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2017.11.08   2018.04.06

重要事項説明書って作成者次第で内容がバラバラなの知ってます?

重要事項説明書

重要事項説明書(以下「重説」)は、不動産取引において、宅地建物取引士(以下「取引士」)が取引の相手方に

 

「本物件の内容は〇〇です」

「本物件には〇〇の制限があります」

「本物件には〇〇の問題があります」

「取引条件は〇〇です」

 

などを説明するための書面です。最終的には取引士が記名捺印をし、内容にミスがあった場合には記名捺印をした取引士が責任を負う事になります。取引の相手方にとっても取引士にとっても非常に重要な書面です。決してミスが許されてはいけないものになります。

 

参考:不動産適正取引推進機構「重要事項説明書

 

この重説、宅地建物取引業法によって大まかな記載内容は決められています(宅地建物取引業法第35条。以下「35条」)。インターネットで「重説 雛形」と検索をすれば、宅建協会さんなどがその記載内容に沿った重説の雛形を提供さしています。一般的な重説の作成は、その雛形に様々な情報を加えていく作業になります・普通に考えれば、それほど作成者の個性が出てこない文章になるはずです。

 

参考:WIKIBOOKS「宅地建物取引業法第35条

 

しかし、完成した重説は「個性出まくり」のものになることが多いです。つまり「作成者によって記載内容が異なる」のです。重説は不動産取引を行う前に取引の相手方が最低限は知っておくべき内容をまとめたものです。言い換えれば、取引相手が不測の損害を被らないようにすることが本来の狙いです。そんな超重要な重説の記載内容が作成者によってバラバラなのです。これは見逃せません。今から私がその原因を突き止めます。

目次

1.宅地建物取引士の能力により差が生じてしまう

宅地建物取引士としての能力の差

 

重説の記載内容の差は「取引士の能力」が大きく影響します。重説を作成するためには、まず様々な調査をする必要があります。現地調査・役所調査・法務局調査などなど。これがまず難しい。私もまだ経験が浅い時は役所や法務局で調査えおしているものの、自分のしている調査が何のためになるのかが分からないこともしばしばありました。

 

 

基本的に重説の作成は1人の取引士が全て行います。当然、作成後に同僚なり上司なりがダブルチェックをすることもありますが、実際に調査した人間と書面を見ながら確認をする人間との当該物件に関する知識量は歴然です。完成した重説を根拠となった資料を基に確認をしたとしても、どこまで深く確認できるかは疑問です。

 

 

結局は取引士が1人で責任をもって作成をしなければいけないのです。ということは、重説の記載内容はその取引士がどの程度の能力があるかに依ってしまうのです。このことが正しいか間違っているかを言っているわけではありません。重説の内容をどこまで深く掘り下げられるか、どこまで内容の精度を上げられるかは取引士個々人の能力が大きく影響をする、という事を言いたいだけなのでご了承下さい。

2.取引の相手方の目的によって記載内容が変わる

取引の相手方によって記載内容が異なる

 

重説は基本的には第35条で列挙されている事項に関する内容を記載します。宅建協会などが提供している重説の雛型は、この第35条に従って作成をされているので、その雛形を埋めていけば重説は完成します。

 

 

しかし、重説の目的は「契約前に取引上重要な事項を相手に知らせ、不測の損害を被ることを防止すること」です。相手方の不動産取引の目的を考慮せず、第35条に沿った内容だけの重説を作成することに何の意味があるのでしょうか。例えば、中古戸建を購入する人でも「そのまま利用する」「いずれ建て替える」という異なる考え方があることは容易に想像できます。

 

 

このように、重説の内容は取引の相手方の目的次第で変わるのです。当然調査すべき内容も異なってきます。第35条に例示されているものを記載すれば確かに法の趣旨には反しません。しかし、そのことによって取引相手に不足の損害が生じるようなことがあってはなりません。取引相手に必要であり取引士としても容易に知り得る内容については当然重説に記載する必要があります。第35条は重説における必要最小限の説明内容を列挙しているに過ぎないのです。このように考えると、重説とはそもそも柔軟性を持った書面なのかもしれませんね。

3.最後の砦である裁判所が重説の相対性を認めている

 

重説に関する裁判所の判断

 

「重説の相対性を認めている」というよりは、むしろ「重説の良し悪しを判断する一律の基準を示すことが不可能」と言った方が正解かもしれません。しかし、これは裁判所の能力の問題ではありません。先ほども述べましたが、重説は取引の相手方によって記載内容が異なります。当事者がその取引において達成したい目的によっても重説の内容は変わってきます。

 

 

過去に裁判所が述べたことをザックリ言うと、

 

 

高度に専門的な知識が要求される事項は説明不要(建築関係など)

当事者から説明を受けていない事項は説明不要(過去に自殺があったなど)

取引士の一般的な知識で分かる事項、及び取引士の専門外でも容易に分かる事項は説明必要

 

 

「当事者から説明を受けていない事項」は明確で一律な基準として考えられますが、他の「高度に専門的」「一般的な知識」「容易に分かる事項」などは解釈の余地を含んでいる表現です。取引士の能力及び取引相手の目的など俗人的な要素を考慮する必要がありますので、これらの表現にとどめることが限界であったのでしょう。

 

 

この事が良い事なのか間違っている事なのかは正直分かりません。様々な要素を検討して作成される重説の記載内容には多分に解釈の余地を残しておくべきです。他方、言い方は悪いですがその「曖昧さ」が重説の記載ミスであったり不記載を誘発し、トラブルを引き起こしていることも事実です。非常に難しい問題です。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか。

 

重ね重ね申し上げますが、私は重説の記載内容が作成者によってバラバラであることを否定しているわけではありません。むしろそうあって然るべきと考えています。

 

  • 作成者の能力
  • 取引相手の目的
  • 裁判所の考え方

 

以上を考え合わせれば、一律同じ基準で重説を作成することはそもそも不可能です。昨今、重説の効率化がさけばれていますが、これは決して記載内容の一律化を図るものではありません。重説の作成を1人からチームによる分業に変化させようという試みです。

 

 

最後に1つ言わせてください。

 

 

「不動産はこの世に同じものは1つもない。それは重説もこの世に全く同じものは存在しないことを意味する」

 

 

今日は絶好調のようです。

 

 

本日もお読み頂きましてありがとうございました。


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