• このエントリーをはてなブックマークに追加
2018.03.06   2020.07.12

これだけは押さえておこう!住宅ローン審査のポイント解説

住宅ローン審査のポイント

住宅を購入する際、多くの方が住宅ローンを利用すると思います。逆に言えば、住宅ローンが利用できるかどうかで住宅購入の可否が決まるのです。住宅ローンに申し込んでから結果が出るまでの間は心臓のドキドキが止まりません。なんせマイホームが手に入るかどうかの瀬戸際なのですから。

住宅ローンの審査は「事前審査」と「本審査」の2段階で審査されます。後ほど詳細に述べますが、事前審査では主に本人の返済能力が、本審査では事前審査の審査内容に加えて加えて物件の担保評価や健康状態なども審査されます。事前審査は住宅ローンの対象となる土地や建物の売買契約を締結する前に行う審査であり、本審査は土地や建物の売買契約を締結してから行う審査です。それぞれの審査の目的が異なっているので、事前審査に通ったからといって、本審査に通るとは限りません。

このように住宅ローンの審査は複雑です。住宅ローンを申し込む金融機関によっても審査基準はバラバラですので、一概に「○○なら住宅ローン審査は問題ナシ」という訳にはいかないのです。しかし、一般的な住宅ローン審査の流れやそのポイントはほとんど明確になっています。

そこで今回は住宅ローンにおける事前審査及び本審査のポイント、並びに少し特殊な「フラット35」を利用した場合の審査のポイントを考察していきます。

1.住宅ローン審査の流れ

まずは住宅ローン審査がどのように進んでいくのかの流れを見ていきましょう。一般的な流れは、

  1. 事前審査申込
  2. 事前審査
  3. 本審査申込
  4. 本審査
  5. 住宅ローン契約
  6. 住宅ローン実行

上記のようになります。それぞれの項目のおおよその目安期間は、

  • 事前審査申込~事前審査:1~7日程度
  • 本審査申込~本審査:2週間程度
  • 住宅ローン契約~住宅ローン実行:1か月程度

程度になります。事前審査などせず最初から本審査を行えば時間の短縮になりますが、そうもいきません。事前審査の段階で個人の返済能力、すなわち「ちゃんと返済ができるのか」を調査することによって本審査へ進むべき個人をふるいにかけます。言い方は悪いですが、本審査で無駄な労力を使わない為の審査が事前審査になります。個人としても、住宅ローンが利用できるのか否かの目星は早い段階で付けたいはずなので、事前審査はお互いにメリットがあります。

2.「返済能力」を確認する事前審査

事前審査の審査ポイントは「返済能力」、つまり「ちゃんと返済ができるのか」です。返済の怪しい人に住宅ローンを貸すほど金融機関もお人好しではありません。そしてこの「ちゃんと返済ができるのか」は、

