にはJ-REITよりも私募リートの方が都合が良い?

 

最後までお読みいただきましてありがとうございました。


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