不動産投資による所得がある個人の方は確定申告をする必要があります。不動産投資による所得というと少し難しいですが、ようはアパートやマンションからの賃料収入の事です。不動産投資から得られた収入に応じた税金を支払う手続きが確定申告です。自ら進んで税金を支払う手続きをするのです。皆さん、進んで確定申告をしましょう。
また、不動産所得による確定申告とは別ですが、住宅ローンを利用してマイホームを購入した場合に、
住宅ローン控除(住宅ローン減税)
を利用する場合にも確定申告が必要になります。住宅ローン控除に関する確定申告については下記記事をご参照下さい。
今回は、不動産投資により賃料収入がある場合についての確定申告について触れていきたいと思います。「不動産所得とは何か?」「白色申告と青色申告の違い」が主なテーマになります。不動産所得は、
不動産所得=不動産経営に係る収入―不動産経営に係る費用
上記となりますので、まずは不動産経営に係る収入とはどのようなものかを考えていきましょう。
1.不動産経営に係る収入
不動産経営に係る収入には、
不動産経営に係る収入 | ||
---|---|---|
収入区分 | 不動産経営に係る収入か否か | 備考 |
賃料 | 〇 | ― |
共益費 | 〇 | ― |
敷金 | ✖ | 預り金としての取り扱いになる為 |
礼金 | 〇 | ― |
更新料 | 〇 | ― |
名義書換料 | 〇 | ― |
主に上記のような種類があります。不動産所得を計算するための不動産経営に係る収入に当たるかどうかは、
返金する必要があるのか否か
が判断基準となります。分かりやすいですね。一般論としても、返金する必要のあるお金を収入に加えることはしません。難しく考えずに「返金しないものは〇」「返金するものは✖」と覚えてください。
不動産経営に係る収入にあたる場合にも、「収入として計上する日」については十分に注意をしてください。一般的には契約書に記載されている期日が収入としての計上日になりますが、契約書に記載のない場合もあります。その場合は実際の支払日が収入の計上日となります。
賃料に関しては契約書上で支払日が定められているにも関わらず滞納などで支払われない場合があります。その際には、賃料は契約書上で定められた支払日で収入を計上しつつ「未収賃料」という取り扱いになりますので、ご注意ください。
2.不動産経営に係る費用
まずは費用の一覧表をご覧ください。
不動産経営に係る費用 | ||
---|---|---|
費用区分 | 不動産経営に係る費用か否か | 備考 |
管理費 | 〇 | ― |
修繕積立金 | 〇 | ― |
不動産取得税 | 〇 | ― |
固定資産税 | 〇 | ― |
減価償却費 | 〇 | ― |
修繕費 | △ | 維持管理の為の修繕費〇 建物価値の増加。耐用期間の延長などの工事は✖ (修繕費ではなく固定資産税となる) |
火災保険や地震保険などの保険料 | 〇 | ― |
借入金の元本 | ✖ | ― |
借入金の金利 | 〇 | - |
クリーニング費 | 〇 | ― |
仲介手数料 | 〇 | ― |
広告費 | 〇 | ― |
費用の一覧表の中に「減価償却費」というものが登場しましたが、費用の中でも特に重要度の高い項目になります。詳しくは下記の記事をご覧ください。
特に注意していただきたいのは、借入金の元本の返済は不動産経営に係る費用にはならない、という点です。あくまで金利の支払いのみが経費になります。
3.白色申告と青色申告
大前提として、給与所得や年金以外に不動産所得がある場合には確定申告をしなければいけません。そして、その確定申告の方法として白色申告と青色申告があります。この2つは選択制なのでご自身の好きな方を選べるわけですが、現状では間違いなく青色申告を選択したほうが良いです。後ほどその理由を述べます。また、青色申告の中にはさらに2種類の申告方法がありますので、申告方法自体は全部で3種類あることになります。
確定申告の種類 | |||
---|---|---|---|
申告区分 | 事業的規模 | 青色申告特別控除 | 青色事業専従者給与 ※② |
白色申告 | ― | ― | ✖ |
青色申告 | ― | 10万円 | ✖ |
5棟10室以上 ※① |
65万円 | 〇 |
※「5棟10室以上」とは「戸建てを5棟以上」若しくは「区分所有建物を10室以上」所有していることを指しています。
※「青色事業専従者給与」とは、不動産経営を補助してくれた親族への給与の支払いを必要経費として計上できる制度です。
平成26年1月より白色申告についても帳簿の記帳及び領収書などの資料の保管が義務化されました。これにより、白色申告と青色申告の手間が同じになりました。節税という面では白色申告より青色申告の方が有利です。65万円の特別控除額の適用を受けるには「5棟10室以上」という要件が存在しますが、10万円の特別控除を受けるための要件はありません。「所得税の青色申告承認申請書」を提出するだけですので、この機会に青色申告にしてみてはいかがでしょうか。
4.確定申告の必要書類
確定申告は例年3月15日までに必要書類を集め提出する必要があります。今回は青色申告を行う場合に必要な資料を下記に記載します。
不動産所得がある場合の確定申告に必要な書類一覧 | ||
---|---|---|
必要書類 | 入手場所 | 備考 |
確定申告書B | 税務署 | 国税庁のHPからも 入手可。 |
決算書不動産用(青色申告) | 税務署 | ― |
賃貸借契約書 | 自己所有 | 賃借人の情報が分かるもの |
収入金額が分かる資料 | 自己所有 | 通帳、現金出納帳など |
費用金額が分かる資料 | 自己所有 | 通帳、請求書、領収書、借入金の支払い明細など |
主に収入と費用が確認できる書類が必要になります。領収書などは捨てずに取っておくようにして下さい。
備考.その他の注意点
他の所得との損益通算
不動産所得で赤字が生じた場合、他の所得(給与所得や配当所得)と損益通算をすることが可能です。但し、土地建物を取得するための借入金の金利に相当する費用は損益通算の対象外となります。
消費税
アパートやマンションなどの居住用不動産からの収入には消費税は不要ですが、それ以外の用途の不動産(オフィスや商業施設など)から生じる収入には消費税が必要です。
6.まとめ
いかがでしたでしょうか。
何よりもまず私が言いたいことは、「不動産経営をしている方は青色申告をしましょう」という事です。それだけで10万円の特別控除が受けられます。青色申告の中でも事業的規模が選択できるようになれば、「65万円の特別控除+青色事業専従者給与」の適用を受けることが可能になります。ぜひご活用下さい。
その他の注意点としては、経費の中には必要経費として認められないものがある、という事です。この点は初めて確定申告をされる方には少し難しいかもしれません。慣れるまでは税理士さん等に相談をしながら確定申告書を作成されても良いでしょう。慣れればご自身で出来るようになりますので、ご安心ください。
最後までお読み頂きましてありがとうございました。