不動産を安く買うコツってあると思いますか?
私は1つだけあると思っています。
それは、
「タイミング」
です。
「いきなり何を言い出すんだ!」というクレーム、大いに結構です。最後までお読みいただいたら私の言わんとすることが分かって頂けると思います。たぶん…。
まずは騙されたと思って最後まで読んでください。
本当に騙されたとしても大人の対応でお願いします。
まずは1つ話をさせてください。私の経験談です。
知り合いの会社の社長(以後「A社」)から相談を受けて、私がある倉庫の売買を仕切ることになりました。
簡単な状況説明は下記になります。
・A社が約200坪の倉庫を賃貸していた。
・その賃貸物件のオーナーが倒産した。
・オーナー側から依頼を受けた不動産会社の担当者がA社に購入を打診してきた。
・物件の前面道路の路線価は「86F」と記載。坪単価はおおよそ28.4万円/坪。200坪×28.4万円=5,680万円。
不動産会社の担当者はA社の席に着くなり、
「3,000万円で買いませんか?」と購入の打診をしてきました。事前に路線価を調べていたので「安いな」というのが私の最初の印象です。
しかしA社社長は、
「倉庫としてしか利用していない物件に3,000万円も出したくない。」
「会社の懐事情を考慮しても、賃貸の方が助かる。」
という考えでした。
もちろん不動産を所有するとなれば固定資産税や都市計画税などの費用負担も発生します。
その辺りもA社社長は気にしていたようです。
しかし、このようなオーナーが倒産した物件の場合、他の会社が購入してしまうと色々と面倒な事がおこってしまいます。賃貸を継続できればよいですが、それは新たな所有者次第です。
また、賃料の増額要求も考えておかなければいけません。
そのような点を考慮すると、金額次第では購入をした方が良い可能性がありました。
そこでA社社長と私はいったん席を外し、
私「他に買われてしまうと面倒な事になるかもしれません。いくらまでなら出せますか?」
A社社長「2,000万円台前半なら検討できる。」
私「分かりました。」
そして不動産会社の担当者に直球を投げました。
「確かに3,000万円は路線価よりも安いです。しかし、立地的に倉庫以外の利用用途はありません。そしてこの物件は10年以上空き物件でした。なので、2,000万円という価格は可能ですか?」
ちょこちょこ価格を下げてもしょうがないと思った私は、一気に1,000万円ダウンで話を切り出しました。
あの時の担当者さんのキョトンとした顔、今でも忘れません。そりゃそうですよね。
希望売却価格:3,000万円⇒希望購入価格:2,000万円
普通ならテーブルを蹴り上げられても仕方ありません。
数秒の間があった後、担当者さんの怒涛の口撃が始まりました。
「そんなの無理ですよ!だって路線価がなんやらかんやら…」
「こんな価格をうちの会社の上司に話したらなんやらかんやら…」
「そんな価格なら買いたい会社は山ほどなんやらかんやら…」
とか言われた気がしますが、あまり覚えていません。
でも、でもです。
担当者の話を聞いていると、どうしてもA社に買ってもらいたいオーラがバリバリ伝わってくるのです。
そこで私はこう考えました。
(もしかして、他に買い手がいないんじゃないのか!?)
(それならば、A社の要望を突き通せるだけ突き通してみよう)
(そう言えばこの倉庫を借りる前に借りていた倉庫が近くにあるって言ってたな。それは今どうなってるんだろう?)
小さい声で「社長、以前借りていた倉庫は今どうなってるんですか?」
「まだ空いとるよ。最悪そこにまた移るしかないね。」
秘密兵器準備完了
今度はこちらの口撃の番です。
「何度も言わせて頂きますが、こちらとしては倉庫利用の物件に3,000万円は出せません。以前借りていた倉庫がまだ空室のままなので、出て行けと言われれば出ていきます。こちらの希望購入価格は2,000万円なので、それに近い価格が出るかどうか関係者の方々にヒアリングしてもらう事は可能ですか?」
再び沈黙…その後
「分かりました。検討させてください」
と一言残し担当者の方は帰られました。
後日、その物件はこちらの希望価格に近い価格で買う事が出来ました。
やはり処分に困っていたようです。
最後は担当者の方に「今回は負けましたが次は高く買ってくださいね。」と言われました。
もちろん「嫌です!」と断りました。
今回の物件を安く買う事が出来たのは、
・難しい場所にあり、以前から空いていた
・最悪の場合は他の物件に移ることも覚悟していた
・オーナーが倒産した物件であった
などの要因が影響したのは間違いありません。しかし、やはり今回も突き詰めればこれに行き着きました。
不動産売買で最も重要なのは「タイミング」
不動産を買い急ぐと、ヘンテコな物件を買ってしまう可能性があります。
不動産を売り急ぐと、あまりにも安い価格で売ってしまう可能性があります。
不動産売買においては、待つことができる人が一番利益を出せる人であると私は思います。
不動産業界にいると「あの物件は〇〇会社が買ったよ」などの話をよく耳にします。
その中には「どういう角度から見ればあの物件が買えるんだ?」という話も多々あります。
そのような癖のある物件を購入するのは決まって買い急いでいる会社です。
余裕のある会社は、社で決めている判断基準外の不動産には絶対に手を出しません。
今回A社は買い急いでいません。むしろ買う必要もありませんでした。
しかし、オーナー側は早急に物件を売却しなければいけない状況でした。
このような状況があいまって今回の売買が成立しました。
不動産は安く買おうと思って安く買えるものではありません。高く買おうと思えばいくらでも買えますが…。
もし不動産投資をしようとされている方がいらっしゃったら、絶対に買い急がないでください。情報だけ集めておけば、いずれピカイチな物件に出会えるかもしれませんので。