国土交通省は2017年11月10日、マンションなどの共同住宅における宅配ボックス設置部分は容積率規制の対象外とする運用を明確にするため、特定行政庁等に対し通知を出しました。
「宅配ボックスの設置面積が容積率に算入されるかどうかの基準を明確にします」という事です。「共同住宅の共用廊下に設置されている宅配ボックスは共用廊下と同様に容積率規制の対象外です」とも言っています。
さらに、共同住宅以外の建築物に設置されている宅配ボックスに関しても現状調査を行い、更なる施策を講じることを検討する、とも言っています。つまり「共同住宅以外の宅配ボックス設置部分も容積率の規制対象外にするかどうかを検討する」という事を言っているのでしょう。私にはそう聞こえますが、みなさんはどうでしょうか。
目次
1.国土交通省は宅配ボックスの設置が社会問題を解決すると見ている
国土交通省はこの宅配ボックス設置面積の容積率不算入の施策の趣旨を「再配達の減少」と言っています。全体の配達物の約2割が再配達となっていますが、この再配達が様々な問題を引き起こします。その筆頭は環境問題です。
例えば、配達は通常トラックなどの車で行われますが、車が動けばCO₂が排出されます。CO₂が排出されない電気自動車などが徐々に増えてきていますが、まだまだCO₂を削減するには至っていません。再配達によって年間でCO₂が42万トンも排出されている、という統計もあります。この42万トン、JR山手線の内側の面積の約2.5倍のスギ林の年間吸収量になります。信じられないくらいの量ですよね。
運送業界の問題も大きいです。そもそも運送業界は慢性的な人手不足が続いています。長時間労働及び低賃金という労働環境が敬遠されている理由です。このような状況下で火に油を注ぐような再配達。1年で約2億時間、10万人分の労働力が再配達に割かれています。
国土交通省はこのような社会問題を解決するものとして宅配ボックスを最重要視しています。そしてその宅配ボックスの設置を後押しするために容積率規制の対象外であることを運用上明確にしました。
2.問題が起きないと動かないNippon
私が現在住んでいる賃貸マンションには宅配ボックスが設置されています。小さめの荷物が入るボックスが8個、大きめの荷物が入るボックスが2個です。やっぱり便利です。昨日も知らない携帯電話番号から電話があり、出てみたところ「○○運輸ですけど、ご不在のようなのでお届けのお荷物を宅配ボックスの中にいれておいて良いですか?」という電話がありました。「当然です。入れておいてください」と返答しました。
上記のように私にも宅配業者さんにもメリット満載の宅配ボックス、設置しない理由はありません。そもそもマンションなどの共用廊下の面積は容積率に算入されません。その共用廊下を有効利用した宅配ボックスの面積もも当然容積率への不算入が当たり前だと思っていましたが、実際の運用上はそうでもなかったようです。
今頃、「共用廊下と一体となった宅配ボックスの設置部分の面積については、容積率規制の対象外とする運用を明確化するために特定行政庁に対して通知を出します」と言われても「………」となります。「様々な問題が噴出したからようやく重い腰を上げたか」と思われても仕方ありませんよね。
3.宅配ボックスの設置を義務化しても良いのでは?
Panasonicさんが日本郵便さん及びヤマト運輸さん協力のもと、福井県あらわ市で行った宅配ボックスの実証実験によると、宅配ボックスを設置したことによって再配達率が
49%⇒8%
に減少しました。
この結果、どう思われますか。「凄い」と思われる方がほとんどだと思います。しかし、私は当たり前の結果だと思っています。宅配ボックスを設置すれば、再配達する必要性はほとんどありません。
ただし、私のマンションもそうですが宅配ボックスの主流は電力を必要としない常温のものが主流です。つまり冷蔵冷凍商品は宅配ボックスを利用できません。冷蔵冷凍用の宅配ボックスも徐々に増えてきているようですが、これが一般的になれば非常に便利になりますね。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。
あくまで私見ですが、宅配ボックスの設置は確実に再配達の減少に寄与すると考えています。つまり再配達が引き起こす労働問題や環境問題を解決する一助に宅配ボックスの設置はなり得るのです。日本郵便さんとヤマト運輸さんの実証実験の結果を見ればおのずと分かって頂けると思います。
そしてその宅配ボックスを設置を加速させるための宅配ボックス設置面積の容積率不算入は間違いなく必要な措置です。この点に関しては行政が動かなくては解決しません。これと言ったデメリットが見当たらない宅配ボックス設置面積の容積率不算入は、止まることなくドンドンと勧めて頂きたいと思います。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。