先日、用途地域はとっても重要!なのに検索がタイヘン…という記事を書きました。用途地域とは、土地に建てられる建物などを制限するための概念です。
ここは住宅はOKだけど工場はNG
ここは工場はOKだけど病院はNG
など、様々なものがあります。不動産業に携わっていますと用途地域という言葉に触れる機会は多いです。用途地域によって建てられる建物の種類や大きさが決まってきますからね。その用途地域の中で昔から気になっているものが1つあります。それは”準工業地域”です。
名前からは「工業地域に準じた場所」「小さな工場が多い場所」というようなイメージを持つと思います。しかし、現実は少し違います。準工業地域には住宅が立ち並んでいることが非常に多いんです。アパートやマンションも建設されています。もちろん、工場が立ち並んでいることもありますが、私のイメージは、
準工業地域=住宅街
です。今までは上記についてそれほど深くは考えなかったのですが、今回は「なぜ準工業地域に住宅が多いのか?」について考えていきたいと思います。
ではまず、準工業地域はどのような場所なのでしょうか。
準工業地域(じゅんこうぎょうちいき)は、都市計画法による用途地域の一つで、主に環境悪化の恐れのない工場の利便を図る地域である。住宅や商店など多様な用途の建物が建てられる用途地域であり、土地利用の選択肢が多い反面、しばしば住宅と工場・遊戯施設などが混在し、騒音などのトラブルがおこりがちでもある。
つまり、準工業地域には様々な建物が建てられる、というわけです。私の祖父が東京の下町で町工場を経営していましたが、そこも準工業地域でした。住宅や小規模な町工場、事務所や店舗など様々な種類の建物が混在しています。20年前に祖父が亡くなったのですが、その後は祖父と親しくしていた同業者の方に工場を貸しています。工場周辺は昔っぽいフインキに溢れています。私の好きな場所の1つです。
※画像はイメージです。この地域が準工業地域かどうかとは関係がありませんのでご注意ください。
準工業地域自体が中小企業の育成を目的としている立地である、という話を聞いたことがあります。町工場などはまさに準工業地域にドンピシャという事ですね。逆に”危険性が大きい””著しく環境を悪化させる恐れが多い”工場は建設出来ません。これらの工場は「工業地域」や「工業専用地域」に建てる必要があるのです。なので、比較的安心の出来る準工業地域には住宅が多いのです。
ちなみに、どんな工場でも建設出来る工業地域にも住宅を建設することは可能です。もちろん、周辺の住環境の保証はありませんが…
準工業地域に住宅が多数存在するのは、もちろん「準工業地域には住宅が建設できる」ということが一番大きな理由です。しかし、もう1つ大きな理由があります。それは、「準工業地域には学校や病院などの生活に欠かせない施設を建設することができる」という事です。
住宅が建設可能でも、周辺に学校や病院を建設することが出来なければ住宅地としては不向きです。工業地域がまさにそうです。住宅は建設出来ますが、学校や病院を建設することは出来ません。その上、どのような工場でも建設することが可能なのです。住宅地としての価値は住居系の地域や準工業地域よりも低いと考えて良いでしょう。
何度も述べていますが、準工業地域は商業地域と同様に多種多様な建物を建築することが可能です。しかし、日影規制の点で両者は全く異なります。商業地域では日影規制の適用がありません。高い建物が建設され自宅がその建物の影になってしまったとしても、文句は言えないのです。他方、準工業地域は日影規制が適用されます。つまり、”日当たり良好”なのです。「住環境の保護が目的ではないけれど日当たりは良好」ってなんか嬉しくなりますよね。
ここで準工業地域についてカンタンにまとめてみます。
- 住宅建設OK
- 学校や病院などの生活に不可欠な施設の建設OK
- 事務所や店舗の建設OK
- 危険の大きい工場・著しく環境を悪化させる恐れのある工場の建設NG
- 日影規制の対象なので日照条件は良好
もちろん、準工業地域には住宅が多数あるといっても、あくまで準工業地域です。工場も建設されます。「閑静な住宅街に住みたい」という方向きの用途地域ではありません。住居系の用途地域は”住環境の保護”が主な目的です。しかし、準工業地域は”危険性が少なく環境に悪影響を与えない小規模工場の建設促進”が主な目的です。「準工業地域に住宅を建てたら、数年後に隣に工場が出来た」という話も当然あり得ます。何度も繰り返しますが、あくまで準工業地域である、という点にはご注意下さい。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。