不動産投資の現状と今後の予測

コロナ影響による不動産投資について

コロナウイルスが世界的な広がりを見せ、日本でも3月以降は特に大きな影響が現れています。

経済の落ち込みが強調される報道も多いなか、コロナウィルスは不動産投資の世界にも少なからず影響を与えています。

今回は不動産市況の現状を踏まえた上で、今は不動産投資に関して“動”なのか“静”なのかを考察し、さらに今後の見通しについて述べていきます。

目次

不動産投資の利回りや入居率を予測

不動産投資に関して、キャピタルゲイン(不動産売買によって得られる売買差益)・利回り・入居率は今後どのように推移するか予測してみましょう。

キャピタルゲイン

キャピタルゲインを考察するにあたっては、具体的に中古マンションの売買価格をみていきたいと思います。2019年1月以降の東京における中古マンション価格は以下のように推移しています。

 ※参照 レインズ データライブラリー マーケットデータ

http://www.reins.or.jp/library/2019.html

http://www.reins.or.jp/library/2020.html

東京における中古マンションの売買価格を例にすると、2020年2月・3月は前年同時期よりも少し高い状態で推移しておりました。

しかし、グラフからもわかるように今年の初頭に最高価格を更新して以降下落が始まり、2020年4月には前年同時期比で約4.5%下げています。

「元々の下落基調がコロナウイルスの影響で顕著化した」と判断してよいのではないでしょうか。 また、2020年4月の成約件数は前年同時期の約50%まで下落しております。

※参照 レインズ データライブラリー マーケットデータ

http://www.reins.or.jp/library/2019.html

http://www.reins.or.jp/library/2020.html

成約件数を考慮すると、不動産価格の下落基調は今後しばらく続く可能性はあるでしょう。他方、キャピタルゲインを狙うのであれば、今は“静”の時期なのではないでしょうか。

今秋以降に到来すると言われている新型コロナウィルス第2波の影響を見極め、さらに来年に延期されていの東京オリンピックの開催可否の判断を確認してからでも遅くはないのではないでしょうか。

「新型コロナウィルス第2波」 「東京オリンピック開催可否」 これら2つの要因如何では、不幸にも手持ち不動産を手放さなければならない状況が生まれてしまうかもしれません。

この状況を逆から見れば、不動産が市場に多く放出される事になるので、より安く不動産を購入できる可能性も出てきます。

今後は都心部の企業を中心としてテレワークを用いる企業が確実に増えるでしょう。それは、「企業によるオフィス需要の低下」を意味しています。

長い間、底堅いと言われてきたオフィス需要の低下が不動産市況に与えるダメージは計り知れません。 「新たな生活様式」「ソーシャルディスタンス」が飲食店やアパレルなどの店舗に与える影響も当然考慮しなければいけません。

今までは不動産投資を行うにあたって検討する必要が無かった要因まで検討をしなければいけない時代に突入してしまいました。

底堅く不動産投資を行う企業から人気の「オフィスビル」でさえも今後はどうなるか分かりません。やはり今は状況を見極めるための“静”の時期だと言えるのではないでしょうか。

投資利回り

続いて、今後の不動産投資利回りについて考察していきます。2019年1月以降の四半期ごとの不動産投資利回りの推移は以下のようになっています。

※参照 レインズ データライブラリー マーケットデータ

http://www.reins.or.jp/library/2019.html

http://www.reins.or.jp/library/2020.html

2020年1〜3月の東京の表面利回りの目安は、下がってはいますがそれほど大きな下げとはなっていません。しかし、コロナウィルスの影響により、すでに多くの企業が来年度の新卒採用をストップしています。

この影響により来年同時期の賃貸需要は今年と比べて低下することが予想されます。賃貸需要の低下は空室率の増加を招き、ひいては利回りの低下を引き起こす可能性も否定できません。

コロナウィルスが家賃に収入与える影響は、遅れて表面化されることが想定されます。 具体的に表面化されるのは今秋以降でしょうか。物件価格の下落局面で不動産を購入された方は、不動産投資利回りのアップサイドが期待できることは言うまでもありません。

賃貸住宅の入居率

続いて、不動産投資に大きな影響を与える入居率について過去の事例をみていきましょう。不況時の賃貸住宅入居率として、リーマンショックの時(2008年9月)の動向を振り返ってみたいと思います。

時期入居率
委託管理サブリース
2008年10月〜2009年3月
89.4%
89.6%
2009年4月〜2009年9月
90.3%
93.5%
2009年10月〜2010年3月
91.4%
94.4%

※参照 公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会

半期ごとの入居率を確認すると、2008年9月以降1年間の入居率は下がっておらず、むしろ上がっています。このように「不況時の強さ」という観点で見ると、賃貸不動産投資は強みを持っているといえるでしょう。

しかし、コロナウイルスが経済に与える影響は、リーマンショック時よりも大きいものになるといわれています。

また、すでに考察しましたが賃貸需要は今秋以降低下する可能性が高いと思われます 注意深く賃貸不動産市況を見守っていきたいと思います。

関連記事:投資用不動産の価格の動きが上下にオカシイ件

不動産と他の投資商品を比較

ここで、別の投資商品の動向も確認してみましょう。代表的な投資商品と言えば「株式」ですので、株式がどのような値動きを見せていたのかを確認していきたいと思います。

日経平均株価の日足終値推移を確認すると、2019年12月初頭は約24,000円台となっておりますが、2020年2月後半から下落を始め、2020年3月中旬には16,000円台まで低下しましたが、2020年6月には22,000円台まで回復しています。

約3ヶ月の間に8,000円も下がったにも関わらず、6,000円も戻したというとてつもない値動きとなりました。

ただし今後も 「コロナウィルス第2波への懸念」 「中国経済の動向」 「アメリカ大統領選挙」 などなど株式の値動きに影響を与える要因は複数あります。

今後も注視していかなければいけません。

比較から見えてくる不動産投資のメリット・デメリット

不動産投資と株式投資とを比較すると、「運用の安定性」が不動産投資のメリットといえるでしょう。一方、デメリットとしては「投資金額の大きさ」ということになるでしょうか。

投資用不動産を購入する場合には、数千万円から数億円の投資が必要になることが多々あります。

今後の不動産投資の捉え方

コロナウィルスが経済に与える影響は、今後間違いなく顕在化してきます。 不動産価格の下落が予想される今般、不動産投資は長期的には手堅く投資をしたい場合の選択肢の1つとなり得るでしょう。

しかし、「今すぐ」不動産投資を始める事は控えた方が良いかもしれません。

「コロナウィルス第2波の影響」 「東京オリンピック開催可否」 などの動向を見極めた上での投資判断でも決して遅くはありません。

2021年までは不動産投資市場に大きな影響を与えかねない不確実な要因が多数存在していますので、それらの動向を見極めた上で2022年以降の不動産投資が良いのではないか、と私は考えております。

関連記事:日本の不動産価格をけん引しているのは誰か?

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