• このエントリーをはてなブックマークに追加
2018.01.01   2020.06.27

敷金はまだ理解できる。礼金は理解できない。

「&nbsp」って何だ?

敷金をご存知でしょうか。「部屋などの不動産を借りる場合に、何かあった時の為に入居の際にオーナーに預けておくお金」の事です。オーナー側から見れば、賃貸借契約上の債務を担保するためのお金です。「家賃の支払いが無い」「部屋をひどく傷つけてしまった」ような場合には、その費用は敷金から充当される場合があります。何もない場合には敷金は使用されませんので、賃貸借契約の終了とともに借主に返還されます。

 

 

他方、礼金とは何でしょうか。一言で言えば「お礼」です。「部屋を貸してくれてありがとうございます」という誠意を示すための金銭です。感謝の言葉よりもお金という事です。この世の縮図を表しています(笑)。

礼金とは、古くは下宿する子供の為に親が大家さんに「子供をお願いします」という気持ちを込めて贈っていた金銭が由来です。確かにそれなら理解できます。私も子を持つ親ですので、子供がお世話になる方には出来る限りのお礼がしたいという親心は納得できます。

 

 

私が納得できないのは、その慣習のみが形を変え現代風に生まれ変わってしまったこと。地域によっては礼金が全くない場所も存在しますが、「部屋を借りたら家賃の他に敷金・礼金」が当たり前になっている事です。

目次

1.人口減少・賃貸住宅過剰供給時代に礼金はふさわしくない

確かに昔の日本は長らく住宅不足の時代が続いていました。戦後の住宅不足を補うために政府が様々な施策を実施したのも事実です。そのような時代であれば、「家を貸してくれてありがとうございます」という意味の礼金も難なく理解できます。むしろ礼金の額により誰を入居させるのかを決めていても不思議ではありません。残念ながらその時代に生きていませんので、詳しい事までは分かりませんが。。。

 

 

時は流れ現在の日本は「人口減少」「賃貸住宅過剰供給」の真っただ中です。言い方が悪いかもしれませんが、貸し手よりも借り手の方が立場が強いのは明白です。「部屋を貸していただきありがとうございます」よりも「部屋を借りてくれてありがとうございます」の方がしっくりくるのは私だけでしょうか。勘違いしないで頂きたいのは、借り手の立場が強いからと言って「借りて欲しいなら金をくれ!」などは絶対NGです。犯罪になりかねませんので。

 

 

礼金無し物件も最近は多くなりました。そうなると更に礼金あり物件の立場は弱くなります。候補を2つまで絞った物件において、一方は礼金無し、他方は礼金ありだとしたらどちらを選ぶかは明白です。仲介手数料すら無料になり始めたこのご時世。礼金などを取っていたら確実に時代遅れになりますよ。

2.礼金無しでも問題ナシ

敷金には「賃貸借契約の担保としての性質がある」と先ほど述べました。賃貸中にもし何かあった場合は、担保を使う事も出来るのです。つまり、初期費用として敷金を支払っておけば、退去時にクリーニングや原状回復を行わなければいけない場合でも、敷金を利用してもらう事が出来ます。もちろん、初期費用としては少し重たい負担ですが、後々の事を考えればそこまで敏感になる費用ではありません。残った金銭は返金されますし。

 

 

しかし礼金には担保も何もありません。お礼です。返ってこない金銭です。無ければ御の字ですし、少なければ少ないだけ助かります。例えば、引っ越しをした際には隣人の方にお菓子などをもってご挨拶に伺いますよね。それと同様にオーナーの方にちょっと豪華なお菓子を持ってご挨拶に伺う程度であれば、私は喜んでします。名刺代わりのご挨拶と今後何かあった時の為のリスクヘッジの意味で(笑)。そこでお金を要求される意味が私には分かりません。

 

 

この礼金、オーナーが是が非でも徴収したいと考えている場合もありますが、その他の理由も存在しているのをご存知ですか。オーナーとしては礼金無しで募集してもOKだけど、仲介に入っている不動産会社がどうしても礼金を取ろうとする場合があります。なぜだか分かりますか?

3.礼金がオーナーではなく不動産会社に流れることもある

不動産会社が礼金を受け取っている場合があります。「どういう事?」と思われるかもしれませんが、こういう事です。

 

 

不動産会社が受け取る賃貸仲介報酬の上限は「家賃の1か月分」です。オーナーと借主を結びつける間に不動産会社が何社入っていようが「家賃の1か月分」が上限です。つまり、複数社いる場合にはこの家賃の1か月分を分けなければいけないのです。

 

 

そのような少額の報酬では満足できない不動産会社が少なからず存在します。そこで不動産会社は「広告費を下さい」と言ってきます。この広告費が曲者です。家賃の1か月分の上限に当てはめなくても良いのです。いくら貰っても良いのです。「広告費を頂ければ、お宅の物件を優先的に広告します」という文句のもと、広告費は徴収されます。この広告費に礼金が充当されているケースが多々あります。

 

 

つまり、オーナーは「礼金は0でもいいから空室を無くしたい!」と思っていても、不動産会社が自分の取り分が増えるので「礼金は2ヶ月で設定しましょう。そして広告費として弊社に下さい」という事が日常茶飯事なのです。こうなってしまうとオーナーは非常に困ります。空室は埋めたいけど、礼金を0とすると不動産会社の動いてくれなくなってしまう…。悪しき慣習ですが、これが現実なのです。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか。

 

 

今回は礼金について考察してきましたが、やはり「お礼」として「家賃の〇か月分」も支払う事には納得できません。賃貸住宅供給過剰のこのご時世、このような慣習は早々に撤廃すべきです。そもそも、一般消費者も目が肥えてきています。礼金が必要な賃貸住宅など今後は選ばれなくなるでしょう。

 

 

それにしても、礼金が不動産会社に流れる場合がある事を皆さんはどう思いますか。ある意味「法律の抜け道」を巧みに利用した報酬倍増方法です。「礼金を取ると借主が現れない、礼金を0にすると不動産会社がヤル気を出さない」と、一番の被害者は板挟みであるオーナーなのかもしれません。

 

 

礼金を無くすための一番の近道は、慣習の撤廃ではなく不動産会社の意識改革なのかもしれませんね。

 

 

最後までお読みいただきましてありがとうございました。


  目次に戻る

  • このエントリーをはてなブックマークに追加