  • 返済負担率
  • 完済時年齢
  • 借入時年齢
  • 健康状態
  • 年収
  • 勤続年数
  • 個人信用情報

上記を項目を審査します。1つずつ確認していきましょう。

返済負担率
返済負担率とは「毎年のローンの返済額が年収の何%になるのか」という事を意味しています。年収500万円の方の毎年のローン返済額が150万円の場合、返済負担率は30%になります。
例えばフラット35の場合には、
【フラット35】返済負担率基準
年収 400万円未満 400万円以上
基準(%) 30%以下 35%以下
となっています。他の金融機関においても同様の基準で審査をしている事がほとんどです。但し、家計に余裕を持たせる場合の返済負担率はもっと低く設定をする必要があります。「20~25%前後」が余裕をもてる返済負担率とされています。
完済時年齢
ほとんどの金融機関が完済時年齢を「80歳未満」と設定しています。現在の日本の企業における定年は「60~65歳」が多いですが、住宅ローンの完済時年齢とは大きな開きがあります。金融機関としても完済時年齢を「80歳未満」とはしていますが、出来れば定年までに完済してもらえる方が望ましいでしょう。年齢が若い程有利に働きます。
借入時年齢
借入時年齢に関しては金融機関により差がありますが、おおむね「65歳~70歳」の間に収まっています。しかし、前述しましたがほとんどの金融機関が完済時年齢を80歳未満に設定しています。ということは、借入期間10年程度で住宅ローンを完済しなければいけない事になります。当然ですが、借入期間が短ければ短い程毎月ハードな返済をしていかなければいけません。
健康状態
健康状態に関しては主に本審査で審査をされますので、ここでは省略します。
年収
金融機関により「100~400万円」の範囲内で最低年収を定めています。
勤続年数
金融機関により「1~3年以上」の範囲内で勤続年数を定めています。ネット銀行では「1年以上」が、都市銀行などでは「3年以上」が多いです。
個人信用情報
信用情報とは「個々人のクレジット会社などからの借り入れや返済の状況」のことを言います。これらの信用情報を特定の機関が収集管理し、その信用情報を各クレジット会社が共有しています。情報を共有しているという事は、当然滞納などの情報も共有されます。住宅ローンの審査を行う金融機関も当然この情報を利用し、重要な審査基準の1つとしています。

事前審査では上記の項目を主に借入希望者の自己申告に基づいて審査します。もちろん各審査項目を証明するための書類の提出を求められることもあります。

3.何かあった場合の「物件の担保評価」「団信加入の為の健康状態」を確認する本審査

本審査においては、上記の審査項目をより入念にチェックします。そして事前審査では行わなかった「物件の担保評価」「団体信用生命保険へ加入するための健康状態」の審査を行います。つまり、返済に関して何かトラブルがあった場合に「保険」を掛けるための審査です

返済が滞った場合には住宅ローンの対象物件を売却して住宅ローンを返済することになりますが、そもそも物件に住宅ローン返済に資するべき価値が無いと意味がありません。また、借入者本人が返済不能に陥った場合(死亡や重度の病気)には団体信用生命保険を利用して住宅ローンを返済する必要があります。本審査ではこのような内容までしっかりとチェックします。「物件の担保評価」と「団信加入の為の健康状態」についてもう少し詳しくみていきましょう。

物件の担保評価
住宅ローンを借りる場合には、その住宅ローン対象物件に抵当権を設定します。住宅ローンの返済が滞った場合に抵当権を実行し住宅を競売にかけ住宅ローンに見合う金額を回収する為です。
住宅ローン総額よりもその住宅の担保評価が低い場合には、住宅ローンの減額請求を受けます。金融機関としては、あくまで「担保評価に見合う金額」しか貸さないのです。
もちろん、物件の担保評価が著しく低い場合には、「事前審査:〇、本審査:✖」という事もあります。
団信加入の為の健康状態
住宅ローンの返済中に返済者本人に不測の事態(死亡や重度の病気により働けなくなった)が生じることに備えて、民間の金融機関では団信への加入が住宅ローンの借入条件になっています。団信への加入の条件は自分の健康状態を告知する事です。
団信加入の為の主な告知項目は、
  • 最近3ヵ月以内の医師の治療又は投薬
  • 過去3年以内の大きな手術、2週間以上の治療又は投薬
  • 手足の欠損又は機能障害、背骨・視力・聴力・言語・そしゃく機能の障害
となっています。

4.フラット35を利用する場合の流れ

これまでは一般の金融機関における住宅ローン審査の流れをみてきました。原則として「事前審査」「本審査」の2段階審査となっており、事前審査で「返済能力」を確認し、本審査では「物件の担保評価」「団信加入の為の健康状態」を確認することが分かりました。もちろん、本審査においては事前審査で確認した返済能力等の確認項目をより詳細に審査します。審査の前についている「事前」と「本」という接頭語が示す通りです。

他方、住宅金融支援機構が提供している住宅ローン「フラット35」は一般の金融機関とは審査の流れが違います。フラット35の審査は事前審査・本審査という2段階の審査は行いません。物件が住宅金融支援機構の定める「住宅が長持ちするための住宅の断熱性・耐久性等の技術基準」をクリアしているのかどうかを適合証明検査機関が審査し、その審査に合格すれば「住宅金融支援機構が定める技術基準に適合していることを示す適合証明書」が発行されます。この適合証明書が無いとフラット35に申し込めません。フラット35は一般の金融機関とは異なり、「物件の審査に重きをおいている」と考えることも出来ますね。

