REITは財布の中にお金がありません。REITはその構造上、利益の90%超を配当に回します(こうすることで所得税を回避できる)。
なので何かする時(新規物件取得や既存物件の大規模リニューアル)は、その為のお金の調達する必要があります。
REITがお金を調達する手段は
借入
増資
の2つしかありません。その中でも増資が人気です。なぜだと思いますか?
目次
1.なぜ増資なのか?
なぜ増資という手段を選ぶのかに関しては上記の図をご覧ください。他に取るべき選択肢が無いので増資が選ばれているのです。ようは消去法ってことです
また、増資は特別なイベントではなく定期的なものであると考えてください。
お金が無いと何もできません。しかし、何もしないと市場の評価はダダ下がりです。ですので、REITは何かをするときには借入か増資をするしかないのです。なので結構頻繁に行われます。
これは私の個人的な考えですが、
借入⇒REITの影響大(バランスシートが傷む、評判が悪くなる)
増資⇒投資家に影響大(分配金減少可能性:利回り&投資口価格が下がる)
なので、REITは借り入れよりも増資を選んでいるのかなとも思ってしまいます。あまり大きな声ではいえませんが…。
2.増資のメリット
※「日銀の買い入れ対象となる」に関しては、別記事にて詳細を説明しています
日銀はある一定の基準をクリアしている銘柄に関しては、買い入れ銘柄として直接購入します。日銀が購入するとなれば、そのアナウンス効果は絶大です。確かにそうですよね、安心感が全然違います。
また借入金比率を下げておけば、REIT市場が低迷し増資による資金調達が難しい場合でも借入を行い資金調達をすることが可能となります。REITの価格が低迷している時に「新しく投資口を売り出します!」って言っても誰も買ってくれません。買っても価格が下がる可能性大ですから。
3.増資のデメリット
投資口が増えると分配金が減るのは分かりますよね?
1億円を50人で分ける⇒200万円/1人
1億円を100人で分ける⇒100万円/1人
というように1人当たりの分け前が減るからです。難しく考える必要はありません。
そして、分配金が減れば当然分配金利回りも低下します。分母が一緒でも分子が少なくなれば当然数字は小さくなります。
次に、分配金利回りが低下すると以前の利回りを求めて投資口価格が減少します。今度は分母が小さくなるイメージです。
このように増資というものは、負のスパイラルを引き起こす可能性があるのです。
4.REITが増資のデメリットを回避するために取る手段
REITが増資によるデメリットを回避するためには、希薄化した分配金を他の方法で埋め合わせるしかありません。最も分かりやすい方法は、増資と同時に新たな物件を取得しその賃料を原資として分配金を埋め合わせる方法です。この方法はよく使われます。
増資のそもそもの目的が新規物件の取得の場合には、当然と言えば当然ですが。
5.REITの増資アナウンスが流れた場合にまず確認する事
5-1. 増資における発行価格が1口当たり純資産額よりも高いのか安いのかを確認
これは増資を行った際のREIT市場の状況に影響することが多いかとは思います。堅調な場合には、1口当たり純資産額を上回る発行価格で増資を行う可能性が高いです。そしてこの場合は、その後に分配金が増える可能性が高いです。
逆に市場が軟調な場合には、1口当たり純資産額を下回る増資が行われる可能性があります。この場合は市場が堅調な場合とは反対に、分配金が減少してしまう可能性が高いです。
5-2.増資と合わせて新規物件の取得など他の情報があるかどうか確認
先ほども述べましたが、増資のデメリットを新規物件取得が補ってくれることが多々あります。「増資は分配金が下がるから×!」と決めつけることはせず、増資と合わせて他の情報が発表されてないか確認しましょう。
5-3.増資と合わせて新規物件の取得が行われる場合には、その物件の利回りを確認
増資により取得予定の物件の利回りが、そのREIT所有物件の平均利回りよりも高い場合には非常に前向きな増資です。将来的な分配金増&投資口価格増が見込めるでしょう。
重要なのは、増資により調達した資金の使い道です。調達資金がより利益を生み出すものに使われるのであれば、決してマイナスにはなりません。
6.まとめ
いかがでしたでしょうか。各REITから発表されるIRを読んでも言葉が難しすぎて分からない事多いですよね。ここまでお読みいただいた方ならお分かりになるかと思いますが、増資1つとっても投資家から見れば考えなければいけない事が山ほどあります。このような情報を1つ残らず検討していくのが本当の投資家であるはずです。分からないからと言ってテキトーに流していると、プロ投資家の餌食になってしまうのでご注意!
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