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2018.03.14  

不動産の取得費は分からなくてもOKだが「大損」する可能性大!

フラット35の仕組み

不動産を譲渡して譲渡益が出ました。この場合、残念ながらその譲渡益に対応する税金を支払わなければいけません。個人の方でも同様です。税金を支払わなければいけません。

この譲渡益は譲渡価格ではありません。譲渡益の事を課税譲渡所得と言いますが、この課税譲渡所得に対して税金が掛かります。課税譲渡所得を算出するためには、譲渡価格から譲渡費用と取得費を差し引く必要があります。

課税譲渡所得=譲渡価格-譲渡費用-取得費

譲渡価格は不動産の売却価格なので特に問題は無いでしょう。また、譲渡費用とは不動産の売却に必要であった費用の事です。具体的には、

  • 不動産売却に伴う仲介手数料
  • 不動産売却に伴う測量費
  • 自分で負担した印紙代

などが譲渡費用に含まれます。譲渡価格と譲渡費用は売却時の事なので把握することは容易でしょう。ごくごく最近の話ですので契約書や領収書がバッチリ残っているはずです。

問題は「取得費」です。譲渡した不動産を取得した時の費用の事なのですが、何十年も前の事である可能背が高いです。そうなると把握することが非常に難しい。取得日が何十年も前になることも珍しくありません。場合によっては取得費が分からないこともあるでしょう。

取得費が分からないと課税譲渡所得を計算することが出来ません。当たり前ですが、「たぶんこの位の価格だったはず!」というように適当に取得費を設定することも出来ません。取得費を算出した場合にはその数字の根拠となる資料を税務署から求められます。しっかりと裏付(証拠)のある数字しか取得費として利用できません。

そして、取得費には不動産の購入価格以外にも含めて良い費用があります。「どのような費用が含まれるのか?」という問いに答えられる方はいらっしゃいますか。安心してください。普通の方であれば答えることは出来ません。数学のような理論で回答できる問題ではなく「知っているか否か」の問題ですので。

今回は取得費に関する様々な疑問を解決していきます。取得費は非常に重要な費用です。なぜなら取得費の大小によって譲渡所得税の金額が大幅に変わってくるからです。先ほどの計算式を思い出してください。「課税譲渡所得=譲渡価格-譲渡費用-取得費」において取得費以外の費用が一定だと仮定すると、取得費が小さい場合には課税譲渡所得が大きくなり税金が高くなります。他方、取得費が大きい場合には課税譲渡所得が小さくなり税金が少なくなります。税金の大小に直結する取得費、重要でない訳がありません。

1.取得費の概要

取得費には売却した土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料の他に設備費や改良費なども含まれます。

※建物の取得費に関しては、購入代金や建築代金の合計額から減価償却費相当額を差し引いた金額になります。この点に関しては後ほど考察します。

その他の具体例としては、

  • 登録免許税、不動産取得税、印紙代などの税金
  • 立退料
  • 造成費用
  • 測量費
  • 取り壊し費用

などが取得費に含まれます。不動産取得時の契約書や領収書などがあれば確認できます。

参照:国税庁HP「No.3552 取得費となるもの」

「土地」と「建物やマンション」では取得費の取り扱い方が異なりますのでご注意ください。土地は購入代金をそのまま取得費として計上すればよいのですが、建物の場合には建築代金や購入代金をそのまま取得費に計上してはいけません。先ほども少し述べましたが、購入代金から減価償却費を差し引いたものを取得費として計上する必要があります。減価償却費とはカンタンに言えば「利用年数と共に減少していく資産価値」の事です。よく消しゴムに例えられることがあります。消しゴムは使えば使う程小さくなっていきますよね。消しゴムの残りの部分が資産価値であり、無くなってしまった部分が減価償却費となります。余計に混乱させてしまったらすいません。。。

建物の取得費=建物の購入代金-減価償却費

なぜ建物の減価償却費は節税になるのか?

