不動産ファンドとは何であるのか。
パッと見で「不動産に関わる何かをしている」という事はお分かりいただけると思います。が、それしか分かりませんよね。もう少し詳しい方であれば「色々な人からお金を集めて不動産に投資してるんでしょ!?」という事までご存知でしょう。
もう、上記の事だけを覚えておいたいただければ良いと思います。一般の方であれば、日常生活においてこれ以上の知識は必要ないでしょう。街を歩いていて不動産ファンドに勧誘されるなんてことは無いですから。もし渋谷や新宿でとつぜん不動産ファンドに勧誘されたら、それは恐らく詐欺です。猛ダッシュで逃げましょう。
他方、不動産投資をしている(しようとしている)方にとっては上記の理解では不十分です。不動産ファンドも不動産投資を行います。突き詰めれば、競合相手となり得る存在なのです。また、その不動産投資手法を学ぶべき相手でもあるでしょう。より深く不動産ファンドについて知っておく必要があるのです。
では、そもそも「ファンド」とは何なのでしょうか。
「ファンド」を直訳すると「基金」となります。そして基金とは複数の投資家(銀行や保険会社、富裕層など)から集めた資金を運用し、その利益を投資家に分配する仕組みです。元本は保証されません。利益も損失も投資家に帰属します。
上記がファンドの定義です。一般的なファンドの場合、資金の運用先は”株式”や”為替”などが多いでしょう。そして、その資金の運用先が”不動産”の場合が不動産ファンドなのです。カンタンですね。
不動産ファンドは多額の資金を複数の不動産で運用します。つまり、投資家が不動産ファンドに投資をすれば、間接的に複数の不動産に投資をしたことになるのです。分散投資をしたのと同じ効果が得られるのです。
もちろん、不動産ファンドにも大小様々な種類のものがあります。数万円から投資できるものもあれば数億円以上でないと投資できないものまであります。しかし、現物不動産に投資をするよりも少額で不動産投資を行う事が可能です。都内のピカピカのオフィスビルに投資しようとした場合、数十億円では足りません。数百億円必要な事もザラにあります。そのような物件への投資も、不動産ファンドを通してであれば可能になるかもしれません(※個人では投資できない不動産ファンドもありますのでご注意ください)。
他にも不動産ファンド独自の特徴があります。
- 不動産ファンド自体はリスクを負っていない
- 不動産ファンドの運営費がかかる
- 不動産ファンドの運用戦略は主に3パターン
1つずつ見ていきましょう。
不動産ファンド自体はリスクを負っていない
不動産ファンド自体が投資家として参加している場合を除いて、不動産ファンドにおける収入のメインは手数料です。「資金を不動産で運用しますので手数料を下さい」という考え方になります。不動産業界には賃貸仲介などのフィービジネスが多いですが、そのなかの1つと考えて頂いて良いでしょう。
ですので、不動産ファンドの運営が思わしくなく投資家に損失が生じてしまった場合でも、不動産ファンド自体に財務的な損失が生じることはありません。もちろん、投資家から手数料の減額などの要求が出てくる事は想定できますが、投資家が被った損失を補てんするようなことはありません。あるとすれば投資に失敗したという道義的責任くらいではないでしょうか。
“投資は自己責任”です。能力の無い不動産ファンドに自らの資金の運用を任せた自分が悪いのです。不動産ファンド自体は信用というもの以外にキズを負う事はないでしょう。
余談ですが、不動産ファンドへの手数料って結構高いですよ。だいぶ取っていきます。私は以前不動産ファンドで働いていましたが「手数料だけでこんなに貰えるの?」と感じたことがあります。よく言う「頭に汗をかいている」ことへの対価です。私には意味不明でしたが。。。
不動産ファンドの運営費がかかる
先ほどの不動産ファンドの手数料もそうですが、その他の運営費も結構かかります。1つの不動産ファンドでも多数の投資家が投資をすることが多いので、その投資家の管理をする費用だけでも相当なお金が必要です。投資家への月次の運用報告レポートの送付であったり、個々の投資家との契約業務やその他のアフターフォローなどなど多岐にわたります。
投資家を管理するための費用の他にも、不動産ファンド自体の運営費も必要です。人件費やら事務所の運営費やら。もちろん、自ら不動産に投資をする場合にはこれらの費用は不要です。高額な手数料を支払ってプロの運用をお願いするのか、はたまた自分の運用を行うのか。後はご自身の判断です。
ちなみに、不動産ファンドの従業員の給料は相場よりも高めに設定されています。20代で1,000万円オーバーもザラです。私はそこまでの高給取りではありませんでしたが、周りの先輩たちはだいぶ貰っていました。私は国内系のファンドにいましたが、外資系のファンドであれば、その2倍3倍は貰っていると思います。但し、外資系の場合、一回の失敗で「ゆーあーふぁいやー」されるようですけど。。。
不動産ファンドの運用戦略は主に3パターン
コア型(物件特定型):ローリスクローリターン
- 初めからどの物件に投資をするのかが決まっています。
- 「賃料収入」が収益の柱
- より良い賃料収入を生み出す不動産に投資をすることが重要
オポチュニスティック型(物件非特定型):ハイリスクハイリターン
- 投資家が投資した段階では、その資金がどの物件に投資するのかが決まっていない
- 不動産の売買による「売買益」が収益の柱
- より安く不動産を購入しより高く売ることが重要
バリューアッド型(コア型とオポチュニスティックの中間):ミドルリスクミドルリターン
- 投資した段階で投資物件は決まっているが、安い物件があれば積極的に投資していく
- 「賃料収入」が収益の柱だが、「売却益」も狙っていく
- オポチュニスティック型ほど「売却益」は重視しない
最後の内容が少し難しかったかもしれません。ようは同じ不動産ファンドでも、”ハイリスクハイリターン”を狙っていくものもあれば”ローリスクローリターン”で運用を行っていくファンドもあるという事です。
不動産ファンドについてより詳細にお話しする場合には、”SPC”や”ノンリコースローン”、”不動産特定共同事業法”などの難解な言葉が登場します。今回はこのような専門用語を使用しない範囲内で不動産ファンドのついて考察をしてみました。何事もまずは基本から学んでいきましょう。
”SPC”や”ノンリコースローン”などの単語は、別の記事で改めて説明をさせて頂きます。もう皆さんお腹一杯だと思いますので、今回はこれで終わりにします。
本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました。