転貸とは”又貸し”の事です。借りているものを更に誰かに貸すのです。賃貸マンションに住んでいて、急に数年間の転勤が決まることってありますよね。転勤が終わり次第また同じ賃貸マンションに住みたいけど、その為には家賃を払って部屋をキープしておかなければいけません。一度退去してしまったら、そのマンションがまた空いているかどうかは分かりません。キープしておくためだけに家賃を支払い続けるなんて、無駄以外のなにものでもありません。非常に悩ましい問題です…
そういう状況になった場合、このような考えが頭に浮かぶ事があると思います。
転勤の間だけ誰かに貸しておきたい
何度も言いますが、住んでいない物件に対して家賃を支払う事ほど無意味な事はありません。転勤の間だけ誰かに貸せるのであれば、その方が良いに決まっています。利益を得ずともトントンになるのであれば御の字です。引っ越すとなると、引っ越し代や敷金礼金など結構な費用が必要になります。現在住んでいるマンションの条件が良いのであれば、なおさらキープしておきたいですよね。。。
このように、”部屋をキープしておきたい”や”お財布事情”などを考慮した場合、転貸(又貸し)しておくことが最善の策であることは多々あるでしょう。物件によっては転貸により利益を得ることが可能な場合も考えられます。6万円/月額で借りている物件を8万円/月額で転貸をすれば毎月2万円も利益が出ます。お小遣い稼ぎにはピッタリです。
しかし、この転貸、本当に要注意なんです。転貸について知らないと、大変な事になります。「転勤の間だけ」や「お小遣い稼ぎ」という軽い気持ちで大家さんに無断で転貸をしてしまったら、、、
一発アウトの可能性が非常に高い
のです。そもそも、民法において所有者に無断で行う転貸が禁止されています。
この民法の条文は賃貸マンションのような建物だけでなく、様々なものの無断転貸を禁止しています。「借りているものを勝手に第三者に貸し出してはいけません」と言っているのです。当たり前と言えば当たり前の事ですが。。。
そして、万が一この民法612条1項に違反した場合、契約が解除されてしまう恐れがあります。つまり
”無断転貸”=”民法第612条2項適用”=”契約解除”=”強制退去”
という図式が成り立つのです。無断転貸を行った場合、最悪のシナリオとして強制退去を想定しておかないといけません。無断転貸をしたアナタが悪いのです。「さっさと出ていけ!」「分かりました…」非常に厳しいですよね。
民法の条文をそのまま解釈すればこのような対応になるのです。自業自得と言ってしまえばそれまでですが。。。しかし、ここで1つ付け加えなければいけない事があります。それは、
建物の無断転貸においてはちょっと様子が違う
のです。建物の無断転貸に関しては裁判所が寛容な姿勢を取っているのです。どういう事なのでしょうか。
建物の無断転貸における裁判所の考え方のキホンは、
例え借主が無断転貸を行ったとしても、それが貸主及び借主間の信頼関係を損なったと認められない場合には、民法第612条2項による解除権は発生しない
なのです。例えば、借主が第三者に賃貸マンションを転貸したとしても、その行為が貸主借主間の信頼関係を壊したと認められない場合には、貸主は契約の解除を主張出来ないのです。転貸した相手が借主の親族や特別な関係にある人の場合には、解除権は発生しないことが多いです。他方、事業用の店舗などの転貸に関しては、解除権が発生する場合が多いのでご注意を。
このように、建物の無断転貸に関しては、場合によっては解除権が発生しないことがあります。”無断転貸を行ったかどうか”という形式面での判断ではなく、”貸主借主間の信頼関係が壊れたかどうか”という実質面を重視しているのです。知らずに無断転貸を行ってしまった借主にとっては非常に有難い判断ですよね。
今度は、無断転貸を”されて”しまった貸主の立場を考えてみましょう。
賃貸マンションの契約をする際には、様々な書類を提出します。住民票やら印鑑証明書やら源泉徴収票やら。。。それらの書類は一体何に使われているのでしょうか。そう、”入居審査”です。入居希望者をその物件に入居させてよいのかどうかを判断するために書類を徴収しているのです。もちろん、審査対象は各書類の名義人です。
では、無断転貸により入居した転借人は誰がどのように入居審査を行うのでしょうか。答えは、
誰も審査しません
無断転貸をする人の独断と偏見のみです
これでは貸主が入居審査をした意味が全くありません。もちろん、例え転貸をしたとしても、賃貸借契約関係は継続します。しかし、だからといって実際に住んでいるのが見ず知らずの赤の他人だといたらどう思いますか。間違いなくイヤですよね。「用事があって部屋に行ったら全く知らない人が住んでいた」←こんな状況あり得ません。
ですので、例え無断転貸が判例において認められることがあるとしても、貸主の事を考えてキチンと貸主の承諾を得ることにしましょう。自分の身に置き換えれば、皆さん絶対にそう思うはずです。自分がされたくないことはするべきではありません。
夫婦間でも親子間でも仕事の間でもそうでしょう。しっかりと承諾を得れば後々揉めることはほぼありません。無断でしてしまうから後で揉めるのです。確かに「断られたらどうしよう!?」と不安になる気持ちは重々分かります。しかし、そこは勇気を出して相手にしっかりと伝え承諾を得ましょう。勇気と根性があればこの世は大体何とかなりますので!
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。