そして減価償却費は、

減価償却費=建物購入代金×0.9×償却率×経過年数

上記の数式にて求めることが出来ます。この減価償却費は建物が「事業用(事務所など)」か「非事業用(住宅など)」で計算方法が異なります。

主な建物構造による耐用年数及び償却率の違い
非事業用 事業用
構造 耐用年数 償却率 耐用年数 償却率
木造 33年 0.031 22年 0.046
鉄筋コンクリート造 70年 0.015 47年 0.022

例えば、

  • 建物価格:3,000万円
  • 土地価格:2,000万円
  • 所有期間:20年
  • 建物構造:木造

の場合の取得費を計算してみましょう。まずは建物の減価償却費は、

建物の減価償却費=3,000万円×0.9×0.031×20年=1,674万円

建物の取得費=3,000万円―1,674万円=1,326万円

となります。なので建物と土地を合わせた取得費は、

土地建物の取得費=土地の取得費+建物の取得費=2,000万円+1,326万円=3,326万円

この土地建物の取得費に前述した登録免許税などを足し合わせたものが取得費となります。

2.取得費が不明の場合

取得費を計算するための大原則は、先ほど考察したように実際に支払った金額を取得費として計上することです。契約書や領収書などの取得費を把握するための書類を集めて計算します。しかし、取得したのが昔になればなるほど、書類は見つからないものです。この記事を読んでいる方でも、土地や建物を購入した際の書類がどこにあるのかをすぐに思い出せる方は少ないのではないでしょうか。

では、もし取得費が分かる書類が見つからない場合にはどのようにすれば良いのでしょうか。「書類が見つからないのであれば取得費は0で計算する」のでしょうか。もちろん違います。そんなことをしたら、税金が非常に高額になってしまう可能性があります。課税負譲渡所得が小さければ小さい程、支払うべき税金の額も小さくなります。課税譲渡所得を抑えるためには取得費は欠かせない費用なのです。

そこで取得費不明の場合には「収入価格×5{9b6a60116f1ce4138cb916d038a564d83dd1a941c3c2e5ff8f9a4f78ff99e0c8}」を取得費とみなしてよい、という概算取得費の制度があります。先ほども述べましたが、取得費不明の場合に「取得費=0」とすることが余りにも酷です。そのような人を救済するという意味も含む制度です。

※ここでいう「収入価格」とは譲渡価格だけではなく売却時に受け取った全ての収入の事を表しています。

※この概算取得費の制度は、実際の取得費が把握できる場合でも利用する事が出来ます。この場合には実際の取得費と概算取得費を計算して、より高い方の取得費を利用することになるでしょう。

また、取得費不明の場合には概算取得費の他にも、

「建物の標準的な建築価格表」(国税庁)

「建物の標準的な建築価格表」国税庁HP

「市街地価格指数」(一般財団法人日本不動産研究所)

※一部会員限定となっておりますのでご注意ください。

一般社団法人日本不動産研究所HP

上記のようなデータを基に「取得費を概算する」「取得費を類推する」という方法により取得費を設定することは可能です。概算取得費を利用する場合には収入価格の5{9b6a60116f1ce4138cb916d038a564d83dd1a941c3c2e5ff8f9a4f78ff99e0c8}しか取得費として計上出来ません。概して取得費が小さくなりがちであり、課税譲渡所得が多くなってしまいます。つまり税金の額が大きくなってしまうのです。他の方法により取得費が把握できるのであれば、出来る限りその方法を選択したほうが良いでしょう。

繰り返しますが、概算取得費の制度に強制力はありません。その点を考慮に入れた上で、概算取得費の制度を利用するべきか否かをご検討下さい。

3.取得費の証明方法

取得費を証明するための最善策は「契約書や領収書」によるものです。これらの書類が残っていることに越したことはありませんが、そうはいかない場合も多々あります。そのような場合に全て概算取得費として取得費を計上してしまうと、概算取得費以上の価格で不動産を購入している場合には明らかに不利になります。何度も言いますが、概算取得費の利用は出来る限り避けたいものです。

