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2017.12.16   2020.07.12

歴史から紐解く!住宅ローンとアパートローンの金利の違い

住宅ローンの金利

住宅ローン金利:1%台

アパートローン金利:2~7%くらい

 

なんでこんなに差があるのでしょうか。そしてアパートローンの中でも全然金利が違うし…。金利って1%でも総返済額にとんでもない違いが出るのに、5%も違ったら東京ドーム〇個分の違いが生じます。ようはビックリするほど違うという事が言いたかっただけです。

 

 

なぜこんなにも金利が違うのでしょうか。この事についてインターネット上で語られている理由の第1位は「住宅ローンは『人』へのローン、アパートローンは『不動産』へのローン、だから金利が違う」です。これで分かったら天才を通り越してヤバい人ですよ。私には読む事しか出来ませんでした。

 

 

私が言いたいのは、「どっちのローンでも抵当権を設定して物件を担保に取るんだから金利は同じでいいじゃん!」という事です。どうせ必要以上には貸してくれないんだから。

まさか、

 

「住宅ローンは収益を生まないけど、アパートローンは収益を生むからちょっと金利を高めに設定しても大丈夫っしょ!」

 

的な考え方で金利が違うんじゃないでしょうね!?

 

天下の金融機関さんがこんな理不尽極まりない考え方をするはずありません。ちゃんとした理由があるのです。今回はその理由を私なりに考えていきたいと思います。

目次

1.住宅ローンの歴史

住宅ローンを提供している金融機関の中には、国土交通省住宅局と財務省が管轄している「住宅金融支援機構」があります。「フラット35」という住宅ローンを提供している金融機関と言った方が分かりやすいかもしれません。いずれにしろ、住宅ローンには行政側の意向が少なからず反映されています。

 

 

では行政側の意向とは何か。それは「できる限り金利を低く設定して、国民が住宅を購入できるようにする」という事です。高度経済成長期には住宅を購入したい人口は増えましたが、現金では買えませんでした。そこで高金利のローンに手を出してしまい返済不能に陥ってしまうという事が社会問題になっていました。そのような経緯を踏まえて行政側が低金利の住宅ローンを始めたのです。それが現在のフラット35に繋がっているのです。

 

 

確かに住宅ローンは物件の内容如何ではなく給与所得の裏付けを基に住宅ローン融資自体の可否及び金額が決定されます。給与所得という安定した収入を裏付けとしているので金利が低い、という理由の分からなくもありません。しかし、やはり低金利である理由は「歴史的経緯を踏まえた行政側の政策」という側面が強いのではないでしょうか。

2.アパートローンの歴史

1970年代の高度経済成長期から土地の価格は上昇の一途を辿りました。金融機関も「土地神話」の名のもとにバンバン融資を実行しました。土地の価格は上がり続けるので、土地を担保に取っておけば怖いものはありません。大した審査もせず貸し出し続けたのです。しかし1990年代に不動産バブルが弾けた途端不良債権の山。金融機関は総じて痛い目をみました。

 

 

バブル崩壊によって土地を含む不動産価格は底値まで下がりました。底値まで下がったことによって、また不動産を買い始める企業が徐々に登場しました。不動産ファンドなど莫大な資金力を背景に不動産をドンドン買い漁りました。金融機関は以前痛い目を見たにも関わらず、また不動産投資に対して大規模な融資を実行し始めたのです。今度は不動産からの収入を背景に融資の審査をしましたので、以前の間違いは繰り返さないはずでした。しかし、リーマンショックによる世界的な金融恐慌。案の定、不動産価格は下落し金融機関は再び痛い目をみたのです。

 

 

金融機関としてはさすがに3回目の失敗はあり得ません。融資には慎重にならざるを得ません。なのでリスクヘッジの為に高い金利を設定しているのです。またアパートローンには行政側の意向がほぼ反映されませんので、金融機関の考え方で金利を設定しても問題がないわけです。住宅ローンよりも金利が高いのはもちろんの事、金融機関によって金利に大きな違いが生じているのです。

3.2つのローンの債務不履行率の差

以前、何かの記事で読みましたが(出典が分からず申し訳ありません)、

 

住宅ローンの債務不履行率:0.5%程度

アパートローンの債務不履行率:5%程度

 

と明らかな違いがあります。債務不履行率の違いはそのままリスクの違いに直結しますので、この点だけから考えても両者の金利の違いを説明するのには十分です。

 

 

住宅ローンの場合にローンを返済しなければ、抵当権を実行されてしまい住宅は無くなってしまいます、なので住宅が無くならないようにするために、ローンの債務者は一生懸命働き返済をするのです。なので債務不履行率は低く抑えられています。

 

 

他方、アパートローンを利用して購入したアパートは生活に必要不可欠かと言えばそうではありません。正直無くても問題は無いわけです。また、そもそも物件から生まれる収入をローン返済の原資としていますので、返済が厳しくなったとしても一生懸命働こうという人は少数派で大多数の人が返済を投げ出すようです。アパートローンは総じて返済金額も高額になるので、働いたところで返済できる額ではないのかもしれませんが。いづれにしてもリスクが高い融資であることには間違いありません。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか。

 

今回は住宅ローンとアパートローンの金利の違いを「それぞれの歴史的経緯」及び「債務不履行率」から考察してみました。住宅ローンの金利の低さには行政側の意向があり、またアパートローンの金利の高さには金融機関の2度にわたる失敗の教訓が生かされていると考えて頂いて良いでしょう。

 

 

そしてその金利差を決定づけるものが「債務不履行率」です。返済されるかどうか分からない融資を低金利にするなんて。慈善事業みたいなものですからね。いや、慈善事業でもこんなことはしませんね。

 

 

最後までお読みいただきましてありがとうございました。


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