※「フラット35」の詳細は別の記事で紹介します。

例えば新築住宅の場合に住宅金融支援機構が定める技術基準とは、

住宅金融支援機構が定める適合基準の概要(新築住宅の場合)
条件 1戸建て住宅等 マンション
接道 原則として一般の道に2m以上接すること
住宅の規模 70㎡以上 30㎡以上
住宅の規格 原則として2つ以上の居住室(家具等で仕切れる場合でも可)ならびに炊事室、便所及び浴室の設置
併用住宅の床面積 併用住宅の住宅部分の床面積は全体の2分の1以上
戸建型式等 木造の住宅は一戸建て又は連続建てに限る
断熱構造 住宅の外壁、天井又は屋根、床下などに所定の暑さ以上の断熱材を施工(断熱等性能等級2レベル以上)
住宅の構造 耐火構造、準耐火構造または耐久性基準に適合
配管設備の点検 点検口等の設置 共用配管を構造耐力上、主要な壁の内部に設置しないこと
区画 住宅相互間等を1時間準耐火構造等の界床・界壁で区画
床の遮音構造 界床を暑さ15cm以上(RC造の場合)
維持管理基準 管理規約が定められていること
長期修繕計画20年以上

上記になります。この技術基準をクリアして初めて適合証明書が発行されます。そして適合証明書が発行された後にフラット35に申し込むという流れになります。その他の審査基準としては、

  • 申込時年齢
  • 国籍
  • 返済負担率

1つずつ確認していきます。

申込時年齢
申込時の年齢が満70歳未満の場合に限られています。但し親子リレー返済を利用する場合には満70歳以上でも申し込みが可能です。
※親子リレー返済とは
  1. 申込者本人の子や孫などの直系卑属、または定期的収入のある配偶者
  2. 申込時の年齢が満70歳未満
  3. 連帯債務者(1名)
上記の要件をすべて満たす人(1名)を後継者とする場合には、申込者が満70歳以上でもフラット35に申し込む事が可能になります
国籍
日本国籍を取得しているか、若しくは永住権を持っている事が必要です。
返済負担率
前述しましたが再度掲載します。
【フラット35】返済負担率基準
年収 400万円未満 400万円以上
基準% 30%以下 35%以下

一般の金融機関における住宅ローン審査の重要ポイントは「返済能力があるのか否か」です。金融機関は営利企業です。住宅ローンを貸し出したはよいものの、返済してもらえなければ利益が出ません。利益が出ないどころか、損失が生じる可能性があります。何よりも「返済能力」が重要なのです。

他方、上記をご覧いただければわかるようにフラット35においては「返済能力」が一般の金融機関ほど重要視されていません。住宅金融支援機構自体が「低所得者層にも住宅ローンを提供する」事を目的として作られた機関です。つまり、一般の金融機関でふるいに落とされた方々の受け入れ先にもならなければいけないのです。独立行政法人という国の機関でないと、このようなリスクは取れません。

一般の金融機関とフラット35ではその設立目的が異なっているので、その審査基準にも違いが生じるのです。

 

5.まとめ

いかがでしたでしょうか。

住宅ローン審査における一般の金融機関のポイント及びフラット35におけるポイントを考察してきました。事前審査では主に「返済能力」、本審査では返済能力に加えて「何かあった時の物件の担保評価、及び団信加入の為の健康状態」の審査を行います。金融機関ごとに審査基準に多少の違いはあるものの、大まかな手続きの流れには相違はほとんどありません。

何も知らずに住宅ローンに申し込むのとある程度の情報をインプットした上で申し込むのとでは、審査の進み具合などが全く異なってきます。審査の合否に影響が出ることも当然考えられます。武器を持たずして闘うのではなく、武器を所持した上で闘いましょう。

最後までお読み頂きましてありがとうございました。


  • このエントリーをはてなブックマークに追加