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2017.11.30   2020.07.12

農地が都市部の地価暴落を引き起こす!生産緑地の2022年問題。

宅地価格の暴落

生産緑地の2022年問題をご存知でしょうか。

現在、生産緑地に指定されている農地の大半(約8割)が、2022年に生産緑地の指定から解除されるかもしれない、という問題です。生産緑地の指定から解除されると何が問題なのでしょうか。それは大量の宅地が一度に不動産市場に供給されることにより宅地の価格が急落するのではないか、という事です。

関連記事:生産緑地とは何か?3分で分かる不動産用語集

生産緑地に指定されると、固定資産税の減免相続税の納税猶予の恩恵を受けられる反面、農地としての管理義務が発生します。しかし、生産緑地指定後30年が経過した場合には、その生産緑地が存在する市町村へ「生産緑地を買い取って欲しい!」という申し出が可能になります。この買取申し出を行ったにも関わらず市町村が買取を拒否した場合には、農地としての管理義務は解除されます

管理義務が解除された生産緑地は農地と同様の転用手続きを経ることによって宅地へ転用できるようになります。市街化区域内に存在している農地を宅地に転用する場合、手続きはそれほど難しくはありません。そうであれば、「宅地へ転用し有効利用しよう」と考えるのは通常の考えです。私でもそうします。

関連記事:市街化区域と市街化調整区域とは何か?3分で分かる不動産用語集

 

もちろん、宅地に転用された場合は固定資産税の減免や相続税の納税猶予の恩恵は受けられなくなります。宅地に転用されたので当然と言えば当然です。しかし、そうなると今度は上記税金の支払いに困窮し宅地を手放すという動きが生じる可能性が高まります。

このような一連の動きの中で「農地から宅地への転用が急増し市場に宅地が大量供給されることによって、宅地の価格が暴落するのではないか」という懸念が2022年問題なのです。

1.2022年問題の影響が一番大きいのは「首都圏」であり「東京都23区外」である

国土交通省の発表した平成27年「土地計画区域、市街化区域、地域区域の決定状況

生産緑地の面積
13,442ha(40,662,050坪)
地区数
62,473地区

という数字になっています。

生産緑地とはそもそも3大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏)の農地を想定して制度化されていますので、3大都市圏に生産緑地が集中しています。その中でも特に首都圏に存在する生産緑地が特に多いです。

首都圏における生産緑地の面積
東京都 3,296.4ha 9,971,610坪
神奈川県 1,380.2ha 4,175,105坪
千葉県 1,175.3ha 3,555,282.5坪
埼玉県 1,792.8ha 5,421,707.5坪
首都圏合計 7,644.7ha 23,123,705坪

この数字からも分かるように、全生産緑地の約57%は首都圏に存在しています。また東京都に限っていえば、

東京都23区内の生産緑地面積
463.9ha(1,403,297.5坪)
東京都23区外の生産緑地面積
2,832.5ha(8,568,312.5坪

23区内よりも23区外の方が生産緑地の面積は圧倒的に大きいです。ここまでに述べてきたことをまとめると、生産緑地の2022年問題において影響を受けるのは「首都圏」であり、その中でも東京都23区外が最も影響を受ける地域である、という推論が

以上の事から、生産緑地の2022年問題において最も影響が大きいのは「首都圏」であり、さらに地域を絞るとすれば「東京の郊外」である、という事が容易に推測できます。

2.改正生産緑地法が施行された1992年はどうだったのか?

実は以前にも農地が大量に宅地に転用されたことがありました、それは1992年に生産緑地法が改正された前後です。改正生産緑地法は農地を「保全する農地」と「宅地に転用する農地」に明確に区分しました。保全する農地は生産緑地として様々な恩恵を受けられましたが、転用されるべき農地は宅地と同等に扱われました。それ故、不動産市場に農地から転用された宅地が大量供給されたのです。

宅地が市場に大量供給された」というよりも「農地から宅地に転用した土地の所有者が賃貸住宅を大量に建設した」という表現の方が適切かもしれません。もちろん、供給された宅地を不動産会社が購入し、賃貸住宅の建設ラッシュも起こりました。どちらにしろ、大量の賃貸住宅が建設されたことは間違いありません。

ではなぜ大量の賃貸住宅が建設されたのでしょうか。土地の有効活用の一環なのでしょうか。もちろん、土地の有効活用という理由もありますが、実は別の理由も存在していたのです。

