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2017.09.28   2018.04.06

歴史を紐解くと借地権は簡単に理解できます!

歴史の勉強

借地権とはその名の通り「土地を借りる権利」です。もう少し正確に言えば「建物所有を目的として第三者の土地を借りる権利」となります。もちろん、借地料をお支払いして借りるのが一般的です。

とてもシンプルな権利に見えますよね。ようは建物を建てるために賃料を払って土地を貸していただくだけなのですから。しかし、この借地権、非常に奥が深い。奥が深すぎて不動産業者さんの中でも借地権に精通している方は滅多にいません。法律的要素が強すぎて取り組みづらい権利であるとも言えます。とても複雑な権利です。

借地権を取得する際にはまずはしっかりと勉強をしてください。不安でしたら借地権専門の不動産業者もいます。法律の専門家に相談しても良いでしょう。借地権においてよく問題になるのは「借地権を突然取得する場合」です。つまり借地権について相続が発生した場合です。「えっ!?借地権は相続できるの?」から始まると思います。借地権の相続に関しては下記の記事が参考になると思います。

これだけでOK!借地権を相続した時に必要な3つの事+α

このシンプルだけど奥が深い借地権、いったいどのような経緯を経て誕生したのかご存知ですか。そして、どのような変遷を経て今の借地権となってのでしょうか。物事を理解するにはその歴史を紐解くのが一番の近道です。なので今回は借地権の歴史を中心に考察していきたいと思います。

1.なぜ借地権は誕生したのか?

時は明治時代。その頃から納税方法が、

  • お米⇒お金

に代りました。納税義務者は土地の所有者です。その当時は税率が非常に高く、土地所有者は支払いに困窮していました。土地を手放す所有者も後を絶ちませんでした。しかし、土地を手放したとしても何かしなければ生活が出来ません。そこでそのような人々は新たに土地を借りて農業を行いました。小作農というものですね

このような状況が暫く続いた結果、土地は地元の有力者にどんどん集積していきました。それと共にその地元の有力者から土地を借りて農業を行う小作農も増加しました。

その後、日本は様々な産業の発展や日清・日露戦争などの戦争特需により都心部を中心にどんどん豊かになっていきました。その豊かさを求めて日本各地から都心部へと人々の移動が起きました。日本全国から都心部への人口移動は、

  • 都心部の人口増加⇒都心部の地価上昇

をもたらしました。地価が上昇したことを好機ととらえ、地主の多くは土地を売却して利益を得ようと考えました。しかし、土地は農地や住居を建てる土地として貸し出している事がほとんどでした。現在では賃貸中の土地の所有者が変更したとしても、賃貸借契約に何ら変更はありません。しかし、その当時は、賃貸中の土地を第三者に売却した場合、

  • 権利として認められていないので土地を借りる権利は消滅

してしまうのです。つまり、所有者が変わった場合には権利という権利を持たない借地人は土地を明け渡さなければいけなかったのです。全く理不尽な話です。何よりも借地人の権利が認められていないことが問題でした。

当時の政府もこのゆゆしき事態を問題視しました。そして、明治42年に「建物保護ニ関スル法律」を制定し、建物の登記をすれば地主に借地権を主張できるようになりました。この時に現代に通じる考え方の基礎が出来上がりました。

その後、大正10年に「借地法」「借家法」が制定されました。地主に対して借地人の地位をより一層向上させよう、という趣旨でしたがまだまだ形式的なものでした。借地人と比べて地主の地位の方が圧倒的に優位な状況が続きました。地主がなんだかんだ言いがかりをつけて立ち退きを要求する事態が頻発しました。

そこで昭和16年に「借地法」「借家法」が改正され、地主からの立ち退き要求には「正当事由」が必要になりました。もう完全なイタチごっこですね。地主が立ち退きを求めたり契約の更新を拒絶する場合には、それに相応しい理由が必要になったのです。この法律改正により遂に借地人の地位の向上が加速しました。

>借家を取り壊して地主に返還しなければいけない?

しかし一難去ってまた一難。

借地人の地位の向上を図るために創設した正当事由。実際に運用を行ってみると今度は借地人保護に傾倒しすぎていることが分かりました。地主による借地契約の更新拒絶がほぼ不可能となってしまったのです。更新したくないと申し出ても最終的には裁判所が更新の許可を出したのです。

このことにより今度は地主の地位が相対的に低下しました。一度貸したら二度と返ってこない土地が増加したのです。ここまでの流れを見て頂ければお分かりいただけると思いますが、利益が相反する借地人と地主の双方の利益に資する制度を作ることは非常に難しいのです。

そこで、平成4年8月に借地借家法を改正しました。メインは定期借地権の創設です。定期借地権とは「借地期間の区切られた借地権」です。期限が到来したら借地契約は終了ます。正当事由の有無など関係ありません。このように借地権というものを大まかに2種類に分類し片方は借地人有利、もう一方は地主に有利、として借地人及び地主の双方の地位の向上を図ったのです。

ここまでの流れを簡単にまとめると、

  1. 借地人の権利無し
  2. 借地人の地位の向上:借地上の建物登記による地主への主張
  3. 借地権の強化:正当事由
  4. 地主の地位の低下:土地が返ってこない
  5. 地主の地位の向上:定期借地権の創設

以上となります。

政府が対応に苦慮しているのが手に取るように分かります。方針も二転三転していますからね。しかし、それも当然です。借地権というものは、どちらかをたてればどちらかがたたなくなる権利なので。今後の注目ポイントは、定期借地権がどのような動きをしてくれるのか、ということでしょう。両者の利益衡量の役割をしっかりと果たしてくれる事を期待します。

2.なぜ借地権は難しいのか?

