賃貸マンションや賃貸アパートを借りたことのある方なら誰もが支払っているはずの仲介手数料1か月分。家賃が10万円であれば、仲介手数料は10万円です。高いと思う人いますか?「ハイっ!!!」音よりも光よりも早く私が手を挙げるでしょう。
仲介手数料を支払う時のあの気持ち、なんと表現をすれば良いのでしょうか。適切な表現かどうか分かりませんが「損した気持ち」になります。「えー、これで10万円。人件費は別として、お宅の会社の原価なんてたかが知れてますよねー!」とついつい思ってしまいます。もちろん仲介業者さんも精いっぱい仕事をしてくれているのですが。。。
宅地建物取引業法及び国土交通省告示(※実際には「建設省告示」ですが)によって、仲介手数料はMAXで月額家賃の1ヶ月分であると定められています。つまり上限のみしか規定されていないので、それ以下の金額、極端に言えば0円でも法律上は問題ないわけです。
実際に仲介手数料0円を謳い孤軍奮闘されている会社さんもありますが、なぜか旧来通りの仲介手数料がまかり通っています。一般消費者の信頼を得て一気に市場独占とはいかないようです。苦戦しているという噂も耳にします。なぜなのでしょうか。より仲介手数料が安い方が良いのに。これは何かあります。仲介手数料に価格競争が起きてはいけない理由が。
目次
1.既存の仲介業者は見て見ぬふりをしている
立派な店舗を構え十分な人員を配置し日々周辺地域を駆け回るのが仲介業者の一般的な形かと思います。チラシをポスティングして内覧に同行して契約して。それなりの数の人員が必ず必要になる業態です。つまりそれなりの人件費が発生します。
しかしこの伝統的な不動産仲介業のやり方は、仲介手数料が1か月分であることによって成り立っていると言っても過言ではありません。もし仲介手数料の価格競争が不動産市場全体を巻き込むようになると、一般消費者はより安い仲介手数料を謳っている仲介業者に流れてしまうでしょう。そうなると、お客様を獲得するために必然的に他の仲介業者も仲介手数料を下げざるを得ない。そもそも「仲介手数料は高い!」と思っている一般消費者は多いので、なおさらです。
仲介手数料の価格競争は、各仲介業者の経営に大打撃を与えます。人員の削減、店舗の縮小化、小規模仲介業者の統合など様々な影響が出てくるでしょう。廃業も多数出てくるはずです。自らを廃業に追い込む可能性のある仲介手数料の価格競争にあえて首を突っ込む必要はありません。少しずつ価格競争を受け入れる仲介業者は増えていますが、大多数は見て見ぬふりです。
しかし、これは正当な争いです。不動産業界だけが価格競争の脅威にさらされていなかったと言ってもよいでしょう。スーパーマーケットなどの小売業者さんは生き残るためにしのぎを削って価格競争をされています。その為、スーパーマーケットに商品を納品する食品メーカーや卸売業者も他社に勝つために必死に効率化を行い価格競争と闘っています。不動産業界がぬるま湯に浸かっていただけです。
2.大手ポータルサイトや大手仲介業者の抵抗
賃貸物件のポータルサイトってたくさんありますよね。あえて名前は出しませんが、このポータルサイトに物件を掲載する際には「仲介手数料」に関する文言を載せることは出来ません。「半額」とか「0円」とかです。大手のポータルサイトが自主的に価格競争が起こることを規制しているのです。
またこれは聞いた話になるのですが、大手仲介業者の中には仲介手数料を割引している会社とは取引をしない会社もあるそうです。大手の会社と取引が出来なくなると中小の会社は困ります。本当は割引して一般消費者を獲得したい会社もあるでしょうが、大手と取引できなくなるのであれば止めておこう、となってしまいます。
このような事案を鑑みると、中小企業よりもむしろ大手企業の方が価格競争には否定的であることが分かります。確かに大手企業はより多額の資金を人件費だの広告費だのに使用していますから、仲介手数料1か月分が割引若しくは無料になってしまっては非常に困る、という本音が伺えますね。
3.より効率化された不動産賃貸仲介業が構築される可能性
確かに価格競争が起きると不動産業界全体が委縮してしまうかもしれません。当然、その中には勝者も出てくるわけですが、それ以上に敗者が出てくることは明白です。
しかし、ビジネスをしていく上で競争は避けられません。そして競争の過程でより業務が効率化しより良いビジネスモデルが構築される可能性は極めて高いです。そして、その効率化の中心となるのはIT。「不動産テック」という言葉が一時期もてはやされましたが、突き詰めれば「ITによる不動産業務の効率化」の事であると思います。
業界は異なりますが、スーパーマーケットなどは効率化の為にPOSシステムを導入し大成功を収めました。
POSシステムとは、物品販売の売上実績を単品単位で集計する経営の実務手法
参照:Wikipedia「販売時点情報管理(POSシステム)」
私も詳しくは知りませんが、売れ筋商品を瞬時に把握しその在庫を十分に確保することが可能です。反対に全く売れない商品も把握できるので、廃版に商品のあります。職種は違うと言えど、このような効率化こそが本当に望まれるべき効率化であると考えます。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。
価格競争は一般消費者にはメリットをもたらす半面、企業側には売上及び利益の減少をもたらします。既存のビジネスモデルにしがみついている抵抗勢力がいることは当然です。そうでないとやっていけなくなってしまうのですから。
それでもいずれは通らなければいけない道であることは明白です。透明性が低いと言われている不動産業界を変えるチャンスでもあります。新たなビジネスモデルを武器に不動産市場に戦いを挑むチャレンジャーがドンドン出てくることを期待しています。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。