その理由とは固定資産税と密接な関係があります。 生産緑地に指定されない農地には宅地と同程度の固定資産税が課されます。しかし、宅地に住宅を建設すれば土地の固定資産税が最大で1/6になる「住宅用地の特例」という制度があるのです。つまり、土地を更地のまま放っておくより、賃貸住宅を建設したほうが、固定資産税が安くなる。この制度の存在が大量の賃貸住宅を生み出したのです。節税の為の賃貸住宅ってとこですかね。

大量の賃貸住宅が供給されれば供給過剰となります。供給過剰となれば必然的に賃料が下落します。1992年の改正生産緑地法が施行された際には既に不動産バブルが崩壊していましたので宅地価格が下落しましたが、それと合わせて賃貸住宅の賃料の下落という現象が起きたのです。

土地の有効活用の一環としての賃貸マンション建設

行政側としては慢性的な住宅不足を解消するために固定資産税の減額制度を制定したはずなのに。住宅が供給過剰の今、この制度が見直される可能性もあるのでは!?

  • 宅地価格の下落
  • 賃貸住宅の賃料の下落

上記2つが改正生産緑地法によってもたらされたのです。

3.行政側は2022年問題を見据えた上で方針を転換している

1992年に生産緑地の指定を受けた約1万haの土地が、2022年に生産緑地解除の期限を迎えます。約1万haといえば、3,025万坪です。

例えば、平成28年度の全国における土地取引の総面積は約15.4万haであり、坪に換算すると約465,850,000坪になります。全国の総土地取引面積の約6.6%の土地が特定の地域で一度に宅地に転用される可能性があるのです。転用された宅地が市場に大量に供給されれば、間違いなく宅地価格は暴落するでしょう。

行政側としてもこのゆゆしき事態に事前策を打つ必要があります。行政はまず「都市農業振興基本法」を2015年に制定し、生産緑地以外の市街化区域内にある農地の宅地転用の方針を転換しました。「生産緑地以外の農地も保全すべき」という方針が当該法律には盛り込まれています。都市農業を都市における重要産業と位置付けたのです。「農地の宅地転用は出来る限り止めて欲しい」という行政側の本心が見え隠れしますね。

農地の宅地転用は出来る限り抑えたい!?

街を歩いていて「なぜこんなところに畑が?」と思われたものは生産緑地である可能性が高いです。「もったいないな」と思ったこともありましたが、税金における様々な恩恵が受けられるからそのままだったのですね。

行政側としてもこのゆゆしき事態に事前策を打つ必要があります。行政はまず「都市農業振興基本法」を2015年に制定し、生産緑地以外の市街化区域内にある農地の宅地転用の方針を転換しました。「生産緑地以外の農地も保全すべき」という方針が当該法律には盛り込まれています。都市農業を都市における重要産業と位置付けたのです。「農地の宅地転用は出来る限り止めて欲しい」という行政側の本心が見え隠れしますね。

  また、生産緑地法の改正により

面積要件の緩和
500㎡⇒300㎡
建築規制の緩和
建築物はビニールハウスや資材置き場などのみ⇒農家レストランや販売施設も可

などが盛り込まれました。より生産緑地の指定が簡易になり、また生産緑地を利用しやすいようになっています。生産緑地に指定されているか否かに関わらず、都市にある農地は保全するという行政側の意図が明確に読み取れます。2022年問題解決への並々ならぬ意欲を感じとることが出来ますね。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか。

2017年11月現在、賃貸住宅の需給バランスが崩れ始めています。東京都心部や地方中核都市では今後も人口流入が続きますので需給バランスは均衡を保っていますが、その他の地域における賃貸住宅は超供給過剰な状況と言えるでしょう。このような状況において一時的にしかも大量に賃貸住宅が供給されたらどうなるでしょうか。カンタンに想像できますね。

土地の所有者が節税の為に賃貸住宅を建設するのであれば理解できます。しかし、このような賃貸住宅供給過剰の現状において不動産市場に宅地が大量に供給されたとしても、果たして不動産会社は宅地を購入するのでしょうか。誰よりも現状を把握しているはずの不動産会社がそのような危険な橋を渡るとは私には到底思えません。

東京都心部の宅地であれば不動産会社は購入するでしょう。まだまだ人口は増加傾向ですから。しかし、生産緑地の大多数は郊外です。既に賃貸住宅が飽和状態の地域です。私なら買いません。2022年にどのような現象が起こるのか、興味もありますが恐怖もあります。

最後までお読み頂きましてありがとうございました。


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