そこでそのような場合には、下記のような方法で取得費額の証明を試みます。

取得費額の照明方法
書類区分 調査内容
通帳の出金記録 その当時の通帳の出金記録から取得費を類推します。
新築時のパンフレット 新築時のパンフレットが存在していれば、そこから取得価格を証明することも可能です。
住宅ローン契約書
(金銭消費貸借契約書)
不動産売買契約書が無くても住宅ローン契約書(金銭消費貸借契約書)が残っていれば取得費を類推できます。
抵当権設定登記 抵当権設定登記に記載のある抵当権額から類推しします。
購入当時の公示地価や相続税評価額 公に公表されているデータから取得費を類推します。

出来る限り多くの資料を収集する必要があります。そして、上記の書類等によって証明された(?)取得価格に「ウソ偽りがないかどうか」という本人の確約書を自著押印の上添付して確定申告を行います。確定申告は自主申告制度なので、書類や価格にオカシイ点が無いのであれば、その申告した取得費が認められる可能性が大きいです。

余談ですが、例え取得費を証明する書類がなく概算取得費制度を利用するしかない場合にも「居住用財産の売却における3,000万円の特別控除」が利用できれば税金が発生する可能性がグッと低くなります。

「マイホームを売却したら利益が出た」=税金を支払う必要はあるの?

ようは、3,000万円の特別控除が適用される場合には、

課税譲渡所得=譲渡価格-概算取得費-譲渡費用-3,000万円

上記の計算式により算出された値がマイナスになる場合には税金は発生しません。居住用財産の売却の場合には3,000万円の特別控除が適用されるかどうかもしっかりと確認しましょう。

4.相続における取得費の考え方

取得費は新たな売買が無い限り当初の取得費を引き継ぎます。つまり、不動産を相続により取得した場合には、その不動産を購入した当時の取得費を引き継ぐのです。例えば、祖父が3,000万円で購入した土地が相続により

祖父⇒実父⇒自分

というように相続が発生したとしましょう。この時に自分が相続した土地の取得費は3,000万円となります。

※この土地を相続した場合には相続税を支払う事になりますが、その相続税を計算する際には取得費である3,000万円ではなく土地の時価で計算をしますのでご注意ください。

ここで勘の良い方なら「相続税も払うのに所得税や住民税も払わなければいけないのか!?」と思う事でしょう。残念ながらその通りなのです。相続税も払う必要があるし、所得税&住民税も払わなければいけません。

しかし「それではあまりにも可哀そうだ」と国も思ったのでしょう。一定の要件を満たした場合には「相続税額の一部を取得費に含めて良い」という制度を設けています。その一定の要件とは、

  1. 相続や遺贈により財産を取得
  2. 財産取得者に相続税が課されている
  3. 相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡

1と2は問題ありません。注意が必要なのは3です。相続税の申告期限は「相続があったことを知った日の翌日から10か月以内」なので、3は「3年10か月以内」と言い換えることが可能です。その期間内に譲渡をしないと、相続税額を取得費に含めることは出来ません。

もちろん、相続税額の全てが取得費に加算されるわけではありません。その人が相続により取得した全財産のうち、譲渡した財産に対応する相続税額分のみが取得費に加算されます。例えば全相続財産1億円のうち、土地5,000万円、現預金5,000万円、相続税額2,000万円の場合には、

2,000万円(相続税額)×5,000万円(土地の課税価格)÷1億円(全相続財産の課税価格)=1,000万円

以上より、相続税額のうち1,000万円分を取得費に加算することが可能です。

参照:国税庁HP「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」

5.まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は不動産の取得費について考察をしました。不動産の取得費と言われても馴染みが無い方の方が多いかもしれません。しかし、この不動産の取得費は「税金をいくら払うのか」という家計に大打撃を与える可能性のある問題を多分に含んでいる費用です。取得費を適切に処理できる人と出来ない人では、税金額が大幅に異なります。数百万円単位の差も十分に考えられます。

日本の税制は「知らない」「分からない」人には優しくありません。知っている人・分かる人が税制を十分に活用し得をするように出来ています。この記事の読者の皆さんが税制を十分に活用し得をするようになれば幸いです。

最後までお読み頂きましてありがとうございました。


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