借地権は非常に難解な権利です。理解するのがとても大変です。なぜなのかを考えてみた結果、「借地権というただ1つの言葉に多数の意味を持たせてしまっているからではないか」という私なりの結論に至りました。

つまり、借地権とひとえに言っても、

  • 普通借地権
  • 旧法借地権
  • 定期借地権
  • 地上権

上記のように様々な意味が内包されてしまっているのです。これが借地権の理解を妨げている一番の要因であると考えます。

また、通常は借地権と言えば「普通借地権」を事を指すのですが、様々な文献やサイトで借地権という言葉を調べてみたところ、

  • 「借地権とは地上権と賃借権を意味する」
  • 「借地権とは普通借地権と一般定期借地権と事業用定期借地権と建物譲渡特約付借地権と一時使用借地権を意味する」
  • 「借地権とは旧法借地権と普通借地権を意味する」

と説明されていました。もう何が何だか分かりません。正解なのか不正解なのかの判断さえつきません。この原因は「論者によって借地権の定義が異なる」という点に尽きます。色々な文献を読めば読むほど混乱します。なので私は「借地権とは?」という言葉の定義はしません。必要以上の混乱を引き起こすだけですので。

借地権という権利について覚えて頂きたい事は「建物所有を目的とした土地を借りる権利」ということです。そして「権利の内容によって数種類の借地権が存在している」ということ。不動産業者でなければこの程度の知識で十分です。

「借地権とは〇〇である」という定義は宅建試験などの試験対策の時だけ覚えましょう。

試験対策

3.「借地権=債権」「地上権=物件」?

借地権と検索すると

「借地権は地上権賃借権を表す。地上権は物権であり、賃借権は債権である」というような説明がされているサイトに出会うことがあります。確かにその通りです。何も間違っていません。そして、

  • 地上権は登記できる
  • 賃借権は登記できないが、賃借権上に自己所有の建物がありその登記をすれば借地権を第三者に対抗できる

とも説明してあります。これもその通りです。でもこれもやはり試験対策の知識です。実務でも必要な知識は上記の赤文字の個所です。借地権の対抗要件の個所です。地上権と比較することによって借地権の理解を深めようとしているのであれば分かりますが、ただ単に知識の羅列として説明をしているのであれば読者目線からはかけ離れています。

そもそも地上権は所有権と同等の強力な権利なので、地主は地上権を設定する事を嫌がります。

  • 地上権は登記をする必要がある
  • 地主の承諾を得ずに地上権の譲渡が出来る
  • 地上権は抵当権を設定できる

もしあなたが所有権を持っている土地の上にこんな協力な権利を持つ人がいたらどうしますか。絶対イヤですよね。私はイヤです。地上権者に自分の土地を買ってもらいます。

何が言いたいかといえば「地上権など実務ではほとんど設定されない」という事です。試験対策としては覚える必要がありますが、こんな強力な権利を地主は滅多に設定しません。覚えるべきは「地上権と賃借権の違い」ではありません。

4.新旧借地権と新たに創設された定期借地権の違いこそ本当に重要な知識!

平成4年8月以降に適用される改正借地借家法は、旧法よりも地主の保護を念頭に置いています。地主の保護という観点から考察した場合、ポイントは2つあります。

借地期間の更新

新旧借地権
ⅰ.合意による更新
ⅱ.期間経過後も借地上に建物が存在し、その建物を借地人が継続使用していることについて地主が遅滞なく「正当事由」に基づいて異議を申したてない場合の借地契約の法定更新
いずれにしろ、新旧借地権は借地期間を更新できます
定期借地権
借地期間満了に伴い契約は終了します。正当事由の有無は問いません。
定期借地権は更新できません。この点が地主に有利に働きます。

借地契約期間満了後の対応

新旧借地権
建物買取請求権あり
借地契約期間が満了し契約が更新されない場合には、「建物を壊すのは勿体ないから買い取って欲しい」と地主に要求する権利です。
定期借地権
建物買取請求権なし
借地契約期間が満了し契約が更新されない場合、建物を解体し更地にした上で地主に返還する必要があります。

上記2点が実務上は非常に重要な知識になります。借地権誕生から現在までの借地借家法の変遷を考えれば容易に理解できると思います。借地権と定期借地権の2種類の権利を創設することによって借地人と地主の利益衡量を図ろうとしているのです。私はこの対応には大賛成です。「お見事」と言っても良いと思います。皆さまはどう思われますか。

5.まとめ

いかがでしたでしょうか。

記事を書いている途中から熱くなってしまい、長文になってしまいました。すいません…。私が考える借地権に関して絶対に抑えておくべきポイントは上記2点です。実務上でも必要な知識ですので、ぜひ覚えておいてください。もちろん各種試験対策という意味では、より多くの知識を習得する必要がありますので、その辺りはご自身で判断してください。

実際に借地権に関して争い事が生じてしまっているという方も、より多くの知識を必要とするでしょう。場合によっては法律の専門家に相談されたほうが良い場合もあります。借地権に関しては素人とプロの知識の差が非常に大きいです。ムリして自分の力のみで解決をしようとはしないでください。

今回は借地権制定の歴史の流れから記事を書かせていただきました。法律は「その法律はなぜ出来上がったのか」「その法律は誰を守ろうとしているのか」を知ることが深い理解への一番の近道です

この記事をお読みいただき、少しでもそのことを理解していただけると嬉しいです

最後までお読み頂きましてありがとうございました。


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