• このエントリーをはてなブックマークに追加
2017.12.07   2020.06.22

SPCを理解しなければ「不動産の証券化」は理解できません!

SPCの利用による差異

「資産をSPCに移し流動化する」

 

この言葉、カッコよくないですか。東京の大手町周辺でコーヒーを飲みながら電話の相手に言っていたら「あの人、デキちゃう人だ!」って思っちゃいますね。私のように知っている言葉を並べているだけではない限り。

 

 

SPCは非常に難しい言葉です。それが更に不動産と共に語られると難しさは倍増します。なので今回は不動産からは少し離れてSPCというものを考えていきたいと思います。

目次

1.SPCとは

SPCは「Special Purpose Company」の略称です。直訳すれば「特別の目的を持った会社」という事になります。世間で特別目的会社とか特定目的会社とか呼ばれていますが、どちらでも構いません。重要なのは「特別の目的」という箇所です。

 

 

では特別の目的とは何なのか。「資産を取得し投資家に分配する」ことが特別の目的となります。もう少し詳細に述べると、債権や不動産などの資産を取得し、その資産を証券の形に変えて投資家に販売し、その資産を保有・運用することから生まれる利益を投資家に分配する目的という事になります。

 

 

債権は回収すれば収益が生まれます。不動産は賃貸マンションであれば賃料収入があります。土地でも売却すれば利益が出ます。これらを分配することになります。

 

 

ではなぜ証券の形に変えるのか。様々な意味があるでしょうが、証券の形にして小口化したほうが投資家に販売しやすいからです。「10億円で債権や不動産を買いませんか?」と言えば買ってくれるかもしれませんが、なかなか買手が見つからない場合も想定できます。「債権や不動産を小口化した証券を100万円で買いませんか?」と言えば買主の幅は広がります。

 

 

ここまででSPCというものがどのようなものであるかはお分かりいただけたかと思います。

「①資産を所有して②証券の形に変えて③投資家に販売して④利益を分配する」の目的を持った会社という事です。

2.不良債権処理に利用されていたSPC

ではSPCを利用する会社側の目的・意図はどのようなものがあるのでしょうか。

以前のSPCの利用方法で顕著なものと言えば「不良債権の処理」です。回収の可能性が無い(若しくは極めて低い)債権をSPCに移し(債権額よりも低い価格で)、その債権を裏付資産として証券を発行し投資家に販売するというものです。債権が回収できれば投資家は儲かりますし、回収できなければ投資家は損をします。

 

 

1億円の不良債権をSPCに5,000万円で移し、その不良債権を裏付資産として5,000万円分の証券を発行し投資家に販売します。SPCへは5,000万円で譲渡していますが、債権額はもちろん1億円のままです。この不良債権が満額回収できれば投資家は儲かります。証券額の5,000万円ならトントンです。回収不能であれば大損します。

 

 

以前は金融機関がこの手法を利用して不良債権の処理をしていました。SPCに移された不良債権をサービサーが回収するというものです。このようなSPCに投資する投資家は結構なばくち打ちですよね。既に不良債権と化しているものに投資するのですから。高利回りを狙っているお金が流れてきていたようです。

 

 

このようにマイナスの資産をSPCに移すことで、実際よりも財務内容を良く見せることが可能でした。逆から見ると、不透明な財務内容が生まれてしまったのです。以前はSPCの消極的な利用方法がクローズアップされていたのです。

3.現在ではSPCの「倒産隔離」が重要

SPCに資産を譲渡すればその資産はSPCのものになりますので、旧所有者のものでは無くなります。当然ですよね。この当然のことがSPCを利用するための重要な目的となっているのです。つまり、旧所有者が倒産をしてもSPCが所有している資産は既にSPCのものになっていますので、旧所有者が倒産しようがしまいが全く関係ないのです。ここがとても重要です。

 

 

例えば業績の悪い会社があるとします。資金が足りないので投資家に投資をお願いしても「お宅の会社は業績悪いから…」で終わる事がほとんどです。「とびっきりの債権があるんです!」「ピッカピカの不動産を持ってます!」と言っても「お宅が倒産したらどうなるか分からないから…」となります。

 

 

しかし、これらの債権や不動産をSPCに移した場合はどうでしょう。「うちの会社が倒産しても大丈夫なように債権や不動産を移しました。投資しませんか?」と誘えば、債権や不動産の内容次第では「投資しましょう!」という結論になる可能性が出てきます。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか。

 

SPCは「資産を取得し投資家に分配する」という目的の為だけに設立される会社です。仕組み上、その他の事は出来ないようになっています。

 

 

そして以前は不良債権処理という消極的な理由で利用されることが多かったですが、現在では「会社から資産を切り離し倒産隔離が図れる」という積極的理由で利用されることが増えました。

 

 

多くの投資家に投資してもらう(俗に言う「集団投資スキーム」)場合には、この「倒産隔離」を利用した方法が好んで利用されています。会社に投資する場合にはその会社の全てを知る必要がありますが、SPCに出資する場合にはSPCが保有している資産だけを見ておけば問題ありません。より投資のしやすい状況が作られたと言えるでしょう。

 

 

最後までお読み頂きましてありがとうございました。


  目次に戻る

  • このエントリーをはてなブックマークに追加