「不動産特定共同事業」とは、投資家から資金を集めて実物不動産に投資をしその不動産から生まれる収益を投資家に分配する事業の事です。
この不動産特定共同事業において、投資家を保護するために制定された法律が「不動産特定共同事業法」です。平成7年4月に施行されました。
具体的には、
- 国土交通大臣もしくは都道府県知事による許可制
- 投資家に対する情報開示義務
- 監督官庁への報告義務
が事業者へ課せられています。許可をもらうには「資本金額」「財務内容」「業務管理者の設置」などの厳しい要件を満たす必要があります。この要件が厳しいので、大手不動産業者しか許可が取れない状況になってました。
しかしあまりにも要件が厳しすぎた結果、不動産特定共同事業を行える事業者、特に地方の中小不動産事業者の参入がほとんどありませんでした。またクラウドファンディングなどの新たな資金調達方法にも全く対応できていませんでした。
このような問題を解決するために、平成29年12月改正法が施行されます。その改正法の基本的な考え方は従来の法律からの規制緩和です。
改正点其の①:適格特例投資家限定事業の創設
不動産投資のプロを相手にする事業に関しては要件を緩和しました。
「適格特例投資家限定事業」と言われても困りますよね。事業の範囲がとても狭い、ということはなんとなく分かりますが。この文章が言いたいことは、「不動産投資のプロ中のプロのみが参加する事業」に関しては要件を緩和します、という事です。従来は許可が必要であった事業が届出だけで足りることになりました。規制緩和の一環です。
改正点其の②:小規模不動産特定共同事業の創設
中小事業者の不動産特定共同事業への参加を可能にしました。
従来は許可の要件が厳しすぎて大手不動産関連業者しか事業へ参加が出来ませんでした。下記の参考資料をご覧いただければお分かりいただけるかと思いますが、大手不動産関連会社ばかりです。
参考:国土交通省「不動産特定共同事業者許可一覧」
小規模不動産特定共同事業においては許可制から登録制へと要件を緩和しました。これにより地方の中小事業者も不動産特定共同事業に参加できる可能性が高まりました。しかし登録制と言っても許可制の時と同程度の要件を改正法は求めています。どこまでの実効性があるのかどうかは、改正法施工後の状況をみてみないと分かりませんn。
改正点其の③:新たな資金調達手法への対応
主にクラウドファンディングにより調達される資金の活用を念頭に置いています。
旧法では、事業者と投資家の間で交付される書面に関してはインターネットを利用した交付方法が認められていませんでした。あくまで紙媒体での書面の交付が必要でした。確かに紙媒体の書面が残っていたほうが安心しますよね。昭和の考え方なのかもしれませんが。。。
しかし最近登場したクラウドファンディングは、基本的にはインターネット上で完結してしまう資金調達手段です。インターネットサイトを通して資金を募集し、投資家を決定し、お金を調達します。紙媒体の書面を残すタイミングがありません。そもそも紙媒体の書面を残す不効率性を排除するためにクラウドファンディングが登場したと言っても過言ではありません。
それにしても腰の重い法律がここまで早く新たな資金調達方法に対応したことに私は驚いています。その裏には、クラウドファンディングにより調達される資金を空き家などの不動産の活性化に活用したい、という国の考えもあるようです。それほど増加する空き家を問題視しているということです。